モーツァルト効果は嘘?音楽が認知に与える本当の影響

2019年4月26日

音楽

 

今回はモーツァルト効果について解説します。

 

モーツァルト効果が話題になった研究

クラシックを聞くと「頭が良くなる」「IQが上がる」という噂はきちんとした研究が情報元になっています。それが1993年に発表された研究(1)で、モーツァルトを聞いただけで空間認知能力が上がるというものでした。ちなみに実験で使われた音楽は「2台のピアノのためのソナタ」でした。

 

 

この音楽を聞くだけで認知機能のパフォーマンスが向上するなら、毎日でも聞きたいですね。

 

モーツァルトの母校によって否定された「モーツァルト効果」

その後色々な研究が行われますが、同じ結果は出ませんでした。決定打になったのは2010年の大規模なメタ分析(2)で、モーツァルト効果は完全に否定されました。

皮肉なことにメタ分析を発表したのはモーツァルトの母校ウィーン大学です。ということで、クラシックを聞いただけで、特定のパフォーマンスが上がることはありません。

音楽を聞くだけでは認知機能は向上しませんが、音楽の練習では良い結果が出ています。

 

子供の音楽レッスンは認知能力の発達と関連

この研究は6-25歳の参加者を対象に行われた縦断研究(3)です。

 

グループ分け

  1. 2007年:339人
  2. 2009年:273人
  3. 2011年:65人

 

そして、それそれの期間で認知テストや学力テスト、アンケート、神経イメージングを行いました。ざっくりいうと、認知能力や音楽習慣、脳の画像をとったわけです。結果は以下のような感じ。

 

結果

  • 視覚空間・言語ワーキングメモリで高いパフォーマンス
  • 推論能力も関係あり
  • 数学の成績と正の相関
  • 読解力は関連なし
  • 側頭葉・島皮質の体積に有意な違いあり

 

これらの結果から、音楽の練習は推論やワーキングメモリの高いパフォーマンスと関連しています。ちなみに保護者教育や放課後の活動を修正した後も効果が見られました。論文では音楽が認知機能を高める要因として、楽譜の符号化を挙げています。楽譜の符号化とは、楽譜を読んだり弾いたりするために音を変換することを言います。

この変換の作業は推論能力やワーキングメモリが必要になるので、影響があるとのことです。ただし、音楽群は元々高い認知能力を示していたので、音楽を習える子供は研究前から良い教育を受けていたということも考えられます。なので、良い教育とは別に大人になってから音楽の練習をしてどうなるかの研究もご紹介します。

 

アロマセラピー
勉強に使えるあのアロマが子供のワーキングメモリも改善した話

 

大人でも実行機能やワーキングメモリが強化される

気になるのは大人になってから音楽をはじめても、効果があるのかです。60歳以上の男女29人を対象とした研究(4)では、ピアノが認知能力やメンタル面の改善に役立ちました。参加者は以下の2つに分けています。

 

グループ分け

  1. ピアノ群:13人
  2. 対照群:16人

 

そして、それぞれ4ヶ月間はピアノの練習をしてもらいました。(対照群は別のレジャー活動)後は以下のような評価をしています。

 

評価

  • 心理評価
  • 運動機能
  • 認知機能
  • 気分
  • 生活の質

 

ちなみにピアノのレッスンは週に1回90分行われました。結果は以下のような感じ。

 

結果

  • 集中力・実行機能の著しい改善
  • 気分・主観的幸福感を改善
  • 生活の質を改善
  • うつ症状を有意に減少

 

総じてピアノレッスンは認知機能やメンタル面に良い影響を与えました。大人になってからでも、認知機能に効果があるのは嬉しいですね。

しかも、ストレス解消にもつながるので、音楽のメリットは計り知れません。クラシックを聞くだけでは効果はありませんが、実践するのはオススメです。

 

 

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