このページでは論文のエビデンスレベルについて解説します。
エビデンスレベルの全体像
エビデンスレベルは主に以下のような分類になっています。
研究機関ごとに基準は発表されていますが、だいたい似たような内容です。
1.系統的レビュー(メタ分析)
メモ
系統的レビューとメタ分析は混同しがちですが、違う言葉です。系統的レビューは先行研究をレビューした論文のことで、メタ分析はあくまで統計手法のことを言います。系統的レビューの中にもメタ分析が使われていない研究も多々あります。
これらの方法が信頼性の高い理由は、色々な研究者によって行われた複数の研究を統合しているからです。1つの研究結果だけでは対象者の偏りやバイアスがあるかもしれませんが、複数なら補強できるというわけです。ちなみに対象となる研究はランダム化比較試験以外にも、観察研究で行われるケースもあります。
評価項目のメモ
論文の質を評価するための基準は以下の通り。
評価項目 | チェックポイント |
---|---|
研究デザイン | 研究はRCTか? |
参加者 | 参加者に偏りはあるか? |
サンプルサイズ | サンプルサイズの計算は適切か?十分な大きさか? |
ランダム割り付け | 参加者はランダムに割り付けられているか? |
ランダム化の隠匿 | ランダム割り付け表は隠匿されていたか? |
盲検化 | 参加者と研究者は介入や群訳に関する情報を知らされていなかったか? |
脱落 | 参加者の追跡は十分に長く完全に行われていたか?大きな脱落はないか? |
ITT解析 | すべての参加者は最初に割り付けられた群のまま分析されていたか? |
効果量 | 効果量と信頼区間が適切に報告されているか? |
考察 | データに沿った考察がされているか? |
2.ランダム化比較試験(RCT)
これで有意な差があったら、介入の効果があると結論付けられます。というのも、単にチョコを食べる前と後を比較してしまうと、以下のような見せかけの効果があるかもしれません。
見せかけの効果
- プラセボ効果(思い込み)
- 平均への回帰
- 共介入
- 経時的変化
RCTでは上記のような効果を差し引いて、本来の効果を導けるというわけです。
とはいえ、倫理的な問題などによってRCTが好ましくない場合もあります。その場合は観察研究などが行われます。
3.介入研究(前後比較研究)
ただし、バイアスを排除できないため、エビデンスレベルが下がります。
4.観察研究(ケースコントロール,コホート研究)
観察研究とは、何も介入を行わない研究のことです。主にアンケートや面接などで調査を行います。ここでは、ケースコントロール研究とコホート研究の2つを紹介します。
ケースコントロール研究
この研究の注意点は、問題症状の影響が多数考えられる点です。例えば、給料の高さと血圧の高さに相関があったとしても、因果関係はないというようなイメージです。ここではおそらく年齢となりますが、実際の研究でも隠れた要因があるケースがあります。例のように関係を明確に推論できないのが注意点です。
コホート研究
ケースコントロールと同様に相関関係があるとしかいえず、因果関係を推論することは難しいです。またコホート研究は長い時間と費用がかかるため、大規模な研究をすることは困難なことが多いです。
5.事例研究
事例研究とは、実際に行ったことを詳細に検討する研究のことです。ただし、どれだけ事例を集めてもデータではないですし、バイアスが紛れ込みやすいです。これらの点から科学的根拠に欠ける研究と言えます。とはいえ、研究によっては新しい知見を見出してくれる研究でもあります。
6.専門家の意見
専門家の意見とは、経験に基づいた意見やデータに欠けた意見のことです。どれだけ長く臨床経験を積んでいても、人の思考には色々なバイアスがあります。
思考のバイアス
- 確証バイアス:自分の信念を補強するデータだけを選り好みする傾向のこと
- 記憶バイアス:記憶が都合の良いように歪むこと
- 関連性の錯誤:目立った事実が2つ前後すると、誤った因果関係を想定すること
世界的権威だろうと、上記のようなバイアスがあるため、科学の世界では最もエビデンスレベルが低いです。