社会的証明の研究では、自制心の低い状態の人に社会的証明を使うと販売促進することができると発表されました。
社会的証明が健康的な食品を販売促進できるのか?
この研究(1)は多くの食品を選択できる状況で、社会的証明が健康的な食品を選択するのに役立つかを検証したものです。
メモ
社会的証明とは、特定の状況で多くの人が行っている行動は正しいと判断する心理のことです。例えば、再生回数の多い動画は面白そうと感じたり、行列のできているお店は美味しそうと感じたりする心理のことですね。
一般的に自制心が低い場合には不健康な食品を選択する傾向が示されています。無意識にお菓子を買っていた経験は誰でもありますよね。で、この実験では「自制心が低い状態でも社会的証明によって健康的な食品を購入しやすくなるのでは?」というのを検証しています。
参加者は127人の成人男女で、オランダのスーパーマーケットで行われました。実験参加者は全員チーズを購入する意思があります。最初にスーパーの入り口で、自制心を消耗させるタスクと消費行動に関するアンケートを記入しました。自制心を消耗させるタスクは以下の2つに分けています。
グループ分け
- 自制心を消耗させるタスク
- 自制心を消耗させないタスク(偽)
そして、参加者はさらに2つに分けられました。
グループ分け
- 社会的証明群:低脂肪チーズがスーパーで最も売れているブランドと棚のバナーに貼る
- 対照群:チーズについて説明無し
つまり、大きく4つのグループに分けて比較したわけですね。一通りの説明を終えると、参加者には買い物をしてもらいました。最後には領収書を収集して、実験は終了です。
結果は以下のような感じ。
結果
- 自制心が低い状態で社会的証明が存在した参加者は対照群と比較して、有意に低脂肪チーズ(28.6%)を購入した
- 自制心に問題ない状態では、社会的証明群と対照群において低脂肪チームの購入に有意差はなかった
- 低脂肪チーズを購入した参加者の86.4%は紹介したブランドを購入した
結果はスーパーで健康的な食品に社会的証明を追加すると、自我枯渇の状態にある人の健康的な選択を促進すると示しています。具体的には直感的で衝動的に決める消費者は社会的証明の手がかりにしたがって、健康食品を購入しました。一方で自制心が高い参加者は低い参加者に比べて、低脂肪チーズをあまり購入しませんでした。
この結果について著者は以下のように述べています。
食品の選択に対する自制心の効果を実証した以前の研究では、参加者は健康的な選択肢と不健康な選択肢のどちらかを選ぶことができたが、今回の研究では参加者は低脂肪チーズの代わりに他の健康的または不健康な製品を選ぶことができるので、健康的な選択肢を選ばないことは必ずしも不健康な選択肢を選ぶことを意味しない。
つまり、自制心の高い人が低脂肪チーズを選ばなかったからと言って、不健康な食品を買っているわけではないということですね。
この研究がスゴイのは、棚のバナーに社会的証明となる情報を掲載して効果を得ている点です。小売業のマーケティング担当者はこの手法をかなり低コストで実装することができます。
ただ注意したいのは社会的証明を使う時は事実に基づいた情報を流すべきという点です。最初にも言いましたが、人は自制心がが低下した時に不健康な食品を好む傾向があります。
論文では、社会的証明を伝える方法として以下のようなものが挙げられています。
社会的証明を伝える方法
- 「この低脂肪チーズを買う人が増えてきています!」というメッセージ
- 「今週3000人が低脂肪チーズを購入しました」というメッセージ
- 製品の空の包装材料を残す
- 棚の供給を変えて若干の空白を開ける
社会的証明ではありませんが、別の手法として権威性も挙げられています。健康食品の分野で権威のある人が製品を宣伝するのも有効です。
それではぜひ参考に。