ビジネススクールに通う学生を対象とした研究では、成長マインドセットが自己効力感を促進し、学問への関心や課題の持続性を向上させると発表されました。
成長マインドセットと起業家精神の研究
この研究(1)は成長マインドセットが学生起業家の自己効力感を促進するかどうかを実験したランダム化比較試験です。自己効力感以外にも、学問やキャリアへの関心、タスクの継続性なども調査しています。
メモ
マインドセットとは、無意識の思考の癖のことです。このマインドセットは、「成長マインドセット」と「硬直マインドセット」に分類されています。成長マインドセットは人の能力は順応性があり、成長できるという考えをいい、硬直マインドセットは人の資質は決まっているため、磨いたり変えたりすることはできないという考えを言います。
自己効力感とは、自分の課題において「こうすればうまくできる」と自分の可能性を認知することです。
参加者は起業家精神の授業を受けていた238人の大学生です。参加者には以下のどちらかにランダムで分かれてもらいました。
グループ分け
- 成長マインドセット群(120人)
- 対照群(118人)
参加者全員には合計45分間ビデオや記事を通じて、起業家カリキュラムを学んでもらいました。成長志向群は成長の考え方や成長マインドセットの育成を目的にした内容でした。一方の対照群は起業家の神話や職場の非効率性について学んでいます。
すべての講習が終わると、参加者には以下のものに回答してもらいました。
測定内容
- 起業家精神
- 起業家の自己効力感
- 学問的関心
- キャリアへの関心
- 起業家精神の個人的な経験に同意するかどうか
- 課題への持続性
- プロジェクトの成績
かなり色々と測定しています。結果は以下のような感じ。
結果
- 成長志向群は起業家精神の成長マインドセットが対照群よりも著しく強かった
- 成長志向群は対照群と比較して、強い起業家の自己効力感を報告した
- 起業家の自己効力感は学問への関心を著しく予測した
- 成長マインドセットの介入は起業家の自己効力感を通じて、学問的関心を間接的に予測した
- キャリアへの関心に対する全体的な影響は有意ではなかった
- 起業家の自己効力感は課題の持続性を有意に予測した
- しかし課題の持続性はタスクパフォーマンスを予測しなかった
- キャリアへの関心は男性が女性よりも強い関心を報告した
結果は成長マインドセットの介入が自己効力感を促進し、学問的関心や課題の持続性を向上させました。ただし、タスクパフォーマンス自体を向上させるわけではありません。
とはいえ、課題に直面しても、起業家のアイデアを追求し続けるという結果は興味深いですね。本来は大学などの場で学生のモチベーションを高める意図で使われると思いますが、個人的にも成長マインドセットについて学ぶことで、課題への持続性を高められる可能性があります。
著者は今回の結果について以下のように述べています。
時間や努力、エネルギーがあれば、起業家精神は改善できると考えられがちですが、私たちの研究はこれらの信念を強化する簡単かつ安価でスケーラブルな方法があると示しています。成長マインドセットは困難な状況にもかかわらず、個人が持続し課題に適応的に対応することを可能にします。我々は今回の研究で、成長マインドセットの介入を受けた学生は、挫折に直面してもより強い持続性を報告しました。したがって、本研究の実践的な含意の1つは、マインドセットが起業家精神にも適応できるとわかったことである。
今回の研究は起業家にとって、成長マインドセットがどれだけ重要かを示しています。自己効力感や困難な課題に対しての持続性を改善するなら、成長マインドセットを学んでみるのがオススメです。
また著者はありがちな「生まれつきの才能」についても述べています。
起業家精神のを増やすための有望なアプローチは、生まれつきの才能が成功の主な原動力であるという考えを否定することであると示している。代わりに、私たちは起業家精神の本質についての成長マインドセットを促進すべきである。
何か事業をやるなら成長マインドセットは知っておきたいですね。
それではぜひ参考に。