肥満の人が高タンパク食にすると、睡眠が改善するという研究が発表されたので紹介します。
肥満の人が「高たんぱく食」にしたら睡眠が改善したRCT
2016年に行われた肥満体型の人を対象にした研究(1)では、たんぱく食が睡眠を改善するとわかりました。この研究では2つのランダム化比較試験を行っています。
1つ目の研究では14人の男女を対象に以下のようなグループ分けをしました。
グループ分け
- 牛肉と豚肉でタンパク質摂取:10%・20%・30%
- 大豆と豆類でタンパク質摂取:10%・20%・30%
1ヶ月間はエネルギー制限をしつつ、食事量に対して「10%」「20%」「30%」に分けて合計6つの組み合わせにしています。
2つ目の研究では48人の成人を対象に「正常タンパク食」と「高タンパク食」に分けて、16週間食事療法を続けました。後は睡眠の質を「GSS」と「PSQI」で計測して結果を出しています。
結果は以下のような感じ。
結果
- タンパク質の供給源とは無関係に睡眠の質が改善
- 食事量の20%群が最も高い睡眠スコアだった
- 高タンパク食群は睡眠の質を改善させた
総じて高タンパク質の食事が睡眠の質を改善しました。ただし、著者らはタンパク質の摂取量が多いほど、睡眠が改善されるメカニズムを証明したものではないとしています。
この研究では体重減少によって、睡眠時間・質ともに改善するという見方をしているようです。ただし研究2では高タンパク質群で睡眠の質が改善されて、通常のタンパク質群で体重減少後に変化が起きていません。
このことから食事の内容が体重減少による睡眠の改善に影響を与えると考えられています。つまり、ただダイエットをするのではなく、高たんぱくな食事を摂りながら減量することで睡眠の質も改善されるというわけです。
運動している男女には効果が見られていないので注意
ここで疑問なのは、肥満以外の人は高タンパク食の恩恵を受けられるのかという点です。別の研究(2※PDF)では、運動訓練を受けた男女を対象に高タンパク食を摂取してもらいました。
対象者は18人の男女で、2週間の調査でした。すべての対象者は運動訓練を受けていて、週あたりの平均有酸素運動時間は4時間前後となっています。そして、無作為に「低タンパク質食」と「高タンパク質食」に分けて比較しました。
結果は以下のような感じ。
結果
- 高タンパク質群はタンパク質・カロリー摂取量ともに有意に多かった
- タンパク質摂取量が睡眠や1日の総活動量に影響はなし
ということで、運動をする人では高タンパク質が睡眠の質に影響を与えることはありませんでした。他の研究でもタンパク質の摂取で睡眠の質が向上したり、逆に悪影響があったりと結果が分かれています。
この研究ではサンプル数も少ないため、はっきりとした結論は出ていません。とはいえ、タンパク質には睡眠以外のメリットがあるので、習慣的に摂るのがベストでしょうね。