今回はグループ目標のパフォーマンスを検証したメタ分析を紹介します。
グループ目標はパフォーマンスにどんな影響があるのか?
この研究(1)はグループ目標のパフォーマンスについて検証したメタ分析です。実は過去にも同じ内容のメタ分析(2)は行われていて、グループ目標は「目標なし」や「低い目標」よりも大きな効果(d=0.92)を示しました。
今回紹介する研究はこの研究を更新・拡張したメタ分析です。この研究ではパフォーマンスへの効果だけではなく、より詳細に調査しています。
診断内容
- 目標の具体性:曖昧な目標は「ベストを尽くす」、具体的な目標は「肩を10回叩く」
- 目標の難易度:目標達成率15%が難しい、15-50%がやや難しい、50%以上が簡単
- グループメンバーの相互依存性(TI):グループメンバーが専門知識や資料を共有する度合い
- 課題の複雑さ(TC)
- 意思決定への参加(PDM)
- グループ内の個々の目標設定:自己中心的な目標(個々のパフォーマンスを最大化する目標)、グループ中心の目標(グループへの貢献を最大化する目標)
そして、グループ目標に関する論文を精査した結果、38件の研究が選択基準を満たしていました。サンプル数は2954人で、グループ数が739でした。
結果は以下のような感じ。
結果
- 具体的な目標は曖昧な目標と比較して、全体的に有意な効果を示した(d=0.56)
- 具体的で難しい目標は曖昧な目標や具体的で簡単な目標よりも著しく高い効果を示した(d=0.80)
- グループメンバーの相互依存性はパフォーマンスに影響なし
- 課題は単純でも複雑でも有意差がなかった
- 意思決定の参加レベルも有意差なし
- グループ課題で自己中心的な目標をたてると、低いグループパフォーマンスと関連していた(d=-1.93)
- グループ課題でグループ中心の目標をたてると、高いグループパフォーマンスと関連していた(d=0.40)
結果は具体的で難しい目標を設定すると、グループのパフォーマンスが向上しました。さらに面白いのが今回の研究で、グループの目標設定が有意な悪影響を報告した研究は1件しかなかった点です。
つまり、グループでの目標設定がパフォーマンスに悪影響を与えることはかなり稀と言えます。ただし、目標設定にはデメリットもあるので、きちんと把握しておくのがオススメです。
また驚いたのは課題の複雑さがパフォーマンスに影響しなかった点です。この結果については著者が以下のように説明しています。
1つの可能な説明は、グループが個人よりも優れているという利点を含んでいます。グループのメンバーが異なれば、複雑なグループタスクで高いパフォーマンスを達成するために解決すべき問題に対して異なる視点を提供することができます。その結果、個々に達成できるものよりも効果的な戦略が開発されます。
グループでやっている分だけある程度課題が複雑でもパフォーマンスに影響がないということなんでしょうね。また自己中心的な目標設定はパフォーマンスを損ない、グループ中心の目標設定はパフォーマンスを向上させました。この結果はグループの貢献を明確に対象とするときのみ、目標設定がグループパフォーマンスに役立つと示しています。
つまり、各営業担当者が個別の目標を持ったチームでは、グループパフォーマンスが損なわれている可能性があるわけです。興味深いですね。
それではぜひ参考に。