このページでは記憶力を高める方法をまとめて紹介します。
点数の付け方をざっくり解説
この記事では、ノウハウを科学的根拠のレベルや手軽さで評価しています。
科学的根拠 | 手軽さ | |
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5点 | 系統的レビューやメタ分析が1つ以上あり | 今すぐできる |
4点 | ランダム化比較試験が1つ以上あり | 少しお金がかかる/少し手間が必要 |
3点 | 前後比較・対照群のなし比較試験が1つ以上あり | ややお金がかかる/やや手間が必要 |
2点 | コホート研究やケースコントロールが1つ以上あり | かなりお金がかかる/かなり手間が必要 |
1点 | 予備研究や動物実験 | ほとんど不可能 |
エビデンスについて詳しく知りたい方は「論文のエビデンスレベルについて」をご参考に。難しいのが嫌いな方はスターを見れば、大体のレベルが把握できるかと思います。
運動系
10分の軽い運動
エビデンスレベル:
手軽さ :
運動が脳に良いというのは有名な話です。研究では10分のかなり軽い運動でも、海馬の高い活性化が確認されています。軽い運動とは、ゆっくりのウォーキングやヨガ、太極拳などです。こういった軽い運動でも海馬全体の機能的活動レベルを高められると示されています。
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運動嫌い・受験生必見!10分の超軽い運動でも記憶力が改善すると判明
30分の有酸素運動
エビデンスレベル:
手軽さ :
30分の有酸素運動を一度行うだけで、意味記憶を有意に活性化させると示されています。また両側の海馬も有意に高い活性化が行われるとわかっています。別の研究では朝に30分の運動をすると、ワーキングメモリや実行機能が改善すると示されました。しかも8時間にわたって認知機能に利益を与えているので、長時間座る人は朝に運動するのがオススメです。
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運動しなきゃ大損!30分の運動を一度しただけで海馬を活性化させる
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これは強力!〇〇の有酸素運動は8時間も認知機能を高め維持する
手を握る
エビデンスレベル:
手軽さ :
手を握ると、優れたエピソード記憶を示したという面白い研究があります。この研究では記憶するときに右手を握り、思い出すときに左手を握るとエピソード記憶が最も高かったです。とはいえ有意差は出ていないので、さらなる研究が必要だとか。過去の研究でも手を握ると、逆側の前頭葉の神経活動が増加するという結果も出ています。
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記憶力をサクッと高めた簡単かつ意外な方法がこれ
スタンディングデスク・サイクリングバイク
エビデンスレベル:
手軽さ :
「座り」「サイクリング(座りながら運動)」「立ち」「歩き」を比較した研究では、座りが最もワーキングメモリパフォーマンスを悪くしました。つまり、座るよりもスタンディングデスクの方がワーキングメモリパフォーマンスが向上します。一方で座りながら動くサイクリングは立ちよりもワーキングメモリパフォーマンスが高かったので、必ずしも立つ必要はありません。今はスタンディングデスクもサイクリングバイクもあるので、試してみる価値ありです。
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座り、立ち、歩きの比較!ワーキングメモリに良いのはもちろん...。
アロマ系
ローズマリー
エビデンスレベル:
手軽さ :
ローズマリーのアロマはワーキングメモリや記憶力を高めるとわかっています。特に子供が対象のときは効果サイズが中程度から大きく、かなり効果的です。ローズマリーが記憶力を高めるのは1,8シネオールという香り成分のおかげです。この成分は別の研究でも認知タスクパフォーマンスと関連が見られています。
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勉強に使えるあのアロマが子供のワーキングメモリも改善した話
アロマによる睡眠学習
エビデンスレベル:
手軽さ :
一般的に睡眠学習は困難と言われていますが、アロマを使用した睡眠学習は実践的です。研究では勉強中と睡眠で同じアロマを嗅がせると、約16%も多く記憶していました。特にローズマリーを使えば、一石二鳥です。勉強中にローズマリーを使っている人は睡眠のときも試してみる価値ありです。
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睡眠学習は厳しい!けど、〇〇を睡眠中に使えば記憶力が16%高くなる
ローズマリーウォーター
エビデンスレベル:
手軽さ :
ローズマリーのアロマが記憶に良いのは有名ですが、最近はローズマリーウォーターでも実験が行われています。結果はローズマリーウォーターを飲むと、記憶テストで平均15%改善しました。かなり大きな違いですね。ちなみに脳内の血中酸素濃度も低下していて、ローズマリーは思い出すときに必要な酸素の抽出も促進するのだとか。
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速攻で記憶力を15%高める方法が発見された
リラックス
鼻呼吸
エビデンスレベル:
手軽さ :
鼻呼吸と口呼吸で比較した面白い研究では、鼻呼吸の方がエピソード記憶を増強すると示されました。正確なメカニズムはわかっていませんが、鼻呼吸によって海馬の脳波活動を高め、効果的な想起を可能にしているとか。ただ比較的大きな違いが出ているので、口呼吸をしている人は鼻呼吸を意識してみる方がよいかもしれません。
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嗅覚と海馬は関係してる!?記憶に「鼻呼吸」が良い理由
マインドフルネス瞑想
エビデンスレベル:
手軽さ :
マインドフルネス瞑想は言語学習や記憶力を改善すると示されています。研究では10分のマインドフルネスで、符号化プロセスが強化されると示されました。符号化とは、情報を取り込んで記憶として保持されるまでのプロセスのことです。言い換えれば、学習がすでに終わった後でマインドフルネス瞑想をしても効果がないということです。マインドフルネス瞑想は勉強前のタイミングでやらなければ、効果がありません。
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たった10分のマインドフルネスで記憶力向上!だがタイミング命だった話
落書き
エビデンスレベル:
手軽さ :
落書きが記憶力を高めるという研究はいくつかあります。研究では、落書きをしただけで29%も多く記憶していました。メカニズムはわかっていませんが、落書きが脳の空想を減らすことで脳のパフォーマンスを助けているかもしれないとのことです。一般的に落書きは集中できていないように見えますが、実際は集中するのを助ける可能性があります。
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意外すぎ!頭に悪そうな〇〇が29%も記憶を改善した話
好奇心
エビデンスレベル:
手軽さ :
研究では、好奇心が強くなるほど成績も上がるとわかっています。特に事前知識があると、好奇心も強くなる傾向があります。実践的に使うなら、教育者は学習者がすでに持っている知識を少し超えた情報を提供すると、学習の強化に役立ちます。まずは自分の勉強したい分野において、「何を知っているか?」から考えてみると良いかもしれません。
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勉強が好きになれないとダメ?好奇心こそが良い学習につながるという研究
昼寝
エビデンスレベル:
手軽さ :
1時間の昼寝は休まず勉強や休憩と比較して、有意に優れた記憶力を示しました。しかもこの研究が面白いのは昼寝の効果は一週間後のテストでも、優れた成績を示した点です。休憩も悪くはありませんでしたが、長期的に見ると記憶保持は劣ります。1日中勉強をしている人は昼寝が必須です。
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記憶を定着させるなら昼寝・休憩・勉強でどれがベストなのか
ホワイトノイズ
エビデンスレベル:
手軽さ :
ホワイトノイズを聞きながら勉強すると、記憶力が上がるとわかっています。研究でもホワイトノイズは新しい単語の習得を促進すると示されました。メカニズムではホワイトノイズがドーパミン放出を増加させることで、記憶力や集中力を改善しているのだとか。周りがうるさいときはホワイトノイズを聞くのはありかもしれません。
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素晴らしい!集中力を改善すると、話題のあれが記憶力も改善した話
環境系
気温
エビデンスレベル:
手軽さ :
認知機能と室温の研究はいくつか出ています。その中でも個人的に信頼しているのは「最適な室温は男女差があるんじゃない?」という研究です。この研究では女性は気温が高くなるにつれて認知機能が向上し、男性は低くなるにつれて向上するという結果が出ています。具体的には女性では26-27℃で、男性では20℃以下が目安です。
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生産性と認知機能を最大化する室温は男女で違うと判明した
テストと同じ場所
エビデンスレベル:
手軽さ :
勉強した場所とテストした場所が同じだと成績が良くなるとわかっています。これは環境的文脈依存記憶と呼ばれているものです。文字通り環境を手がかりにして、思い出すことを言います。実際にメタ分析でも、記憶に対して中程度の効果をもつと示されました。理想はテストと同じ場所で勉強をしてしまうのが良いです。
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試す価値あり?科学的に最強の勉強場所はテストと同じ場所かもしれない
場所を変える
エビデンスレベル:
手軽さ :
先ほどと真逆の意見ですが、場所を変えただけで成績が40%以上も上がるという結果も出ています。これは環境が変わることで、場所の情報と単語がセットで記憶されて手がかりが2倍になったということです。ただし実験では場所を変えて2回勉強した上に、中立的な部屋で勉強したので、この結果はテストをどんな場所でやるかで変わるかもしれません。
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勉強場所は変えた方が良い?思い出す数が40%以上増加した方法
食べ物やサプリ
コーヒー
エビデンスレベル:
手軽さ :
研究では、早朝のカフェインが記憶力を大幅に向上させるとわかっています。悪影響も確認されていませんし、なかなか良い結果でした。ちなみにこの結果はカフェインによる覚醒レベルの向上ではなく、潜在的に海馬記憶を増強しているのではないかと考えられています。朝から勉強する人はコーヒーは試してみる価値ありです。
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コーヒー好きに朗報!「朝の目覚めにコーヒー」が記憶力を著しく改善した話
ガム
エビデンスレベル:
手軽さ :
ガムの研究では有意に学習を改善するとわかっています。具体的には用語テストや理解度テストの成績が有意に高かったです。また数学テストでも実験すると、ガムを噛んだグループは多くの問題を解き、間違いも少ないと示されています。注意力の改善も見られているので、勉強中のガムは試してみる価値ありです。
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【嬉しい結果】集中力を高めると噂のあれが学習成績も向上させた
ビタミンD
エビデンスレベル:
手軽さ :
ビタミンDと認知機能の研究では記憶力の向上が確認されています。具体的には、1年間で2000IU/日のビタミンDを飲んでもらって、記憶テストで有意な結果を出しました。ただし注意力テストで反応速度が遅くなってしまったので、高齢者の方は注意した方が良いです。論文の著者は転倒リスクを高めてしまうことを危惧していたので、高齢者の方が無理に飲む必要はありません。
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ビタミンDで記憶力アップは正しいけど、リスクもあるという話
ルテイン・ゼアキサンチン
エビデンスレベル:
手軽さ :
若者と高齢者を対象とした研究で、どちらも記憶力で有意に優れた成績を示しました。内容量はルテイン10mgとゼアキサンチン2mgで、1日1錠でした。ちなみに記憶力以外にも、注意力や推論能力、認知の柔軟性が向上しています。
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集中力と記憶力がガツンと向上した実力派のサプリがこちら
野菜・果物・オレンジジュース
エビデンスレベル:
手軽さ :
大規模なコホート研究では、オレンジジュースを毎日飲む人は低い認知機能になる可能性が47%も低いと示されています。他にも野菜やベリー系の果物、フルーツジュースの摂取量と認知機能は関連が見られました。論文ではオレンジジュースは認知機能に対して保護的な役割を果たす可能性があると考えられています。というのも、オレンジに含まれるカロテノイドβ-クリプトキサンチンと認知機能の関連が示されているからですね。
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オレンジジュースは記憶力が低下する可能性を47%減少と関連した大規模研究
クルクミン
エビデンスレベル:
手軽さ :
1年半にわたってクルクミン90gを飲んでもらった研究では、言語記憶や視覚記憶を有意に改善しています。特に長期記憶に関する効果サイズは0.68で有意に大きかったです。別の研究ではワーキングメモリや気分の改善も見られているので、飲める人は飲んでみる価値があります。ただ使われているサプリはやや高めなので、余裕のある人は試してみると良いかもしれません。
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健康な成人の集中力・記憶力を向上させた「クルクミン」の話
地中海料理
エビデンスレベル:
手軽さ :
地中海料理と認知機能を調査した系統的レビューでは、記憶領域では有意に小さな効果サイズが示されています。結果は限定的ではありますが、認知機能全体では良い結果でした。地中海料理は加齢に関わらず、認知力低下を軽減して、認知機能を改善する可能性があります。
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地中海料理は認知機能に役立つのかを徹底調査した研究がこちら
記憶力を低下させる原因
ストレス
エビデンスレベル:
対策のしやすさ :
3世代にわたって調査されたコホート研究では、高いコルチゾール値(ストレスホルモン)と悪い記憶力や実行機能、注意力と関連していました。特にストレスホルモンと総脳体積の低さとも関連が見られています。過去の研究では海馬の萎縮との関連も見られているので、ストレスは記憶力低下をもたらす可能性があります。
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【悲報】ストレスが記憶力を低下させ脳を小さくするかもしれない
唐辛子
エビデンスレベル:
対策のしやすさ :
50g以上/日の唐辛子を食べた人は食べていない人に比べて、低い記憶力をもつ可能性が2倍以上増加と関連していました。しかも、記憶系の有病率が高いという結果も出ていて、唐辛子が認知機能低下を示す可能性があります。正確なメカニズムはわかっていないものの、唐辛子に含まれるカプサイシンは神経毒性があるため、悪影響をもたらす可能性があるわけです。
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唐辛子を食べると記憶力が落ちる?唐辛子が認知機能を低下させるかもな話
無線通信
エビデンスレベル:
対策のしやすさ :
スイスの学生を対象としたコホート研究では、スマホの通話時間と意味記憶の成績で関連が見られています。特に興味深いのは、右手で電話をする人は意味記憶スコアと脳が浴びた通信量で有意に関連が見られました。意味記憶は脳の右側が使われているので、影響があるのかもしれません。ちなみに左手で電話していた人もちゃんと言語記憶で成績の減少が見られています。頻繁に電話をする人はイヤホンを付けたりスピーカーにしたり工夫するのがオススメです。
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【驚愕】無線通信がマジで記憶力に悪影響を出していたという研究
アルコール
エビデンスレベル:
対策のしやすさ :
アルコールが認知機能全般に悪影響を与えるのは有名な話です。研究でも、短期記憶・長期記憶ともに中程度のパフォーマンス低下が示されています。特に記憶の中でも、記憶の形成は影響を受けやすいです。ちなみにアルコール量はビール3杯とかで影響が見られているので、少なければ大丈夫ということはありません。飲み会で飲む量はもちろんアウトです。
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お酒の悪影響が強烈!アルコールが翌日の集中力・記憶力を根こそぎ奪う
音楽
エビデンスレベル:
対策のしやすさ :
集中力を上げるために音楽を聞くという人はいますが、むしろ注意散漫になって悪影響が出ます。これは記憶力においても例外ではありません。メタ分析では、BGMが記憶力を低下させたと示されています。また好き嫌いに関わらず、歌詞のある音楽は読解力を低下させました。勉強のときは無音がベストです。
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音楽を聞きながらの作業は集中力を上げるのか?下げるのか?問題
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〇〇の音楽は好き嫌いに関わらず、読解力を壊滅的に低下させる
睡眠不足
エビデンスレベル:
対策のしやすさ :
睡眠不足は認知機能に悪影響を出すのは言わずとも知られています。研究では4時間睡眠を2週間続けたら、2日徹夜したのと同等のワーキングメモリでした。ちなみに6時間睡眠を2週間続けると1日徹夜したのと同等になるので、7時間以上は寝るのがオススメです。
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知らなきゃ損!6時間睡眠が徹夜相当の認知機能低下を引き起こす