最近では日本でも最低賃金の話題が度々出てきます。東京では985円に上がりましたし、1000円の値上げはキツイと日商会が発言したのも話題になりましたね。リンカーン大学の研究によると、最低賃金は生産性の向上に貢献しているという調査結果が出ています。
最低賃金を改善したら、普通に生産性が改善した研究
最低賃金で生産性が上がるのかを調べてみたところ、ニュージーランドのリンカーン大学で研究(1)が行われていました。この研究はイギリスの1995年から2008年までの期間で、36万社以上の企業を対象にしたものです。ちなみにイギリスが最低賃金を導入したのは1999年でした。
ざっくり言えば、1999年前と後で生産性がどのように推移したかを調査したわけです。この分析では推定と検証の2段階に分かれて行われています。
分析方法
- 推定:技術や投入決定、市場状況を見ながら、最低賃金のインセンティブ効果を直接考慮し、企業レベルの生産性を推定
- 検証:生産性への最低賃金の影響を検証し、ここの低賃金部門の水準で賃金や資本労働率を差異分析
この辺りはやや専門的なので、詳しく知りたい方は論文を参考にしてみてください。で、分析結果が以下のような感じ。
結果
- 1999-2008年の間で生産性の6.4%増加を示した:レジャーや農業以外のすべてで統計的有意
- サービス業が最も高い15%の生産性増加を示した:製造業の2倍
- 社会福祉やレジャーでは低い効果を示した
- 大企業ではプラスの効果が最も強くなった
これらの結果から、1999年以降は低支払い部門で生産性が改善されたと示されました。とはいえ、分野や企業規模によってもかなり違ってますね。統計的有意が確認されなかったレジャーや農業なんかはそもそも最低賃金の遵守レベルが低いとか。
総じて言えば、最低賃金は賃金の低い労働者の生産性にプラスの影響があると言えそうです。ただし、注意点として著者は以下のように述べています。
最低賃金への準拠を回避するため、 「目立たない」 ことに重点を置いた小規模企業の戦略は必ずしも適切ではないかもしれない。しかし、我々は雇用者が従業員のインセンティブを高めるために、単に 「生活賃金」 を支払うべきだと主張しているのではない。お金以外の要因も低賃金労働者に含まれるので、これは単純化されている。
人件費を抑えるために最低賃金を回避しようとするのは、法律違反の上に合理的な選択でもなさそうですね。とはいえ、従業員の生産性を考えるとき、最低賃金だけというのも微妙です。
それではぜひ参考に。