今回はサービス業の人ほど、飲酒量が増えた研究を紹介します。
感情労働と飲酒量の関係を調査した研究
この研究(1)は「職場で多くの自制心を費やす従業員が他の行動を自制しづらくなるのでは?」というところを目的にしています。参加者は1592人のアメリカ在住の労働者を対象として行われました。データの収集は電話インタビューで、平均55分も続きました。結構長いですね。
主な質問内容は以下のような感じ。
質問内容
- 直接コミュニケーションを取っている人は誰か(患者やお客さん)
- ポジティブな感情やネガティブな感情の抑制度合い
- アルコール消費量
- 自律性(自分の仕事のやり方を自分で決められるか)
- 特性衝動性(結果とコストを考えずに衝動的に行動するか、衝動をコントロールして物事を考えるか)
- 不快・不安な仕事をしているか
- ストレス度合い
電話インタビューが終了すると、参加者には2500円支払われました。結果は以下のような感じ。
結果
- 毎日顧客と接触した人ほど仕事後の飲酒量が増えた
- 労働自律性の高い人はアルコール消費との関係が有意ではなくなった
- 特性衝動性が低い人はアルコール消費との関係は有意ではなかった
これらの結果から、仕事中の感情的な労働が仕事後の飲酒量の増加と関連しているとわかりました。つまり、否定的な感情を抑えながら笑顔でサービスしている人は大量に飲酒する傾向があるということですね。
しかし、その中でも自分の仕事に決定権がある人や衝動をコントロールして物事を考えられる人は無関係と示されています。接客マニュアルなしでおなじみのスタバ店員さんは他のサービス業に比べて、飲酒の傾向は低いかもしれませんね。
著者は今回の結果について以下のように述べています。
全体としてここに提示した証拠はサービス従業員による過剰飲酒の問題を理解するために、セルフコントロールを考慮し、感情労働の潜在的結果を拡大することの価値を示唆する。
今回の調査結果は、「笑顔のサービス」にコストがかかることを示唆している。接客係が高い衝動性を持っていたり、職場での自律性が認められていない限り、「嘘つき」も「酒豪」になる傾向がある。
今回の研究で笑顔なサービスにコストがある可能性が考えられますが、対策としては以下のようなものが挙げられています。
対策
- その仕事が感情労働に見合う価値があるかどうかを再考する
- 仕事終わりの自制心低下を回避するため、仕事中に休憩を許可する
- セルフコントロールのトレーニングを従業員に行う
著者の提案は上記のような感じですが、どこまで有効かはわかりません。とはいえ、接客業をしている人は休憩やセルフコントロールのトレーニングを検討してみてもよいのではないでしょうか?
それではぜひ参考に。
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