今回は有名な学習方法がどれほど効果的かを検証した研究を紹介します。
効果的な10の勉強法を検証した研究
この研究(1)は学生がよく使っている10の学習テクニックの有効性を調査したものです。10の学習テクニックには以下のようなものが含まれました。
学習テクニック
- 精緻的質問
- 自己説明
- 要約
- ハイライト/下線
- キーワードニーモニック
- テキストの画像使用
- 再読
- 模擬テスト
- 分散学習
- インターリーブ
上記の勉強方法を詳細にレビューして、三段階評価しています。ちなみに実用性が低いと判断された勉強法はこの中で5つありました。勉強する時は中~高評価の勉強法をオススメします。
高評価の勉強法
1.模擬テスト(テスト効果)
模擬テストは最強の勉強法といえるほど、科学的に効果が証明されています。いわゆるテスト効果というやつです。模擬テストは情報を思い出す行為を繰り返すため、記憶力の強化につながります。効果はメタ分析でも証明されていて、高評価となっています。
研究では模擬テスト・復習・なしで比較すると、模擬テストがダントツで優れた成績でした。実用性の面でも時間がかかるわけではなく、ほとんどトレーニングなしで利用できます。しかも幅広い範囲で利用できますし、オススメの勉強法のひとつです。
2.分散学習
分散学習は時間を分散してコツコツ勉強する方法のことです。
逆に一度に勉強してしまう方法を集中学習と言います。分散学習と集中学習の違いは主に長期記憶にあります。どちらも同じ時間であれば、テストで成績が大きく変わることはありません。しかし、時間が経ってから再度テストをすると、分散学習では忘却率が低く、成績が維持されるとわかっています。
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【保存版】科学的に優秀な分散学習の総まとめ!一夜漬けの2倍記憶できる?
中評価の勉強法
3.精緻的質問
精緻的質問とは、事実を正しく理解するための質問のことです。主に「なぜ〇〇なのですか?(Why)」や「どうして〇〇なのですか?(How)」などの質問のことを言います。一般的なフォーマットは「なぜこの事実が「X」に当てはまり、他の「X」に当てはまらないのだろうか?」です。
実践的には事前知識と新しい知識を統合するのに使えます。また自分に「なぜ?」の質問をすることで、学習を促進することも可能です。
研究では0.85-2.57という大きい平均効果量が報告されています。中評価なのは複雑な事柄に対して、「なぜ」の質問が適切ではないケースが考えられるためです。
4.自己説明
自己説明とは、自分が学習した内容を説明する学習法です。学習中に自分の処理を説明させることで、学習を強化させます。精緻的質問と部分的には同じですが、決まった型は存在していないので、説明を引き出す型は研究ごとに違いがあります。
研究では自己説明グループは説明なしと比べて、かなり優れた成績でした。特に効果が認められている年齢層も幅広く、記憶力や理解力などの色々な尺度で改善が示されています。
ただし学習者の知識や能力にどの程度依存しているかや自己説明の適切な引き出し方はさらなる研究が必要です。
5.インターリーブ
インターリーブとは、ランダムに勉強する方法のことです。対照的なのはブロック学習です。例えば、「時代ごとに覚える」とか「生物の種類ごとに覚える」などが当てはまります。
インターリーブは完全なランダムに記憶する学習法のことです。研究ではランダムに記憶した方が有意に成績が良かったですが、参加者の78%はまとめて記憶した方が良いと回答しています。
ただしまだ研究も少なく、一貫してうまく機能しない場合も報告されています。インターリーブの効果は根底にあるメカニズムが完全に理解されていないため、常に適切であるとは限りません。
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ブロック学習は絶対するな!意外にもランダムの方が記憶に残りやすいと判明
低評価の勉強法
6.要約
要約は大量の情報から重要なポイントを捉えてまとめます。研究ではメモを取ることと同じ程度の利益をもたらしました。この研究以外にもいくつかの研究で良い結果が出ています。
それでも低評価なのは要約そのものが多種多様な方法で実行されてきたため、一般的な結論が出しづらくなっているためです。どちらかといえば、要約の効果を引き出すために集中的なトレーニングプログラムが必要になります。勉強した内容を要約するよりも評価の高い勉強をする方が効率的に勉強できるでしょう。
7.ハイライト/下線(強調表示)
下線はありがちな勉強法ではありますが、記憶力や理解力などのパフォーマンスに影響はありません。テキストが難しい場合や効果的に復習するための知識を持っている場合は役立つかもしれませんが、高いレベルのタスクでパフォーマンスを損なう可能性があります。基本的にやる必要はないので、オススメはしません。
8.キーワードニーモニック
キーワードニーモニックとは、語呂合わせや替え歌のようなものです。太陽系の星を記憶するために「水金地火木土天冥海」というようにリズムよく順番に記憶する学習方法です。研究によっては対照群よりも有意に優れた成績を示しています。記憶力を高められる証拠は比較的多くある方法です。
しかしこの学習法を中心に考えると、キーワードを考える時間が必要になるため、非常に効率が悪いです。しかも、ただキーワードを記憶しているだけなので、永続的な学習を生み出せません。実践的には模擬テストの方が使いやすく、適用範囲も広いです。
9.文章のイメージ化
文章のイメージ化は研究でも、理解テストのパフォーマンスを大幅に向上させました。記憶力に関しても、イメージの指示を受けたグループは対照群と比較して、記憶力が優れているとわかっています。
しかもイメージの作成はキーワードニーモニックよりも幅広く適用できますし、有望な方法です。しかし、イメージの恩恵はイメージしやすい素材や記憶力テストに大きく制約されているので、低評価となっています。イメージ化の技術に関しても、さらなる研究が必要とのことです。
10.再読
再読は学生が最も頻繁に使用している手法の1つです。ある研究では65%が試験の準備をするときに再読を使用していると報告しています。ちなみに再読を検証した研究では0回、1回、2回、4回に分けて読んでもらい、文章中から10%の文章を削除しました。
学生には削除された文章を記入するよう問題を出すと、再読グループでパフォーマンスが向上していました。最も効果的に再読を利用するなら、最初に読んだ直後ではなく、適度に時間を開けてから読むほうが良いです。再読が素晴らしいのはトレーニングが必要ない点です。
しかし、他の学習手法と比較すると、一貫して劣った手法であるとわかっています。そのため、模擬テストや精緻的質問などの手法を使う方が効率的に理解・記憶することができます。全く効果がないわけではありませんが、特別効果のある方法でもありません。
それではぜひ参考に。