いわゆる「良いアイデア」はスタートアップを成功に導くのか問題

2019年10月19日

アイデア

 

スタートアップ業界では「起業時に周りから評価されていたのに失敗した」というのが珍しくない印象があります。そんな中、ハーバード大学のワーキングペーパーによると、起業アイデアの事前評価が良いほど、商業可能性や利益が上昇すると発表されていました。

 

良いアイデアは商業化を達成するのに影響がある?

この研究(1)は初期の起業アイデアの事前評価が業績にどう影響しているのか調査したものです。そもそもの話ですが、ベンチャーのアイデアを正確に評価をするのは非常に難しいです。これができてしまえば、起業家も投資家も苦労しません。

一方でベンチャー界隈では、「誰もが良いアイデアだと言うなら、やるべきではない」という意見があるのも事実です。これは過去に他社がやっていたり、新規参入されやすかったりするためですね。

このようにビジネスアイデアの評価は意見が分かれるところなのですが、今回の研究では、この辺りをガッツリ調査しています。

対象となったのは2005年-2012年の間で、MITのベンチャーサービスに所属していた652のベンチャーと251人のメンターでした。メンターはこのサービスに所属しているボランティアメンターで、大半が会社設立やスタートアップへの参加経験があります。役割としては教育目的で、起業家に対して客観的なアドバイスを提供しています。

で、測定内容が以下のような感じ。

 

測定内容

  1. メンターの総合的な関心度
  2. メンタリング強度:2回ベンチャーと会ったメンターの数とベンチャーの会議数
  3. ベンチャーの成果とマイルストーン:ベンチャーが商業化に到達したか

 

上記のようにベンチャーアイデアの成長と影響について調査したわけです。ベンチャーの成果に関してはツッコミが入りそうですが、商業化は重要なマイルストーンの1つです。今回は製品やサービスが市場で検証されたかどうかを基準にしてデータを収集しました。

結果は以下のような感じ。

 

結果

  • 商業化したベンチャーアイデアは初期の頃からメンターの関心を引き出す可能性が高かった
  • 初期アイデアへ関心を示すメンターの割合が2.68%増加すると、商業可能性は3.75%上昇し、経常利益や経常費用は5.38%上昇した
  • 起業家が2回以上会ったメンターの数とミーティングの数は商業化と弱い関係しか見られなかった

 

結果は初期アイデアに関心を示すメンターの割合が商業化や財務に影響を与えると示されました。具体的には、関心を示すメンターが2.68%増加すると、商業化に到達する可能性が3.75%上昇し、経常利益や費用が5.38%上昇を示しています。つまり、ベンチャー初期の周りから評価される良いアイデアは最終的に商業科に到達する可能性が非常に高いということですね。

また面白いのがメンタリングが商業可能性にほとんど影響を与えないという結果が出た点です。起業家は苦しい時期や急速に成長しているときの両方でサポートを求める可能性がありますが、商業化に対しては影響がかなり小さいといえます。

ただし著者は今回の結果について以下のようにも述べています。

 

メンターの主観的評価の予測力はハードウェアなどのR&D集約型セクターのベンチャー企業には強いが、消費者向けWeb /モバイル、エンタープライズソフトウェアなどのR&D集約型ではない業界のベンチャー企業には弱い。

 

つまり、メンターの事前評価が商業可能性に影響するとは言っても、業種によって影響が変わるということですね。R&D集約型というのは、ハードウェアやエネルギー、ライフサイエンス、医療機器などを研究開発している企業のことです。ただここも面白いのは、メンターが持つ専門知識は商業可能性を予測するのに重要ではなかった点です。

 

これらの結果はR&D集約型セクターの専門知識も高度な科学的トレーニングも、R&D集約型セクターのベンチャーアイデアを区別するメンターの能力・非R&D集約型セクターでそうすることができない重要な要因ではないことを裏付けています。

 

つまりメンターの知識に関わらず、関心を集めた研究開発分野の企業アイデアは商業可能性が高いといえるわけですね。

それではぜひ参考に。

 

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