起業家が受けるアドバイスはスタートアップの業績にどれほど影響するのか

2019年6月22日

起業家へのアドバイス

 

スタートアップを対象とした研究では、正式なマネジメントを実践する人のアドバイスが28%も大きく成長させると発表されました。

 

起業家へのアドバイスと業績を調査した研究

この研究(1)は90社のスタートアップ企業を対象として2年間行われました。対象になったのはインド企業で、平均12.6人の従業員、創業平均3年でした。この実験はプロダクトネーショングロースリトリートに参加した起業家が対象になっています。

 

メモ

プロダクトネーショングロースリトリートとは、インドのスタートアップにとって、年1回の勉強会のようなものです。

 

内容はケーススタディやアドバイスセッションなどで2日間に渡って行われています。

 

スケジュール

  1. 1日目:スタートアップにおける戦略的方向性に関するケーススタディ
  2. 2日目:ケースディスカッション、個々のワークシート、ビジネスアドバイス

 

2日目は起業家90人にランダムでペアを組んでもらい、共同作業をしてもらっています。その後、各創業者のマネジメントレベルを計算するために、以下のような質問をしました。

 

質問内容

  1. チームで共通の目標を立てますか?
  2. 従業員の業績を測定するためにインタビューや1対1での回答を使用していますか?
  3. 従業員の業績を直接フィードバックしていますか?
  4. プロジェクトの成果や範囲に明確な期待をしていますか?

 

この点数が高いほど、正式な経営スタイルと評価されています。これで勉強会は終了し、ここから追跡調査が行われました。

 

調査

  1. ベースライン調査(2016年1月):創設者の学歴や経歴、スタートアップの成長率、資金調達など
  2. 実施後の調査(2016年9-10月):スタートアップの成長や会社が活動的だったかなど
  3. 二次資料によるデータ収集(2018年1月):会社のサイトやSNSの追跡など

 

ざっくりいうと、勉強会の8ヶ月後と2年後に電話インタビューが行われたわけです。後は集計や分析をして、結果は以下のような感じ。

 

結果

結果

  • 正式なマネジメントを実践する創業者からアドバイスを受けると、28%大きく成長した
  • 非公式なマネージャーと提携した会社は成長率が落ち込んだ
  • 正式なマネジメントを実践する創業者からアドバイスを受けると、生存率が10%増加した
  • MBAを持つ創業者はアドバイスの影響を受けづらかった
  • アドバイスの効果は同じ都市にペアがいる場合、2倍も強くなった

 

これらの結果から、正式なマネジメントスタイルを持つ創業者とペアになった人は業績が向上していることがわかりました。スタートアップは非常に高い確率で失敗することを踏まえれば、典型的な失敗傾向は鈍化しています。

特に面白いのがMBAを持つ創業者はアドバイス効果が薄かった点です。

 

MBAスタートアップ
これはMBAをもつ創業者ほど受け取ったアドバイスを無視するか実施しなかったからです。言われてみれば納得ですが、ここまで顕著に出るとは面白いですね。

 

著者は今回の結果について以下のように述べています。

 

正式なビジネストレーニングやインキュベータ/アクセラレータプログラムが比較的初期の段階にある新興経済国では、管理能力の欠如が特に深刻です。このような環境の中で、多くの起業家は経営について学び、会社の業績を向上させるための主要な情報源として、同僚やメンターからの非公式のビジネスアドバイスに目を向けます。我々の結果は良いアドバイスが利用可能であるが、最終的には限られたリソースであることを示しています。新興国にとって重要な課題は、起業家のための質の高いアドバイスを拡大することです。

 

これは日本の起業家にとっても、同じことが言えそうですね。アドバイスは創業者と会社が学ぶ1つのチャネルにすぎませんが、成長と生存に影響を与える重要な要素だとわかりました。やはり、アドバイスを貰える人がいるのは大きいみたいですね。

それではぜひ参考に。

 

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