企業の製品開発チームには、高品質のアイデアを生み出す創造的な人材が必要です。ハーバード大学のワーキングペーパーによると、外向的な人と話すことで良いアイデアが生まれるという調査結果が発表されています。
アイデアの質は人との会話で向上するのか
この研究(1)はアイデアの質に対する会話の影響を評価したものです。知識や経験を共有する人の会話はアイデア生成の場として非常に実りが多い環境です。特に外向性を示す人はおしゃべりなことも多いため、知識の共有や情報開示をする傾向があります。
今回の調査ではイノベーターに分類される人のアイデアの質に非公式の会話がどれほど影響するかを調査したフィールド実験です。
実験はインドのニューデリーで開催された起業家向けのブートキャンプで行われました。これは3週間のプログラムで、起業家志望者がアイデアの生成や設計思考、ビジネスモデル開発のスキルを支援するという内容です。参加者は112人の男女で、指導者は成功した起業家やデザイナー、VCでした。
参加者にはインドのブライダル業界向けの革新的なソフトウェアのアイデアを生成するよう求められています。ちなみにブライダル業界が選択されたのは大きな市場の可能性を秘めている点や大多数が経験する点、特別なスキルや知識が必要ない点などが挙げられます。
会話が終わると、アイデア出しとビッグファイブ(性格診断)に回答してもらい、実験は終了です。
結果は以下のような感じ。
結果
- 開放性の高い人は平均して「悪い」アイデアを生成すると示された
- 人が外向的な仲間と会話すると、良いアイデアを生成すると示された
- 開放性が高い人は外向性の高い人と会話をすると、アイデア評価が高まる可能性が約36%高くなった
- 開放性が高い人は内向的な人と会話をすると、アイデア評価が低下した
- 開放性が低い人は外向的・内向的に関わらず、会話でアイデアの評価が変わらなかった
結果はアイデアの生成に仲間との会話が影響しているとわかりました。具体的には、開放性の高い人が外向的な人と会話をすることで評価の高いアイデアを生成し、内向的な人と会話をすると評価の低いアイデアを生成しています。特に開放性の高い人と外向的な人は相性が良く、アイデアの評価が高まる可能性は36%も伸びています。これは中々の違いですね。
一方で、開放性が低い人は仲間との会話の影響を受けないと示されました。創造的なアイデアを期待するときは開放性が低い人が助けになる可能性は低いかもしれませんね。
しかし、著者は今回の結果について以下のように述べています。
最も簡単に言えることは、創造的なアイデアを開発することがチームにとって重要である場合、閉鎖的な人は助けにならないということです。しかし、経験を受け入れるだけでは十分ではありません。チームの内部構成と外部知識のバランスを適切にすることは最初に生み出されたアイデアだけでなく、長期的なチームのパフォーマンスにとっても重要です。
今回の結果では外向的な人と開放性の高い人に焦点がいきがちですが、チームのパフォーマンス全体で見るとバランスが重要ということですね。他の研究でも、職場の多様性が売上増加につながった例もあるので、偏ったメンバーでチームを作るのは考えもの。
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職場の多様性が売上増加の16.5%を説明したという調査結果
とはいえ、ひとつの考え方としてアイデアを作る場面では開放性と外向性をチェックしながらメンバーを検討するのはとても合理的です。良いアイデアが必要なときは参考にしたいですね。
それではぜひ参考に。