ワーキングメモリとは?科学的に鍛える10の方法から悪影響の総まとめ

ワーキングメモリを鍛える

 

ワーキングメモリの基本から鍛える方法まで解説しています。

 

ワーキングメモリとは?

ワーキングメモリとは、意識して情報を処理する能力のことです。専門的には、作業記憶とも呼ばれています。

 

短期記憶との違い

短期記憶
短期記憶は言葉のとおり短期間だけ記憶する能力のことです。例えば、短期記憶はなんの規則性もない、5個の数字を記憶します。

 

ワーキングメモリ
一方のワーキングメモリは記憶だけではなく、その情報で作業できるようにする能力です。例えば、1000から7を引き続けるイメージです。

 

このように短期記憶とワーキングメモリは別の意味をもちます。

 

前頭前皮質(前頭前野)が基盤となる

前頭葉
ワーキングメモリは、色々な脳の部位と関連しています。その中でもワーキングメモリの基盤となっているのが前頭前皮質(前頭葉)と呼ばれる部位です。とはいえ、ワーキングメモリの作業をしていると、頭頂皮質や前帯状皮質といった他の部位も活性化しているとわかっています。

 

ワーキングメモリの日常での役割

ワーキングメモリは日常で以下のような役割をしています。

 

ワーキングメモリの役割

  • 優先順位をつける
  • 集中力
  • 素早い判断
  • 数字や単語などの必要な情報へアクセス
  • 判断
  • 環境への適応
  • モチベーションの維持
  • 自己コントロール

 

主に自分で意識して判断したり思い出したりする作業で、ワーキングメモリが使われています。集中力に関しても、ワーキングメモリが余計な情報を省いているため、集中できるようになるわけです。後はワーキングメモリが強い人ほど、誘惑に負けづらく、モチベーションも維持しやすい傾向があります。

 

ワーキングメモリとIQの関係

ワーキングメモリはIQとは全くの別物です。

 

IQとの違い

  • IQ:知能指数。知っていること。
  • ワーキングメモリ:作業記憶。知っている情報を使うこと。

 

簡単に説明すると、上記のような違いです。IQが高ければ、ワーキングメモリが強いわけではありません。ちなみに学生の成績を予測するのであれば、今はIQよりもワーキングメモリの方が優れているという研究(1)もあります。

 

ワーキングメモリを鍛える10の方法

1.ワーキングメモリトレーニング

ワーキングメモリトレーニング

エビデンスレベル:
手軽さ     :

 

ワーキングメモリトレーニングの効果はここ最近では否定的な結果が多く出ています。最初はNバック課題が流動性知能を改善する効果があると発表されました。(2

 

メモ

流動性知能とは、新しい状況に適応するために必要な能力のことです。主に推論能力や思考力、記憶力、集中力などのことを言います。

 

一般的に言えば、記憶力のトレーニングなのに別の認知機能が改善したので、驚きの結果だったわけですね。しかし、その何年か後でメタ分析の方法に疑問を投げかける論文(3)や流動性知能は改善できないというメタ分析(4)が出てきました。

(4)のメタ分析を見てみると、以下のような結果になっています。

 

ワーキングメモリトレーニングの結果

引用元:Working Memory Training Does Not Improve Performance on Measures of Intelligence or Other Measures of “Far Transfer”の図2を翻訳修正

 

大雑把に言うと、遠い転移は起きないが、ワーキングメモリには小さく短期間の改善が起きるとわかりました。一方で非言語スキルや言語スキル、読解力、数学力などは改善しませんでした。

つまり、遠い転移はなく、ワーキングメモリへの影響も小さいということですね。ちなみにトレーニング方法についても検討されていて、最も良いのはコグメドでした。

 

言語視覚空間
コグメド0.910.34
Nバック課題0.170.24
ワーキングメモリスパン課題0.190.18
その他0.160.37

 

ワーキングメモリトレーニングとして効果があると言えそうなのはコグメドくらいです。比較的有名なNバック課題ではそもそもワーキングメモリにすら小さい影響しかありません。詳しく知りたい人は以下の記事をご参考に。

 

ワーキングメモリトレーニング
ワーキングメモリのトレーニングはほとんど効果がないと判明した
nバック
nバック課題をやってもワーキングメモリはほぼ向上しないメタ分析

 

2.食べ物

ワーキングメモリの食べ物

エビデンスレベル:
手軽さ     :

 

ワーキングメモリへの影響が確認されている食べ物はいくつかあります。

 

WMと食べ物の研究

  • ブルーベリー(5
  • ココア・ダークチョコ(6
  • 緑茶(7
  • 青魚(8
  • ナッツ(9
  • 地中海料理(10
  • コーヒー+ラムネ(ブドウ糖)(11

 

主にフラボノイド(ポリフェノール)オメガ3脂肪酸といった成分が含まれる食べ物が多いです。上記で挙げた食べ物はワーキングメモリ以外にも、健康や認知機能、メンタルとも関連が見られていることもあります。習慣的に食べておいて損はありません。

 

コーヒー
コーヒーとブドウ糖を一緒に食べると集中力はアップするのかという研究

 

3.アロマ

アロマ

エビデンスレベル:
手軽さ     :

 

アロマはワーキングメモリを改善するとわかっています。

 

効果が確認されたアロマ

  • ローズマリー(12
  • ペパーミント(13

 

ローズマリーはワーキングメモリのタスクパフォーマンスにおいて中程度から大きい効果サイズを持つとわかっています。ただ研究は子供を対象としたものなので、成人よりも影響が大きい可能性も示唆されています。

一方のペパーミントは記憶力や集中力に対して効果があるとわかっています。(13)の研究では、ペパーミントティーで実験していますが、ワーキングメモリテストで有意に高いスコアでした。

 

ペパーミント
勉強や仕事で使える!集中力をサクッと高める定番アロマがこちら

 

4.マインドフルネス瞑想

瞑想

エビデンスレベル:
手軽さ     :

 

マインドフルネス瞑想はワーキングメモリを改善すると多くの研究で示されています。(14,15)実際に研究でも1日10-20分の瞑想を2週間続けて、ワーキングメモリを改善しました。

また最近の研究(16)では1ヶ月間のマインドフルネス瞑想で課題のエラー率が有意に低く、その改善と左海馬の体積増加と有意に関連していました。一方で2週間のマインドフルネス瞑想では、ワーキングメモリ容量を改善しないという研究も発表されています。(17)この辺りは系統的レビューが欲しいところですね。

 

5.運動

運動

エビデンスレベル:
手軽さ     :

 

運動の増加がワーキングメモリを改善することが証明されています。(18)色々な運動とワーキングメモリで研究が進められているので、以下にまとめてみました。

 

運動内容

  • HIIT:20
  • 裸足でランニング:21,23
  • 筋トレ:22,23
  • 平均台:23
  • 姿勢に注意して歩く:23
  • 木登り:23
  • ヨガ(△):23,24

 

ワーキングメモリに影響のある運動は、固有受容覚が強く関係する運動でよく見られています。

 

メモ

固有受容覚とは、筋肉や関節、腱などの感覚のことです。目を閉じていても体がどう動いているのかわかったり、重さを判定したりするのはこの感覚のおかげですね。

 

固有受容覚のトレーニングは以下のような感じです。

 

固有受容の運動

  • 平均台(バランス)
  • 裸足で走る
  • 木登り
  • 姿勢に注意して歩く
  • 重いボールを運ぶ(筋トレ)

 

(23)の研究では、固有受容覚に関わるトレーニングをした人がワーキングメモリ容量を増加させました。特に動的なトレーニングだとより良いので、裸足でフットサルをやってみるのも良さそうです。

 

散歩
運動嫌い・受験生必見!10分の超軽い運動でも記憶力が改善すると判明

 

6.光

オフィス

エビデンスレベル:
手軽さ     :

 

光とワーキングメモリも研究がいくつかあります。最近の研究(25)では、朝のメラトニン減少によって、前頭前野の活性化が増加するとわかりました。

 

メラトニンとセロトニンの分泌量
メラトニンは眠気を誘い、光を浴びると減少するホルモンです。日中に光を浴びるとセロトニンが分泌され、メラトニンの原料となります。

 

別の研究(26)でもブルーライトを浴びると、ワーキングメモリのパフォーマンスが改善し、前頭前野の活性化が増加しました。逆に1ヶ月間ブルーライトを浴びない実験をしたところ、ワーキングメモリのパフォーマンスが有意に低下しています。基本的なことではありますが、日中にきちんと外へ出て光を浴びるのが大切です。

 

ブルーライト
ブルーライトを浴びないと集中力・ワーキングメモリはだだ下がりする

 

7.筆記療法

筆記療法

エビデンスレベル:

手軽さ     :

 

筆記療法とは、ストレスを感じた出来事や感情、考えを書き出す方法です。

筆記療法とワーキングメモリの研究(27)では7週間の筆記療法で、ワーキングメモリの増加を示しています。この研究では原因と洞察の言葉を良く使用した場合に、ワーキングメモリの大幅な改善と関連していました。

別の研究(28)では20分の筆記療法を5週間続けたところ、ワーキングメモリ容量を改善しています。筆記の内容は主にトラウマ体験で、自分の将来やちょっとしたトピックを書いた人は影響がありませんでした。

 

筆記療法
筆記療法の効果はごくわずか!筆記療法のメタ分析を調査してみた

 

8.音楽

ワーキングメモリと音楽

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手軽さ     :

 

音楽とワーキングメモリも研究が行われている分野です。実際に研究(29)でも子供の頃にやった音楽の練習とワーキングメモリ容量で、正の相関が見られています。つまり、小児期や思春期のワーキングメモリの発達に音楽の練習が重要であると示しているわけですね。

また大人でも音楽の練習をしたら、ワーキングメモリや実行機能が強化されています。(30)ただし対象者が高齢者ではありますが、音楽の練習を6ヶ月間行うと、ワーキングメモリの成績が有意に改善しました。

 

9.昼寝

昼寝

エビデンスレベル:

手軽さ     :

 

昼寝はワーキングメモリのパフォーマンスに大きな影響を与えます。実際に90分の昼寝をしてもらった研究(31)では、ワーキングメモリパフォーマンスが起きていた人よりも良かったです。

別の研究(32)でも90分の昼寝で、ワーキングメモリ能力が向上しました。しかしこの研究は全体的に睡眠の質が低い参加者が多いため、健康な睡眠の人に対してはどこまで効果があるかは不明です。認知機能を重視するなら、90分が良い結果を出しています。

 

昼寝
記憶を定着させるなら昼寝・休憩・勉強でどれがベストなのか

 

10.ゲーム

ゲーム

エビデンスレベル:
手軽さ     :

 

若い成人を対象として研究(33)ではアクションゲームがワーキングメモリを改善しました。しかし、高齢者を対象とした研究では戦略ゲームで言語記憶が改善しましたが、問題解決やワーキングメモリは改善しませんでした。ゲームのジャンルによって効果が違うとも取れますが、新しい研究を待ちたいところです。

ただし包括的なメタ分析(34)では、ゲームが認知機能を向上させないという結論を出しています。ワーキングメモリはわかりませんが、影響は小さいかもしれません。

 

ゲーム
【ゲームで集中力向上】ゲーマーの脳は良くも悪くも変化してるという研究

 

ワーキングメモリに悪影響が出るリスト

ワーキングメモリに悪影響を与えるものは以下のような感じです。

 

WMへの悪影響リスト

  1. アルコール:36
  2. 不安,ストレス:37,38
  3. マルチタスク:39
  4. スマホ,SNS:40
  5. 睡眠不足:41
  6. マリファナ,アヘン:42,43
  7. ニコチン(影響なし):44,45

 

意外にもニコチンは悪影響がなくて、びっくりしました。

とはいえ、タバコを吸ったらワーキングメモリが向上というわけではなくて、潜在的には前頭前野の活性化を妨げて、認知機能を低下させるかもとのことでした。

それではぜひ参考に。

 

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