今回は売上と顧客体験を最大化するWEBデザインを紹介します。
WEBデザインと顧客体験の研究
この研究(1)はWEBデザインがどう顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)に影響を与えるのかを調査したものです。ちなみに顧客体験とは、顧客が製品の購入前から購入後までに経験する体験のことです。
オンラインの顧客体験においてはデザイン要素が購入に影響を与える基本的なメカニズムとして4つの要素が特定されています。
4つの要素
- 情報性:顧客に対する体験の機能的側面と価値
- エンターテイメント性:WEBページで体験するオンラインショッピングの楽しさや遊び
- 社会性:WEBページが与える温かさや社交性、人間の接触感
- 感覚:WEBページによる感覚の刺激(視覚や音、匂い、味覚、触覚)
上記の4つが購入に与える顧客体験となっています。
対象となったのはFortune1000の企業と提携した11ブランド16製品です。模擬的なAmazonの商品ページを作成して、13の設計要素をそれぞれ変えました。
13の設計要素は2つのレベルに分類されています。
13の設計要素
- 言語スタイル:ジャーナリズムのトーン・会話のトーン
- 詳細な説明文:少ない・多い
- 特徴の箇条書き:3つ・5つ
- 返品ポリシー情報:あり・なし
- 製品写真:クローズ写真あり・なし
- 実際に使用した商品写真:あり・なし
- 画像サイズ:100%・125%
- 製品ビデオ:ビデオあり・なし
- 顧客の星評価:あり・なし
- 第三者の製品評価品質シール:あり・なし
- 類似製品との比較表:あり・なし
- 関連商品のリンク:あり・なし
- コンテンツフィルター(さらに表示ボタン):あり・なし
上記のような多数の要素を実験しました。参加者は10,470人の従業員で、16個の製品ごとにランダムで分けられています。参加者は全員45秒間Webページを見てもらった上で、アンケートに回答してもらいました。
結果は以下のような感じ。
結果
- 「顧客の星評価」と「画像サイズ」がすべての顧客体験で強力なドライバーだった
- 情報性:顧客の星評価・箇条書き・比較表・より詳細な説明文・大きな写真・製品ビデオ・実際に使った商品写真
- エンタメ:画像サイズ・顧客の星評価・比較表・箇条書き・詳細な説明文・製品ビデオ・会話形の言語スタイル
- 社会性:画像サイズ・顧客の星評価・実際に使った商品写真
- 感覚:画像サイズ・製品ビデオ・言語スタイル・実際に使った写真
- 信頼されているブランドは情報量が重要で、エンタメは影響度が小さい
- 信頼されていないブランドはエンタメが購入に大きな影響を与える
結果は「顧客の星評価」と「画像サイズ」はすべての顧客体験タイプと関連していました。それぞれの要素に強く影響していたのは上記の通りです。4つの要素を元にしたデザイン設計ガイドは最後に用意しているので、そちらもぜひ参考に。
で、この実験では製品タイプ別による分析もあります。製品タイプは以下の2つに分類されています。
製品タイプ
- 検索製品:提示された情報から評価が可能な商品
- 体験製品:物理的な接触によって評価が可能な商品
結果は以下の通りです。
結果
- 検索製品は社会的存在と感覚的魅力がそれほど重要ではなかった
- 体験製品は製品情報の有用性が低かった
製品の種類によっても影響が変わるので、自分が売りたい商品の種類を知った上でWebデザインを変更してみるのも良いかもしれませんね。
実際にAmazonでカスタマイズすると売上はどうなる?
この研究では先ほどの結果が再現できるかを本当のAmazonでも調査しています。商品ページは3つに分けて比較しました。
グループ分け
- 機能的:説明文を詳細にし、箇条書きと比較表を追加
- 社会的:会話調の文章と実際に使った写真を追加
- 対照:デフォルトのまま
商品はパートナー企業のワイヤレスネットルーター(検索製品)で、1ヶ月間調査しました。
結果は以下のような感じ。
結果
- 機能的なページは売上を増加させた
- 社会的なページは売上を減少した
- 対照ページも売上が減少した
結果はWebページの情報量を増やすと、検索製品の売上が向上すると示されています。社会的なページは検索製品において有意に負の影響が確認されました。
自分の商品に合っていないカスタマイズ方法だと、売上を低下させる恐れがあるわけですね。この辺りは個々に検証したいところですが、アイデアとしては自分の製品タイプに合った方法を試してみるのが吉です。
著者は今回の結果について以下のように述べています。
我々の調査結果はオンライン小売業者のウェブサイトを通して、商品を紹介している売り手と小売業者自身に当てはまる。最初に売り手は販売される製品の種類と経験の焦点、ブランドの信頼性に基づいて、最も有益な顧客体験を決定しなければならない。
まず最初にやるべきなのは自社製品の種類やブランドの信頼性がどれほどかを調べることです。それから最初に出た結果を参考に売上の変化を検証していくのが良さそうです。
効果的なオンラインカスタマーエクスペリエンスの設計ガイド
1.情報性
ポイント
- 対象:検索製品・信頼されているブランド
- 製品の詳細な説明を提供する
- 箇条書きは3つではなく、5つにする
- 他の関連製品との比較表を作る
- 第三者の推奨を入れる
2.エンターテイメント性
ポイント
- 対象:信頼性の低いブランド
- 特定のデザインが強い影響を与えることはない
3.社会性
ポイント
- 対象:体験製品
- 会話型の言語スタイルを選ぶ
- 実際に使っている写真を使う
- コンテンツフィルター(詳細を表示のボタン)を使わない
4.感覚
ポイント
- 対象:体験製品
- 製品ビデオを使う
- 製品のクローズアップ写真を使う
それではぜひ参考に。