人に教えると逆に自分も記憶できるのはよく知られています。しかし、人に教える行為が学習を強化する理由はテスト効果と同じメカニズムかもしれないと新しい研究は示しました。
人に教えると記憶力が上がった過去の研究
過去の研究(1)では、人に教える行為が学習を強化するとわかっています。この現象は教育効果とも呼ばれています。
ちなみに教えるという行為は教える準備をするのと比較して、有意に優れた学習をもたらしました。言い換えれば、学習を強化しているのは教えているときに含まれている脳の検索かもしれないわけです。
メモ
検索とは思い出すプロセスのことです。模擬テストが効果をあげる理由は思い出す行為を繰り返すから効果があると言われています。
メカニズムを考えると「テスト効果」と同じなので、今回の研究ではこの辺りを調査しています。
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最強と呼び声高い「テスト効果」を深く掘り下げたメタ分析がこちら
人に教えて記憶力が向上するメカニズムを調査した研究
この研究(2)はシンガポール国立大学の124人の大学生を対象として行われました。参加者は以下の4つにグループ分けされています。
グループ分け
- 対照群(31人):指導も検索もしない
- 指導群(31人):脳で検索しながら指導した
- 検索群(31人):指導はせずに脳で検索した
- 検索なし群(31人):資料を読みながら指導した
つまり、指導×検索で2×2を調査したわけですね。参加者全員はドップラー効果についてそれぞれのやり方で勉強してもらいました。そして、一週間後に最終的な理解度をテストしました。
結果は以下のような感じ。
結果
- 教育群と検索群は対照群よりも優れていた
- 検索なし群は対照群と同等のパフォーマンスを示した
結果は勉強せずに資料から教えるのは記憶力を向上させませんでした。つまり、全体的に見て、教育効果の利点は検索の実践に起因している可能性があるわけです。興味深い結果ですね。もし教科書を見ながら勉強を教えているなら、記憶力の向上は見込めないかもしれません。
ただし「教育効果のメカニズムは検索練習だけではない」と著者はおっしゃっています。
関連して教育には、おそらく検索を超えた多くの認知プロセスが含まれている。具体的には、どのような資料を提示するか(しないか)を計画し、その資料をどのように構成し表現するかを考え、論理的に提供しようとする。理論的には、必ずしも検索を必要としないこれらのプロセスはいずれも、理解のパフォーマンスを向上させる可能性があります。加えて、教育用資料が与えられたとき、自己説明のような他の潜在的に有益な推敲過程が検索なし条件で妨げられたと考えられる。
つまり、単に模擬テストをするよりも別の要素で学習に役立つ可能性はあります。ただ注意したいのはただ資料を見ながら、要約するというやり方です。この点だけ注意して自分が勉強した上に、教える構成を考えれば教育効果が強く発揮されるでしょう。
それではぜひ参考に。
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