意外な結果!笑顔の写真は購買意欲やクラファンにどう影響するか?

2019年8月29日

笑顔

 

マーケティングやクラウドファンディングで顔写真を出す機会が増えています。そこで気になるのは顔写真の表情です。笑顔とマーケティングについて調査した研究では、笑顔の強さによって成果が変わると発表されました。

 

笑顔の写真とマーケティングの研究

この研究(1)はマーケティング担当者の笑顔の強さがマーケティングやクラウドファンディングでどう影響するのかを調査したものです。一般的に笑顔は好印象を与えるマーケティングツールとして利用されます。

実際に広告でも笑顔の画像を使用したものも出てきますし、過去の研究でも対人関係にポジティブな影響を与えるとわかっています。しかし、とびきりの笑顔の方が良いのか微笑みの方が良いのかなどは調査されていないということで、その辺りを5つの実験でガッツリ調査したわけです。

今回は仮説ごとに実験内容を紹介していきます。

 

1.強い笑顔はマーケティング担当者の暖かさや能力の認識はどう変化させるか?

笑顔の強さは5段階に分かれますが、この実験ではレベル2とレベル5で比較しています。

 

笑顔の写真

 

対象者は219人の大学生で、2枚の写真から1枚を見せて以下の2つの評価してもらいました。評価は7段階評価です。

 

診断内容

  1. 暖かさ:暖かい、親切、有効的、誠実さ
  2. 能力:有能、知的、熟練さ

 

写真は株式ブローカーのプロフィール写真として見せています。

結果は以下のような感じ。

 

結果

  • 強い笑顔は有意により高い暖かさの評価を示した
  • 強い笑顔は有意により低い能力の評価を示した

 

結果は強い笑顔な人ほど暖かく見えますが、能力が低いと判断される傾向がありました。面白いですね。

また事後テストも55人を対象として行っています。事後テストはマーケティング担当者の説得意向をどう感じるかを測定しました。質問内容は以下のような感じ。

 

診断内容

  1. 写真の人は説得する強い意思があるように見えますか?
  2. 写真の人は不適切な手段で人を説得しようとしていますか?

 

結果は笑顔の強度は説得意向に対して、影響がありませんでした。

 

2.強い笑顔は規制の焦点によって影響が変わる?

実験2では「強い笑顔は消費者が販売促進に焦点を当てたとき暖かく感じ、損失防止に焦点をあてたとき強い笑顔が能力の認識を損なう」という仮説を検証しました。具体的には弁護士の広告の一部を提示して、笑顔の強さ(2)×広告コピー(2)で比較しました。

 

笑顔の写真

 

広告コピーは「販売促進」と「損失防止」に焦点を当てています。

 

診断内容

  1. 販売促進:もし全額保証をご希望でしたら、お電話で対応させていただきます
  2. 損失防止:事故で重傷を負った場合は、お電話で対応させていただきます

 

参加者は320人の男女で、ランダムに上記のいずれかを見てもらいました。そしてアンケートで先ほどと同じ「暖かさ」と「能力」の知覚を回答してもらっています。

結果は以下のような感じ。

 

結果

  • 能力の知覚に対する強い笑顔の減少効果は、損失防止に焦点を当てたときのみ発生した
  • 暖かさの知覚に対する強い笑顔の効果は、販売促進に焦点を当てたときのみ発生した

 

結果は仮説の通りで、広告コピーによって笑顔の効果の有無が変わりました。

 

3.笑顔は購買意欲をどう変化させるのか?

実験では笑顔のレベルが異なる2つの広告を比較しました。具体的には栄養指導サービスの広告で、紹介文を消費リスクの高さで2つに分けています。

 

診断内容

  1. 高い消費リスク:栄養士から誤解を招くアドバイスや不適切な食事調整が深刻な健康問題につながる可能性がある
  2. 低い消費リスク:紹介文なし

 

消費リスクとは、製品やサービスを購入した後に悪影響を経験する可能性のことですね。

実験の参加者は218人の男女で、上記のどちらかを読んでもらいました。その後で栄養指導サービスの広告を見てもらっています。

 

笑顔の写真

 

写真を見てもらったら、知覚された暖かさや能力、購入意向を回答してもらいました。結果は以下のような感じです。

 

結果

  • 高い消費リスクは強い笑顔のとき、能力の知覚を低下させる
  • 低い消費リスクは強い笑顔の時、暖かさを強化させる
  • 強い笑顔は消費リスクの低い状況で高い購入意欲につながった
  • 強い笑顔は消費リスクの高い状況では購入意欲を低下させた

 

結果は消費リスクの高さによって、購入意欲への影響が変わりました。具体的には強い笑顔が暖かさを強化した場合は購入意欲を強化させて、能力の知覚を低下させた場合は購入意欲を低下させます。

 

4.笑顔の強さはクラウドファンディングにどう影響するか?

笑顔の強さはクラウドファンディングのプロフィール写真でも関係します。ここまでの研究でわかっているように、わずかな笑顔は能力の認識を高めると示されています。よって、強い笑顔よりもプロジェクトの支援額が増加する可能性があるわけですね。

一方でクラウドファンディングは他の人をサポートしたいという気持ちも重要な要素となっています。その場合はサポートの費用が低いと起こりやすいと考えられるので、Facebookのシェア数と正の関連があるかもしれません。

この論文では上記の仮説もKickstarterの生データを使って検証されています。調査は2014年11月のデータで、最終的なサンプル数は324のプロジェクトでした。

プロジェクトクリエーターのプロフィール写真を笑顔のレベルで分類しています。

 

笑顔の写真

 

グループ分け

  1. 微笑み:158人
  2. 強い笑顔:166人

 

結果は以下のような感じ。

 

結果

  • 笑顔の強さは支援者の合計支援額や平均支援額の両方で負の相関を示した
  • 強い笑顔は支援総額が50%以上急落し、一人あたりの出資額は30%減少した
  • 笑顔の強さはFacebookのシェア数と正の相関を示した
  • 具体的には強い笑顔はFacebookのシェアが2倍以上だった
  • 小規模の支援は強い笑顔で有意に多かった
  • 一方で大きな支援は強い笑顔ではかなり少なかった

 

結果は強い笑顔はFacebookのシェアや小規模な支援を増加させました。一方で、支援総額や一人あたりの平均支援額、大規模な支援は減少させています。

 

まとめ

ここまで見てきたように強い笑顔が必ずしもポジティブな対人判断につながるわけではないとわかりました。具体的には笑顔のレベルが高いほど暖かさは向上するものの、能力の認識は低下します。

ただし、消費者の「規制の焦点」や「消費リスクのレベル」によって効果は変わります。まとめると以下のような感じ。

 

診断内容

  1. 販売促進に焦点を当てると、強い笑顔は暖かく感じる
  2. 損失防止に焦点を当てると、強い笑顔は能力の知覚を低下させる
  3. 消費リスクが低いと、強い笑顔は暖かさと購入意向を高める
  4. 消費リスクが高いと、強い笑顔は能力の知覚低下と購入意向を弱める

 

強い笑顔は場合によっては悪影響につながる可能性もあるわけですね。またクラウドファンディングでは微笑みの方が合計支援額が高くなる可能性があります。

このように笑顔の強さを細かく調整して、ブランディングや印象づくりに活かしたいですね。わかりやすいのはSNSのプロフィール写真です。

暖かさや親しみやすさを重視するなら笑顔を強めの写真に設定し、能力の知覚を高めるなら笑顔は抑えめにするべきです。

 

それではぜひ参考に。

 

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