今回は不確実性下で実行するべき戦略について解説します。
不確実性はレベルごとに分類されている
メリーランド大学が1997年に発表した研究(1)では、不確実な時代でどう戦略を策定するべきかを実務家向けに説明しています。この論文では不確実性を4つのレベルに分類しています。
不確実性のレベル
- レベル1:明確な未来
- レベル2:いくつかの選択肢に分かれる未来
- レベル3:範囲が限られる未来
- レベル4:真に曖昧な未来
レベル1が明確に未来がわかる状況で、レベル4では完全に不確実な状況です。このような分類をするのは不確実性を過小評価しないようにするためです。大企業では中長期戦略が策定されていますが、意味があるのは安定した環境だけで不確実性がある場合は危険因子になりかねません。
逆に世界は予測不可能と仮定すると分析を放棄しているだけなので、このような分類で不確実性に目を向けられるようにしているわけです。ただ不確実性下でもどう戦略をたてればいいかわからなければ意味がないので、この論文ではガッツリ調査してくれています。
まずはそれぞれの状況を見ていきます。
レベル1:明確な未来
レベル1は十分な精度で単一の未来予測ができます。ビジネスは本質的に不確実というぐらいには不正確なものですが、予測は1つしかないので戦略的には十分狭い範囲です。つまりレベル1では不確実性とは無縁な段階ですね。
レベル1で未来を予測するなら、従来からある分析が使用できます。
分析の例
- 市場調査
- 競合他社のコストやキャパシティの分析
- バリューチェーン分析
- ファイブフォース分析
明確な未来が見えているなら、セオリー通りがベストということですね。
レベル2:いくつかの選択肢に分かれる未来
レベル2は未来予測をすると、いくつかのシナリオができるレベルです。どの結果になるかはわかりませんが、確率を推測するのに役立ちます。この段階で最も重要なのは結果が一部変化することです。
例えば、新しい技術が元になっている業界では業界を根本的に規制する法律が明確に定まっていない状態が挙げられます。法律が可決されるかや可決された場合どこまで規制されるかなどですね。
レベル3:範囲が限られる未来
レベル3の未来予測では潜在的な範囲を特定できます。その範囲は色々な変数によって定義されますが、個別のシナリオはありません。
具体的には新興産業や新しい地理的市場はレベル3の不確実性に直面しやすいです。例えば、インドの市場に自社製品を導入する場合、潜在的な顧客浸透率の大まかな範囲のみを特定できますが、範囲内の明確なシナリオを作成するのは困難です。
レベル4:真に曖昧な未来
レベル4は実質的に予測不可能な環境です。レベル2や3のようにシナリオや範囲も特定することができません。レベル4は非常にまれで、時間とともに他のレベルに移行する傾向があります。
例としては共産主義後のロシアが挙げられています。当時のロシアは財産権や法律を説明できず、政治的な暗殺やデフォルトなどのショックによって完全に予測できない状況でした。レベル4の戦略的な決定はかなり難しいですが、一時的な性質となっています。
レベル4の不確実な状況でとるべき戦略
ここまで見てきた通りレベル4は未来がどうなるか予測不可能な状況です。レベル2や3よりもハイリスクですが、ハイリターンにもなりやすいのが特徴として挙げられます。
この状況では、市場を形成しようとする戦略を取るのがベストです。というのも、市場を形成しようとする企業は低いリスクで高いリターンが得られる可能性があるからです。
多くの場合は技術や経済的なショックが発生しますが、業界に最適な戦略を知っているプレーヤーがいないため、市場を安定した結果に導く業界構造や基準のビジョンを提供するのが最善となります。逆説的ですが、不確実性の状況ほど積極的に市場を作ることで高いリターンが得られるわけですね。面白いですな。
逆に言えば、不確実性の状況では定番的な分析が機能しない可能性が出てきます。この場合はブルーオーシャン戦略やリーンスタートアップのようなやり方がベストといえそうです。
それではぜひ参考に。