【2020年版】世界の飢餓と日本の飢餓を総まとめ

2020年9月18日

飢餓

 

このページでは、2020年に発表された世界の飢餓と日本の飢餓についてまとめています。

 

世界の飢餓の現状

2020年のレポート(1)では、2019年時点で6億8780万人が飢餓状態に陥っていると報告されています。この数値は世界人口の8.9%にあたります。

 

 

飢餓は2014年から増加していて、2018年から19年の間に1000万人も増えました。SDGsでは「2030年までに飢餓をなくす」ことを目標にしていますが、予測ではゼロになるどころか8億4140万人に増加する見込みです。

 

地域別の状況

 

地域別の飢餓人口を見ると、最も飢餓者が多いのはアフリカではなく、アジアです。アジアでは現在3億8100万人の飢餓者がいて、世界の55.4%がアジアにいます。しかし、アジアは人数こそ多いものの、飢餓人口の削減に進展が見られていて、2018年から19年では減少に転じています。

一方のアフリカでは、2億5030万人と世界全体の36.4%となっています。予測では2030年には飢餓人口でアフリカがアジアを抜いて、最も栄養不良の多い地域になる見込みです。

 

飢餓の重症度別

 

SDGsでは、フードセキュリティの重症度が明確に示されています。フードセキュリティとは、食料の入手可能性のことです。主に食料の質・量で適切に手に入れられるかで示されます。いわゆる食料安全保障のことです。

 

重度な食糧不安(飢餓状態)重度な食糧不安を経験している人々は食料が尽きてしまい、最悪の場合、1日(または数日)も食べられない状態にある
中程度の食糧不安中等度の食糧不安を経験している人々は食糧を手に入れる能力に不安を感じており、消費する食糧の質や量に妥協せざるを得ない状況にある。

 

重症度別で地域ごとに見ると、重度な食糧不安の比率が大きいのはダントツでアフリカです。

 

 

飢餓状態の人口は6億8780万人でしたが、中程度の食糧不安の人口も合計すると約20億人で世界全体の25.9%となります。

 

飢餓とジェンダーギャップ

実は飢餓にも男女間格差が見られます。世界レベルでは、男性よりも女性のほうが食糧不安の割合が高いです。

 

 

ラテンアメリカや北アメリカ・ヨーロッパでは、ほぼすべての年で統計的に有意差が見られています。さらに世界全体では2018年から19年にかけてジェンダーギャップが増加しました。地域別で見ると、アジアは飢餓のジェンダーギャップが比較的小さいものの、女性の方が飢餓人口が多い傾向は常に確認できます。

 

子どもの飢餓の現状

5歳未満の子供の飢餓では、1億4400万人(21.3%)が発育不全と報告されています。また4700万人(6.9%)が衰弱、3830万人(5.6%)が過体重です。

 

 

発育不全はほとんどの地域で減少が見られていますが、SDGsの目標達成に必要な数値をはるかに下回っています。発育不全の子供は10人中9人がアジアかアフリカに住んでいて、それぞれ54%・40%を占めている状態です。ただ中央アジアと東アジア、カリブ海諸国では、発育不全の削減率が最も高く、2030年の目標達成に向けて軌道に乗っています。

 

食事の多様性は3人に1人の子どもしか保たれていない

世界的に見ると、生後6~23ヶ月の子供しか最低限の食生活の多様性は保たれていません。ここでいう最低限の多様性とは、8つの食品群のうち5つの食品を食べられる食生活のことです。

 

 

卵を食べられる子どもは世界全体の22%しかおらず、栄養価の高いフルーツや野菜を食べられる子供は半分にも満たないのが現状です。

 

健康的な食事は国の所得に比例する

食事の構成は現地で入手できる食べ物や食習慣、文化によって変わります。しかし、健康的な食事を構成する栄養素に違いはありません。

食品の入手可能性は国の所得によって大きな差があるとわかっています。具体的には、低所得国は高所得な国と比較して主食への依存度が高く、野菜や果物、動物性食品への依存度が低いです。

 

 

果物や野菜の入手可能性は世界平均で増加傾向が見られています。しかし、「1日に最低400gの野菜と果物」というFAO・WHOの基準を満たすのに、十分な量の野菜や果物が入手できる地域はアジアのみです。また収入別では高・中所得国に限っています。

一方で動物性食品の入手可能性も世界的に増加傾向にあります。特にアジアでは、最大の増加傾向が見られています。とはいえ、所得によって入手可能性に違いが見られ、高所得の国が最も入手しやすいです。

また別の研究では、食糧不安が深刻なほど、食生活の質も悪化しているとわかっています。

 

食事のコストから考える飢餓

飢餓を解決するためには、健康的な食事を誰でも利用できるようにするのが必須条件です。しかし、食事の質が向上するにつれてコストは増加していきます。ここでいう食事の質は3段階に分類されています。

 

食事のレベル

 

当然ですが、健康的な食事になるほどコストは高くなり、特に貧困層にとって手の届かない価格となっています。それぞれの世界平均コストは以下のとおりです。

 

健康的な食事394円
栄養バランスの取れた食事245円
エネルギー効率の良い食事83円

※USドル表記を円に変換

 

国際貧困ラインでは、1日あたりの食費が1.2USドルが目安とされています。この数値は国際貧困ラインの63%で計算されていて、低所得国の最貧層が平均して所得の63%を食費にあてているという結果に基づいています。この結果から考えると、貧困層が食べられるのはエネルギー効率の良い食事のみとなっているのが実情です。

 

食事のコスト

 

また世界地図で見るとわかりやすく、貧困層からすると栄養バランスの取れた食事すら金銭的に厳しいことがわかります。健康的な食事に関してはすべての国で1.9USドルを超えているため、ほとんどの貧困層は健康的な食事を取ることができていません。これらの結果から、健康的な食事を構成する栄養素の高い食品(乳製品や果物、野菜、タンパク質)を豊富に含む健康的な食生活に貢献する栄養価の高い食品のコストを下げる必要があると示されています。

 

食事のコストを引き上げている原因は何か?

世界中の人が健康的な食事をするためには、栄養価の高い食品のコストを下げる必要があるとわかりました。これらの食品のコストを高めている要因は主に4つに分類されています。

 

コスト要因一覧

  1. 生産:
    生産技術の低さや開業リスク、気候変動が生産性を低下させて、供給量が減少し、食品のコストが高くなります。特に発展途上国では伝統的な主食の方が開業リスクは低いため、知識や情報がない場合は栄養価の高い食品の生産量や価格に影響をおよぼします
  2. サプライチェーン:
    栄養価の高い食べ物は生鮮性が高いものも多いため、適切なインフラや加工技術が必要となります。結果として食品のコストを高める要因となるわけです。またサプライチェーン上では食品ロスも多く確認されています。日本では年間610万トンも食品ロスが発生しています。
  3. 消費者需要:
    国によっては食品市場までの距離が遠く、食費とは別に交通費がかかるケースも珍しくありません。また急速な都市化によって、仕事をもつ女性は食事を作る時間の確保が難しくなっています。栄養価の高い食事よりも手軽なファストフードや半加工食品が選ばれることもしばしば。
  4. 政治経済:
    貿易政策によって関税や輸入禁止などの保護的な貿易措置が行われることがあります。しかし、主に米や穀物類が保護される傾向があり、ビタミンをはじめ必須な栄養素を含む野菜や果物は不利益を被ってきました。

 

特に大規模な食糧援助の場合は物流が大きなネックとなります。インドの事例では、ねずみが食べてしまうなどの影響によって、小麦の半分以上、米の3分の1以上が配送中に失われています。

 

世界の人は意外と飢えていない

食事のコストごとに飢餓を考えると、エネルギー効率のよい食事は世界中に行き渡っていることがわかります。最貧層であっても、収入のすべてを食費にあてているわけではなく、実際には6割ほどでした。貧乏人の経済学によれば、開発途上国の貧乏な人が結婚式や洗礼式に大金を使ったり、テレビやDVDプレーヤーを買ったりしていることが確認されています。

栄養のある食事を購入するよりも、退屈を紛らわせるものを優先しているのは明らかです。健康的な生活よりも楽しい生活を優先するのは人の基本的な欲求なのかもしれません。

ただし、栄養不足は貧困層にとっても問題です。例えば、ケニアの子どもたちを対象とした研究では、2年間駆虫を受けたことは1年間のみの子供と比べて、生涯所得が3269ドルも多いという結果が出ています。

一般的にイメージされている「貧困層には安い穀物を送ればいい」というのは間違った施策で、実際には栄養価が高い食事を低コストかつ魅力的な形で考案することが重要です。

 

日本の飢餓の現状

飢餓は海外のものという印象があるかもしれませんが、日本にも飢餓はあります。2017年に行われた調査(2)では、13.6%の人が直近1年間で食糧困窮の経験があったと回答しました。

 

日本の飢餓

 

また世帯別で見ると、ひとり親世帯(二世代)で35.9%の人が食糧困窮の経験ありと回答しています。世帯別ではひとり親世帯がダントツで多く、3人に1人が食糧困窮の経験ありと回答しているのは衝撃です。

 

世帯別の食糧困窮割合

 

全体平均は2012年よりも食糧困窮の割合が低下してはいるものの、ひとり親世帯(二世代)や高齢者のみの世帯で悪化しています。

 

シングルマザー50人に聞いたアンケート調査

日本のシングルマザー50人を対象にアンケート調査を行いました。アンケートでは収入や食糧困窮の経験、フードバンクなどの質問を10ほどしています。

結果は以下のような感じでした。

 

平均年齢35.18歳
平均年収294万円
子供の平均人数1.36人
食糧困窮率30%
フードバンクの認知率44%
フードバンクの利用率4%
フードバンクを利用したい人の割合58%

 

食糧困窮の経験に関してはこちらのアンケートでも3割ほどでした。やはり、シングルマザーの3人に1人は食糧困窮の経験があるということですね。

またフードバンクについても質問しています。フードバンクとは、食品関連の事業者や個人から食品の寄付をもらい、福祉施設や子供食堂、炊き出しなどに送る団体のことです。

 

フードバンク

 

食品安全保障を考えるなら、フードバンクは大事な役割を担っていますが、シングルマザーでの知名度は44%と半分にも満たない状態です。しかも、利用率については4%と10人に1人もいませんでした。

ちなみに利用したい人の割合は58%となっていて、意外と低い結果でした。利用したくない理由としては「フードバンクが近くにない」「子供がフードバンクを利用していると知ったら、苦労しているかもと心配をかけてしまうから」「衛生面やクオリティが低いイメージがある」「他に優先されるべき家庭があると思うから」などが挙げられています。

 

片親世帯の現状をざっくり

ここまでひとり親世帯の飢餓について説明してきましたが、日本では片親世帯の相対的貧困率が非常に高い状況です。2019年国民生活基礎調査(3)によれば、片親世帯の相対的貧困率は48.2%となっています。過去に行われた国際比較のデータ(4)によると、OECD加盟国30カ国中で最も高い数値でした。

しかし、世界と比較すると、就業率は81.8%と悪くありません。(5)問題なのは正社員比率が44.2%と低く、ほとんどがパートやアルバイトで生計をたてている点です。

 

母子世帯と父子世帯

 

結果として平均年間就労収入は200万円と低く、就業率は高いものの収入が低いという状況になっているわけです。

 

コロナが与える飢餓への影響

コロナは現在進行系で起きているので、正確な影響はわかっていません。しかし、コロナによる経済成長のシナリオによると、世界のGDP成長率は-4.9~10%と考えられているため、2020年には栄養不良者数が8300万~1億3200万人増加すると予測されています。ちなみにコロナが起きてからのシナリオは3つ用意されています。

 

コロナの飢餓人口推移

 

少なくとも、コロナは生産側と消費側のどちらにも悪影響を及ぼすのは明らかです。ただ生産側では主要な食べ物(小麦や米、とうもろこし、大豆)は平均以上に維持されると予想されています。そのため、コロナが食糧不足を必ずしも引き起こすわけではないかもしれません。

コロナの影響を最も受けやすいのは貧困層です。低所得な国は経済を刺激して、貧困層を保護する仕組みや資金がないため、影響を受けやすいわけです。コロナが引き起こす影響範囲がまだほとんど不明なので、慎重に解釈してくださいませ。

 

それではぜひ参考に。

 

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