パフォーマンスを高める心理的スキルを調査した大規模な研究では、「セルフトーク」と「イメージ」が有効と示されました。
パフォーマンスを高める介入をガッツリ比較した研究
この研究(1)はBBC Lab UKのプロジェクトに参加した44,742人のボランティアを対象として行われました。参加者は全員、競争的タスクをしています。
参加者はランダムでパフォーマンスの異なる4つの側面に目を向けるよう指示されました。
4つの側面
- プロセス
- 結果
- 意識的な制御
- 指導
それから3つの心理的な介入もランダムで分けています。
心理的スキル
- セルフトーク:私は〇〇
- イメージ:想像する
- if-thenプランニング:Aになれば、Bをする
つまり、3×4+対照群の13グループに分けたわけです。具体的にどういうことをしたのかわかりづらいので、以下にまとめました。
プロセス | 結果 | 意識的な制御 | 指導 | |
---|---|---|---|---|
セルフトーク | 今回はもっと早く反応できます。 | 私はベストスコアを破れます | 私は冷静です | 私は見つける必要のあるそれぞれの数に集中します |
イメージ | 前回プレイしたときよりもすばやく反応していることをして、自分でゲームをプレイしていることを想像してください。 | 自分でゲームをプレイしていて、最高得点を破ることを想像してください。 | パソコンの前に座って、体に力が入らず落ち着いている姿を想像してみてください。 | グリッド全体をスキャンして次の番号を探し、それぞれの番号を見つけたら、ポインタをグリッドの中央に戻します。 |
if-thenプランニング | 失敗を心配するようになったら、この前の練習は良かった。またできる! | もし番号が見つからなかったら、自分のベストスコアに勝てると自分に言い聞かせる! | もし私が息を止めていたら、私は集中し続ける! | 集中力を失ったら、数字を入力するたびに、ポインタをグリッドの中央に移動します! |
対照群 | あなたは今、ゲームをしました。数字を見つけなければなりませんが、見つけるのは難しいかもしれません。グリッドは異なりますが、課題は似たようなものです。心の準備に時間をかけてください。次のラウンドを始める前に、90秒ほど準備しておいてください。 |
後は点数と以下の要素を評価しました。
測定内容
- 感情(幸せ、不安、怒り)
- 感情調節
- パフォーマンス(点数と主観評価)
- 精神的努力:どのくらい努力できたか
- 感情の影響について:ゲーム中に感情を上手く管理できたか
タスクと諸々の測定を終えると、実験は終了です。結果は以下のような感じ。
パフォーマンスへの効果 | |
---|---|
if-then+意識的制御 | 0.132 |
if-then+結果 | 0.189 |
if-then+プロセス | 0.181 |
if-then+指導 | 0.146 |
セルフトーク+意識的制御 | 0.163 |
セルフトーク+結果 | 0.197 |
セルフトーク+プロセス | 0.195 |
セルフトーク+指導 | 0.149 |
イメージ+意識的制御 | 0.139 |
イメージ+結果 | 0.199 |
イメージ+プロセス | 0.200 |
イメージ+指導 | 0.104 |
対照群 | 0.139 |
結果
- 13グループすべてパフォーマンスを著しく向上させた
- 「セルフトーク+結果」「セルフトーク+プロセス」「イメージ+結果」「イメージ+プロセス」が最も大きな効果量だった
- イメージ+指導は最も効果が小さかった
- 指導は全体的に効果が小さい
結果を見ると、全13グループにおいてパフォーマンスが改善しています。著者いわく練習によるパフォーマンスの向上だとか。
その上で詳細を見ていくと、「セルフトーク+結果」「セルフトーク+プロセス」「イメージ+結果」「イメージ+プロセス」は対照群に比べてパフォーマンスを大きく改善しました。
特にこれらを使用するのに精神的準備戦略だと考えたときにより利点が確認されています。ただセルフトークはイメージよりも習得が簡単なので、より有益かもしれません。
ざっくり言えば、精神的な準備として「今回はもっと早くできる!(セルフトーク+プロセス)」とか「ベストスコアを超えられる!(セルフトーク+結果)」と心の中で呟くとパフォーマンスが上がるわけですね。
またif-thenプランニングは大きなパフォーマンス改善が得られませんでした。この結果について著者は以下のように述べています。
この研究ではif‐thenプランニングは注意の変化に焦点を当てており、タスクの短期間はこのようなアプローチの有効性を低下させたため、過度に有用な心理的スキルではないことを示唆する。If-Thenプランニングの「もし」部分がパフォーマンスに対する意味のある障壁を表す場合に、有効であることがわかっています。本研究での作業を完了する際に、「もし」は自分自身を障壁として提示しなかった可能性がある。
if-thenプランニングも条件次第で効果がありそうですが、今回は適切ではなかったと考えられます。
総じて言えば、結果とプロセスに焦点をあてた心理的スキルが肯定的な感情の増加とともに、パフォーマンスに最も強いプラスの効果をもたらした可能性があります。
それではぜひ参考に。