このページでは反すう思考をやめる方法を解説します。
反芻思考とは?
反芻(はんすう)思考とは、過去の出来事を何度も繰り返し考え続けてしまうことです。反すう思考をしやすい人ほど、うつ症状を増加・原因になりやすいという研究が多くあります。(1,2)
反すう思考の原因
反すう思考の原因はまだ解明されていません。研究では主に以下の3つが原因として示されています。
また反芻思考は女性の方がなりやすいというメタ分析(6)も発表されています。(6)の研究では統計差は小さいですが、うつ病の割合も女性の方が多いです。
反芻の種類から見る原因
反すう思考は2つに分類できます。
反すう思考の原因
- 侵入的思考:思い出したくないネガティブな思考が湧いてくる状態
- 意図的思考:ネガティブな思考を進んで解釈し、コントロールする状態
上記を見てわかるように、反すう思考でもうつ症状になりづらいものもあります。意図的思考は「自分の何がダメだったのか」「なぜこんなに落ち込んでいるのか」と自分で意図的に考えます。
一方の侵入的思考は思い出したくないのに思い出して、不安や不満が溜まっていく思考です。この思考は自分でコントロールできずに、起きてしまいます。
反芻思考の悪影響
反すう思考の悪影響は以下のとおりです。
反芻は主にメンタル面に大きく影響してきます。
反芻思考をやめる9つの方法
1.マインドフルネス瞑想
マインドフルネスとリラクゼーショントレーニングを比較したRCT(13)では、マインドフルネスで反芻が減少しました。この実験は81人の学生を対象として3グループに分けて比較しています。
グループ分け
- 瞑想群
- リラクゼーション群
- 対照群
で、それぞれ1.5時間のセッションを週1で、4週間続けました。すると、瞑想群は反芻が減少していたわけです。特に瞑想群は精神的苦痛を軽減していて、そのメカニズムが反芻の減少と予想されています。
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2.運動
精神疾患患者を対象とした運動と気分の研究(14)では、運動によって反芻が減少しました。この研究では129人の患者を対象として運動を行ってもらいました。
グループ分け
- ノルディックウォーキング:56人
- ワークアウト/体操:49人
- ボールスポーツ:14人
- なし:10人
で、それぞれ40-60分を中程度の強度で行っています。結果は以下の通り。
結果
- 気分の改善
- 体力改善
- 注意力の改善
- 反芻の減少
- 疲労の減少
結果は、1回の運動でメンタル面を改善することができると示されています。また精神疾患をもつ患者は週2回の運動が主観的な評価を改善する可能性があるとしています。
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3.筆記療法
筆記療法とは、ストレスを感じたときの出来事や感情を書き出すという方法です。主にストレス解消やうつ症状の改善が見られています。受験生を対象にした実験(16)では、1回の筆記療法が心理的苦痛の軽減と侵入的思考の数を減らすとわかりました。
この研究では74人の受験生を対象として、筆記療法をやってもらいました。グループは「筆記療法」と「対照(1日のスケジュールの執筆)」で、無作為に分けています。
筆記療法の内容は以下のような感じ。
筆記療法の内容
- 25分間の筆記療法
- 試験前のタイミングで1回
- 試験についての考えや感情を書く
上記のような感じで、回数以外は標準的な方法でした。回数に関しては受験生なので仕方ないですね。で、結果は以下の通りです。
結果
- 心理的苦痛を軽減
- うつ症状の低下
- 侵入思考の減少
侵入思考とは思い出したくない出来事や感情が湧いてくる思考で、反芻思考の一種です。そんな侵入思考の感情への影響を筆記療法が和らげることができるわけです。
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4.自然
自然による反芻への影響を調査した研究(17)では、反芻と前頭前野皮質活性化が減少していました。この研究は38人の健常者を対象に、「90分自然を散歩」「90分都市を散歩」で比較しています。
まず研究室に到着してから、反芻の自己申告測定をしてもらいました。後は以下のようにランダムに分けて、散歩してもらっています。
グループ分け
- 自然を散歩:19人
- 都市を散歩:19人
参加者は散歩中にスマホで10枚の写真を撮るように指示されています。結果は以下のとおりです。
結果
- 反芻の減少
- 前頭前野皮質活性化の減少
上記のように、自然を散歩することは反芻を減少させるとわかりました。また前頭前野皮質活性化とは、精神疾患と関連している領域です。この領域が落ち着いたということは、自然は神経生物学的にも効果があるということを示しています。
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5.気晴らし
子供を対象とした実験(18)では、気晴らしとマインドフルネスが反芻を減少させるとわかっています。この研究は102人の子供を対象として、ネガティブな気分誘導をさせました。
気分誘導は子どもたちに新しいテレビのオーディションをする機会があると知らせ、3分間のスピーチをさせます。そして、スピーチが終わると、否定的な意見を言って、部屋から出しました。
そして、反芻誘導として8分間の音声録音を聞いてもらっています。内容はスピーチのやり方についての考えや結果について考えてもらうというものです。で、そこから参加者を以下の3グループに分けました。
グループ分け
- 気晴らし:全く関係のない音声録音を聞いてもらう
- マインドフルネス:気づきや容認
- 問題解決:問題の特定や結果の評価、解決策の選択
で、結果は以下の通りです。
結果
- 気晴らし・マインドフルネスで反芻が減少
- 問題解決は変化なし
上記のように気晴らしとマインドフルネスにおいて反芻が減少しました。気晴らしについて掘り下げると、音声録音によって別のことを考えるよう指示された場合に有効です。
6.心理的離脱・精神的な休憩
心理的離脱とは、仕事が終わっても心理的に仕事から離れられないことを言います。この問題はスマホやパソコンで、家でも仕事ができてしまうため、メンタルが休まらず悪影響が出てしまうわけです。
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心理的離脱の解決方法は色々な研究が行われています。例えば、アメリカの農務省森林局で働く699人の職員を対象にした研究。方法はアンケート調査で、仕事の不満やメンタル、リラックス度合いを主観的に測定してもらいました。
結果は以下のような感じ。
結果
- 仕事からの心理的離脱・リラクゼーションは仕事時の反芻と関連
- 仕事の反芻は不眠症と関連
- 仕事からの心理的離脱は仕事の反芻と不眠症の緩和と関連
結果は仕事終わりの心理的離脱とリラクゼーションレベルが高いと、反芻の弱体化と関連していました。つまり、仕事終わりに仕事のことを考えずに、リラックスできている人ほど反すう思考や睡眠への悪影響はないわけですね。
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7.プロバイオティクス
プロバイオティクスとは、人に良い影響を与えてくれる微生物のことです。ヨーグルトに入っている〇〇菌などのことを言います。
プロバイオティクスと気分に関するランダム化比較試験(19)では、プロバイオティクスが反芻を減少させることが示されました。この研究は40人の男女を対象として、「プロバイオティクス群」「プラセボ群」に分けています。
そして、4週間「ビフィズス菌2種類」「乳酸菌5種類」を摂取してもらいました。で、結果は以下のような感じ。
結果
- うつ病の低下
- 攻撃的で反芻的な考えの減少
- 主観的な悲しい気分が減少
健常者において、多種プロバイオティクスは反芻思考を減少させました。
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8.ヨガ
ヨガはメンタルを大きく改善できると報告されている運動の1つです。重度の精神疾患におけるヨガのナラティブレビュー(20)では、選択基準を満たした49件の研究をレビューしました。
主な結果をまとめると、以下のような感じです。
結果
- うつ病スコアを有意に改善
- 罪悪感や抗うつ症状、異常な思考、先入観を有意に改善した
- 生活の質や主観的な幸福、対人活動を有意に改善
- ストレスや不安、うつ病、怒り、衝動性を有意に改善した
結果はメンタル面を大きく改善すると示されています。このようにヨガが抗うつを改善するメカニズムとして考えられているのが反芻の減少なわけです。運動でメンタルを改善するなら、ヨガはかなりオススメします。
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9.メタ認知療法
メタ認知療法はうつ病の原因と考えられている反芻を直接ターゲットにする認知療法のことです。具体的には以下のような内容です。
診断内容
- 反芻の引き金となる思考を特定することで、メタ認知を高める
- 反すうや不安などの制御不能性について学習する
- 脅威の監視や反すう、心配事の危険性に関する認知
- 反すうや心配に関するポジティブな信念の修正
研究(21)では39人の参加者を対象として「メタ認知療法群」と「待機群」に分けて、10週間実験しました。
結果
- メタ認知療法はうつ症状と不安症状を大幅に改善した
- 6ヶ月後のフォローアップでも効果は持続していた
結果はメタ認知療法が抗うつ症状を大幅に改善しました。6ヶ月後のフォローアップまで効果が持続しているのは素晴らしいです。
それではぜひ参考に。