時間制限がきついセールス方法は逆に成約率を落とすかもという調査結果

カウントダウンタイマー

 

訴求のテクニックとして、期間を限定する訴求は定番的です。例えば、ジャパネットたかたの「24時間以内に申し込むと、特別価格!」みたいなオファーは有名ですよね。しかし、新しい研究によると、キツイ時間制限のオファーは成約率を低くするという面白い結果が出ました。

 

短すぎる時間制限オファーの毒

この研究(1)はイギリスのイースト・アングリア大学とオーストラリアのクイーンズランド大学の共同研究です。元々こういった期間限定オファーが有効とされている理由に、リスク回避行動が考えられてきました。

 

メモ

リスク回避とは、将来の不確実性に対するリスクを回避しようとする行動のことです。ここでいうリスク回避とは、「将来的に安く買えなくなるかもしれない」という後悔を予測させるという意味ですね。他の研究(2)では後悔を予測させると、リスクを回避するようになるという結果が出ています。

 

この実験では参加者209人を対象として、以下の2つに分けて比較をしました。

 

  • 後悔フィードバック群:104人
  • フィードバックなし群:105人

 

参加者には価格検索課題というのをやってもらいました。この実験では、参加者が持つ予算と提示される価格が実験ポイントという形で表現されています。

実験自体は偽物のお金が使われていますが、「予算-支払い額」の金額が実験協力金として支払われました。つまり、参加者はできるだけ安く済ませたいというインセンティブがあったわけですね。

 

実験
この課題は異なる価格が書かれたカードを連続で出して、期間限定のオファーを拒否することのリスクを嫌うのか実験したわけです。ちなみにこの課題は30個あって、その中の15個が時間制限付きのオファーでした。時間制限には4秒(厳しい)と12秒(ゆるい)の2種類があります。

 

ちなみに後悔フィードバック群にはオファーを選択した後で、他のカードをすべて公開しました。公開後の変更はできません。一通りの課題を終えたら、もう一度価格検索課題をやってもらい結果がどうなるか調査しました。

著者の事前予想では、

 

  1. 期間限定のオファーが選択される確率はフィードバックがある場合よりも、フィードバックがない場合の方が高い
  2. 時間的制約が厳しくなると、時間制限のあるオファーが選ばれる確率が高くなる
  3. 期間限定のオファーを受け入れるかどうかを選択する際に、実験対象者はリスク回避を明らかにする傾向がある

 

という感じでした。

しかし、実際の結果は以下のようになりました。

 

  • フォードバックのあるなしは時間制限付きオファーの選考に影響なし
  • 時間制限のあるオファーは、時間制限が厳しい場合に選ばれる可能性が低い
  • 時間制限付きオファーを受け入れるかの選択は、全体的にリスク回避の傾向を示した
  • リスク回避の傾向は、時間制約が「ゆるい」場合に強くなる

 

結果は全体的に、時間制限のあるオファーの方がリスク回避傾向が強くはなっていました。しかし面白いのが、時間制限の厳しいオファーでは選ばれる可能性が低下した点です。

この結果は著者いわく

 

期間限定のオファーを受け入れるかどうかを熟考することで、リスク回避の選択が促進される可能性があります。被験者が受け入れるか拒否するかの決定を考える時間が長ければ長いほど、このプライミングが作用する時間が長くなります。

※プライミングとは、事前に与えられた情報によって、後々の判断や行動に影響を与えること。

 

つまり、時間制限のオファー自体はリスク回避的な行動を取らせるのに有効ではあります。しかし、時間的なプレッシャーで合理的な判断ができていないわけではなかったということです。

これについて著者は以下のように説明しています。

 

時間制限付きのオファーは消費者が企業のオファーを競合他社のオファーと比較することを防ぐための方法である。

 

ということで、成約率をあげるために時間制限をキツくするというのはそれほど有効ではありません。訴求にカウントダウンタイマーが使われることはしばしばありますが、時間的なプレッシャーを与える手法というよりも他社と比較させないための方法です。

それで言うと、自社の商品が他社よりも見劣りする場合に時間制限付きのオファーは有効かもしれません。

 

それではぜひ参考に。

 

  あなたにオススメの記事 

Copyright© ネクストサピエンス│ビジネスパーソンの科学メディア , 2023 All Rights Reserved.