管理職を対象とした研究では、電子メールが進捗状況やリーダーシップに悪影響を与える可能性があると示されました。
多すぎる電子メールが管理職とその部下の生産性を落とす
この研究(1)は経営学修士課程に登録した49人の管理職を対象として行われました。参加者には10日間連続して毎日2回、調査のためのメールを送信しています。メールによる調査内容は以下のような感じです。
質問内容
- 電子メールの利用頻度:今日自分のメールに多く対処したか
- 1日の作業目標の進捗状況:仕事の作業目標を達成したか
- リーダーシップ行動:部下の各行動にどれだけ頻繁に関与しているか
- 電子メールの重要度:メールは自分の仕事を成し遂げるのに重要か
- セルフコントロール:誘惑に抵抗するのが得意かどうか
そして、それぞれ評価した後で分析が行われました。結果は以下のような感じ。
結果
- 毎日の電子メールは作業目標の進捗状況と否定的に関連していた
- 電子メールの要求は効果的なリーダーシップ行動も有意に減少させた
- セルフコントロールが高い人は目標の進捗への影響が小さかった
- 電子メールの悪影響はセルフコントロールが低く、メールが中心の仕事ではない場合に最大となった
これらの結果から、電子メールは作業目標の進捗を妨げる重大な否定的な予測因子と言えます。しかし、実際はリーダーが日常的な業務やリーダーシップ行動を減らすことで、対応しているのが現状です。
管理職のリーダーシップ行動が減ると、従業員の業務遂行や仕事の満足度、モチベーションが減少し、ストレスや否定的な感情が増加するとわかっています。過去の研究でも電子メールによるパフォーマンス低下は示されていますが、今回は過小評価されている可能性が出てきました。
著者は以下のように述べています。
今回の調査で重要なのは業務の遂行においてメールが中心的な役割を果たしていない仕事で、リーダーが日常的に大量のメールの要求に直面した場合、目標の進捗が得られないという点です。セルフコントロール能力が低いリーダーにとってはこのように認識された目標の進捗の欠如は日常的なタスクやリーダーシップ行動を就業日の後半にとる可能性を減少させる。
つまり、リーダーはメールの読み取りや返信に労力を費やすことで、休憩を取ったり仕事に費やす労力を削減したりする権利があると感じてしまうわけです。自然な流れではありますが、仕事の後半になるにつれて仕事が進みづらくなります。
実践的には頻繁なメールチェックはやめて、時間を決めてチェックするのが理想的なのでしょうね。ただすぐに返信が必要なときもあるでしょうし、中々難しい。
ちなみに著者はメールの影響はより広いと考えているようです。
この研究では、電子メールの要求によって影響を受ける可能性のあるその他の下流の結果を調査するよう学者に警告しています。たとえば、電子メールは同僚へのヘルプやフィードバック、専門知識を共有するための対応など、他の重要な作業現場の動作に利用できる時間とエネルギーに影響を与えます。また仕事の目標に遅れていると感じると、親やパートナーとしての行動から時間や労力が削られる可能性があるため、電子メールの要求は家族の領域にも波及する可能性がある。
メールの影響はさらに研究が出てきそうなので、今後に期待ですね。メールの対策としてはメールをチェックする時間を決めるという方法が挙げられています。メールの確認は最小限に抑えたいですね。
それではぜひ参考に。