ストレスによる脳への悪影響5選!科学的研究に学ぶ脳とストレスの関係

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ストレスによる脳への悪影響

 

イヴ
今回はストレスによる脳への悪影響を解説するよ!

 

【図解】ストレスの脳と身体の働き

ストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」「アドレナリン」は身体に対して、長期的で有害な影響を与えます。

ただし、これは元々生命の危機的状況で放出されるものです。

 

ストレス因子による影響

 

上記の図を見てわかるように、主に脅威から逃げるための機能と言えます。

 

  • エネルギーの放出増大
  • 心臓血管の増大
  • 筋肉血流の増加
  • 呼吸の増加
  • 代謝の増大

 

他にも脳内アヘンが放出されて痛覚を鈍くしたり、瞳孔が拡がってよく見えたりする機能もあります。

しかし、慢性的なストレスや大きなストレスは脳の構造や機能に悪影響を及ぼしてしまうわけです。

 

ストレスによる脳への悪影響

1.海馬の萎縮

海馬とは、記憶や学習に関わる脳の部位です。

 

海馬

 

多くの研究でストレスの影響によって、記憶課題の成績が損なわれると発表(1)しています。

海馬はストレスにとても敏感なので、破壊を受けやすいのだとか。

 

また海馬に対するストレスの影響をレビューした論文(2)では、ストレスが神経細胞を変化させ、増殖を抑制し、海馬の体積を減少させるとしています。

実際に色々と調べてみると、大きなストレスを受けた人の海馬体積が減少している研究は多いです。

 

例えば、ベトナム退役軍人の海馬を調査した研究(3)があります。

この研究では軍人の中でも「ストレス障害あり(7人)」「ストレス障害なし(7人)」で比較しています。

 

それからは心理テストやMRIなどを取りました。

結果は以下のような感じ。

 

結果

  • ストレス障害のある軍人は左右合わせて26%の海馬を減少
  • 海馬体積の減少と記憶機能障害に中程度の相関

 

間接的ではありますが、ストレスが記憶機能障害を及ぼす可能性もあります。

 

2.大脳の萎縮/機能低下

大脳は脳の約8割を占める部位です。

 

大脳

 

大脳の表面は”大脳皮質”に覆われていて、以下の4つに分かれています。

 

大脳の4領域

  • 前頭葉
  • 側頭葉
  • 頭頂葉
  • 後頭葉

 

大脳の働きは色々ですが、主な役割は運動や認知機能、知覚などです。

で、ストレスと大脳は研究でも、色々な関連が見られています。

 

大脳の研究

  • コルチゾール量が多い人ほど、前頭前野の表面積が小さくなる(4
  • 軽度の急性ストレスが前頭前野の認知能力を劇的に喪失(5
  • 急性ストレスがワーキングメモリの活動を低下(6
  • 小さい頃に虐待を受けた成人は短期記憶スコアが有意に低い(7
  • ストレス障害が起きると前帯状回/内側前頭前野皮質機能の低下(8

 

トニー
ニコ
コルチゾールとは、ストレスホルモンのことだ!

 

これらのようにストレスを受けると表面積が小さくなったり、機能が低下したりします。

 

3.BDNFの減少

BDNFとは、脳由来神経栄養因子と呼ばれるタンパク質のことです。

主に神経細胞の成長や再生を促進する働きをもちます。

名前の通り「脳の栄養」のような働きをもつ物質です。

 

このBDNFはストレスを受けると減少するとわかっています。

ラットによる動物実験では、急性ストレス・慢性ストレスともにBDNFレベルが減少しました。(9

 

また人でも、精神疾患のある人の血中BDNFレベルが低いことは有名な話です。(10

これはストレスによる炎症/コルチゾールの増加とともにBDNFの発現が減少し、海馬の体積にも影響するという流れなのだとか。

 

ダークチョコレート

 

とはいえ、BDNFを増やす方法として運動や魚、ダークチョコ、緑茶などがあります。

BDNFを増やす方法があるのはまだありがたいですね。

 

4.脳細胞の死

ストレスは脳細胞をもたらすという研究(11)もあります。

ラットを使った実験では、ストレスが細胞分化を妨害して、細胞死をもたらすと発表しています。

この実験では「ラットがすでにいるゲージグループ」と「ラットのいないゲージグループ(対照)」に分けて比較しました。

 

ラット

 

ラットがいるゲージでは、2匹の攻撃的なラットがいるゲージに新しいラットを20分間入れました。

新しく入れたラットは押さえつけられたり噛みつかれたりして、ストレスを与えたわけです。

一方で対照群として新しいゲージに20分間単独で置きました。

 

結果は対照群と比較して、コルチゾール(ストレスホルモン)が6倍以上に上昇しました。

またストレスにさらされたラットは対照群と比較して、同じ数の神経細胞を生成しましたが、1週間後には神経細胞の数が著しく減少していたわけです。

 

このことから社会的な急性ストレスは海馬の細胞と神経細胞の生存を減少させるとわかります。

もっと言えば、ストレスが細胞の分化を妨げて、細胞死をもたらしたわけです。

ラットの実験なので、どこまで人に適用されるかは不明ですが、興味深い研究です。

 

5.出生前ストレスでも脳に悪影響

出生前のストレスも大きな悪影響があります。(12,13

出生前というのは、母体にいる頃に母親を通じて受けるストレスのことです。

 

出生前ストレスの影響

  • ストレスの反応性が高くなる
  • 成人期の海馬体積の減少
  • 学習障害
  • 薬物乱用の感受性低下
  • 不安やうつ行動の増加
  • ラットにおいてはBDNFを減少させる

 

出生前ストレスは成人になっても影響がある場合もあります。

 

ストレスによる脳への悪影響まとめ

ストレスによる脳への悪影響をまとめておきます。

 

脳への悪影響

  • 海馬体積の減少
  • 大脳の萎縮
  • 前頭前野の表面積減少
  • 前頭前野の認知機能が劇的に喪失
  • ワーキングメモリ低下
  • 短期記憶の低下
  • 前帯状回/前頭前野皮質の機能低下
  • BDNFの減少
  • 神経細胞の分化を妨げ
  • 結果として細胞死へ

 

ストレスの脳への悪影響が気になっている方はぜひ参考に。

 

より詳しく知りたい人のオススメ本「ストレスが脳をダメにする」

2003年に出た本でかなり古めですが、参考文献が大量に使われた良書でした。

ストレスが心と脳に及ぼす影響をわかりやすくまとめられています。

購入するのは微妙ですが、図書館で借りるくらいならオススメです。

 

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