睡眠不足が認知機能に悪影響を与えるのはよく知られています。そんな中、睡眠不足がベンチャーアイデアにも悪影響を出すという調査結果が発表されていました。
睡眠不足がベンチャーアイデアに悪影響を与えた研究
この研究(1)は睡眠が起業家のベンチャーアイデアにどんな影響を及ぼすか調査したものです。実験は3つ行われていて、2つがアンケート調査、1つが介入実験です。すべて紹介すると長くなるので、今回は介入実験を紹介します。
論文では4つ仮説がたてられていますが、主に「睡眠不足の人ほど構造的な類似性を考慮せず、新しいベンチャーアイデアを想像する」というものでした。
メモ
構造的な類似性とは、新しい技術と市場の潜在的なニーズの類似性のことを言います。ベンチャーのアイデアには必須な要素です。
実験はアメリカのビジネススクールの学生73人を対象として行われました。参加者は以下の2つに分けています。
グループ分け
- 睡眠不足群(38人):24時間以上起きてもらった
- 対照群(35人):ぐっすり眠ってもらった
睡眠不足群は同じラボに集まってもらい、ボードゲームや読書、宿題、映画などをしてもらいました。その後ですべての参加者に2つの研究課題を出しています。
診断内容
- 研究課題1:新しいビデオ認識技術を紹介した上で、どのように商品化するかを説明するよう依頼
- 研究課題2:本物のビジネスプランからサンプリングされた3つのベンチャーアイデアを読んで、ランク付けするように依頼
研究課題2では、ビジネスプランを専門家によって評価してもらっています。具体的には表面的な類似性と構造的整合性(つまり、表面的な類似性は高いが、技術と市場間の構造的整合性は低い)の不一致を示すアイデアは魅力が低いと評価されました。
後は睡眠の質を測定するPSQIに回答してもらって、実験は終了です。結果は以下のような感じ。
結果
- 睡眠不足群は構造的類似性に注意を払わなかった
- 睡眠不足はアイデアの数と関連していないが、魅力的ではないベンチャーアイデアを提出する傾向があった
- 睡眠不足群は魅力の低いアイデアに対して間違ったランク付けをする可能性が2.61倍も高かった
- 構造的な類似性を考慮する能力は、睡眠制限と第三者の信念の形成との関連を媒介した
結果は睡眠不足が新しいベンチャーアイデアに悪影響を与えるとわかりました。具体的には睡眠不足が個人の能力を低下させて、ベンチャーアイデアの魅力を促進する第三者の信念を形成する力や構造的な類似性を低下させると示されています。
一般的に有名な起業家は仕事にほとんどの時間を費やしていて、睡眠を削って働いている人も少なくありません。睡眠不足が認知機能を低下させるのは有名な話ですが、ベンチャーアイデアの閃きや良し悪しの判断にも響くとわかりました。
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知らなきゃ損!6時間睡眠が徹夜相当の認知機能低下を引き起こす
この結果について著者は以下のように述べています。
一般的なイメージとは対照的に、私たちの調査結果は睡眠不足の起業家は潜在能力以下の行動をしている可能性が高く、潜在能力の高い新しいベンチャーのアイデアを想像する能力が低下し、疑わしい不一致を示すアイデアについて過度に肯定的な信念を形成している可能性を示唆している。さらに睡眠不足の個人が十分な量の新しいベンチャーのアイデアを生み出すことはできるかもしれないが、そのアイデアはあまり魅力的ではない傾向があることを示唆している。
睡眠はベンチャーアイデアに大きく響くので、起業家の方は8時間前後の睡眠を取るのがオススメです。またベンチャーアイデアの判断にも影響が出ているので、投資家の方も睡眠不足な状態でアイデアを見ない方が良さそうですね。
また起業家の睡眠を1日10分で補う方法もあるので、こちらも参考に。
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起業家は睡眠不足で疲れやすい!ので、1日10分で睡眠を補う方法がこちら
睡眠は成功の唯一の要素ではありませんが、新しいベンチャーのアイデアを想像するとき、適切な休息を確保することをオススメします。
それではぜひ参考に。