北米の大学生を対象とした研究では、部下から負のフィードバックがあったときに創造性が高まるという面白い結果が発表されました。
否定的なフィードバックは創造性にどう影響するのか
この研究(1)は北米の大きな大学にいる365人の学生を対象として行われました。調査が始まると、参加者は3つの役割のどれかにランダムで割り当てられました。
役割
- 上司
- 部下
- 同僚
そして、同じ役割の参加者をグループ化して、同僚は2部屋、他グループは1つの部屋に入ってもらいます。タスクはネットを介して、別の部屋にいる参加者と意見を交換できました。
タスクは2回に分かれ、どちらも創造的な解決策が必要です。1つ目のタスクは22の組織問題から1つを選び、解決策を考えた上で、他の参加者と意見交換をしました。
2つ目のタスクでは、3つの問題に対して解決策を考えてもらいます。1つ目との違いはペアによるフィードバックに見せかけて、実験者が用意した負のフィードバックをしました。
総じて言えば、以下の6つに分けられたわけです。
グループ分け
- 負のフィードバック×ボトムアップ(部下から上司)
- 負のフィードバック×トップダウン(上司から部下)
- 負のフィードバック×ラテラル(同僚同士)
- 中立のフィードバック×ボトムアップ(部下から上司)
- 中立のフィードバック×トップダウン(上司から部下)
- 中立のフィードバック×ラテラル(同僚同士)
そして、2人の訓練された審査員が創造性を測定して、実験は終了しています。結果は以下のような感じ。
結果
- ボトムアップ群は他2つの条件よりも創造性が高かった
- 負のフィードバックはボトムアップ条件でより高いレベルの創造性をもたらした
- 逆にトップダウンで負のフィードバックをすると、低いレベルの創造性を示した
- ボトムアップ条件で負のフィードバックをするとタスクプロセスへ注目がいった
- 逆にトップダウン・同僚同士だとタスクプロセスへの注目が減少し、メタプロセスに注目が増加した
これらの結果から、部下からの負のフィードバックは上司の創造性を高めるとわかりました。特にタスクプロセスが増加しているので、創造性を向上させたと考えられます。
メモ
タスクプロセスとは、タスク自体の問題を識別して、正しく改善することです。一方のメタプロセスは否定的なフィードバックが自分自身の否定に感じてしまうことを言います。
逆に上司から部下へ負のフィードバックをすると、創造性が減少するので注意したいですね。こちらはメタプロセスが増加しているので、創造性が妨げられたと考えられます。
一般的には上司から部下へフィードバックさせることが多いわけですが、人格否定を含むフィードバックだと創造性は低下するので、タスクのみに注意を向けてアドバイスをするのが良いです。
著者は今回の結果について以下のように述べています。
この結論は、組織が上司が部下に否定的なフィードバックを与えることを禁止すべきであることや、同僚がお互いに否定的なフィードバックを与えることを避けるべきであることを意味するものではない。代わりに上司や同僚は、受け取り手の創造性を低下させないために、創造性が必要なタスクの最中に否定的なフィードバックを制限したいと思うかもしれません。おそらく創造性タスクの後に否定的なフィードバックを提供することで、受け取り手がメタプロセスの考え方に対処し、創造性を向上させる方法について考える時間を持てるようになるでしょう。
つまり、上司や同僚からのアドバイスは作業が終わった後でするべきということですね。
それではぜひ参考に。