健康的な食べ物を販促させる研究は近年多く発表されています。中でも注目されているのはナッジです。ナッジは人が自発的に望ましい行動を選択するよう促す仕掛けのことを言います。ネクストサピエンスでも過去に研究を紹介しました。
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野菜や果物の場所を移動させて売上を15%伸ばした研究
上の研究ではレイアウトを少し移動させるだけで、健康的な食べ物の売上を増加させられました。今回紹介する研究ではナッジに加えてSNS戦略を組み合わせた手法で、健康的な食べ物を販売促進できるかを検証しています。
ナッジとSNS戦略で販促は可能なのか?
この研究(1)はナッジとSNSマーケティングが職場のレストランで健康的な食べ物の購入を促進できるか検証したRCTです。対象となったのはオランダにある30のレストランで、2013年3月-6月にかけて実施されました。レストランは以下の2つに分けられています。
グループ分け
- 介入グループ(14):1日の訪問平均数235人
- コントロールグループ(16):1日の訪問平均数247人
介入に関しては4Pに分類してガッツリ戦略が作られています。主な介入は以下のような感じ。
介入戦略
- 健康的な食品の選択肢を60%以上に変更
- 健康的な製品はルートの始めに配置
- すべてのカテゴリで健康的な製品が最も目立つ場所に配置
- レジに棚がある場合は果物や野菜で埋めた
- ファストフードの価格は25%上昇させ健康的な食事は25%低下させた
- 健康的な食品のみSNSで宣伝した
- メニューは健康的な食品を先に表記
介入は4P(製品、場所、価格、プロモーション)のすべてで行われました。実験はベースライン測定の3週間と介入12週間でデータを収集しています。データは販売データやオンラインアンケートを使用しました。
結果は以下のような感じ。
結果
- 介入レストランは対照よりもはるかに多く健康的なサンドイッチの売上が増加した
- 健康的なチーズの購入も大幅増加した
- 果物も100人あたり0.7個追加購入したことを示した
- ファストフードは売上に違いなし
結果はナッジとSNS戦略の実施によって健康的な食べ物を有意に販促する効果が確認されました。商品の中でも特にサンドイッチは著しい効果をあげています。
サンドイッチについては目立つ場所に配置されましたが、「健康」という宣伝をすることなく「今日のサンドイッチ」として販売されました。健康的な食べ物を売りたい場合は必ずしも健康の訴求をする必要はないとわかります。
著者は今回の結果について以下のように述べています。
本研究は職場のレストランにおいて製品の提供方法が購買行動に影響することを示した。現実の環境で実施されるナッジとソーシャルマーケティングに基づく戦略は従業員によるより健康的な食品購入を奨励する上で効果的であり、長期にわたって効果を維持することを目的としている。
健康的な食事を販促したい場合は4Pから考えて変更していくことで、効果があげられるとわかりました。今回の場合でいうと、ほとんど配置や見せ方を変えるだけで大きな成果が出ています。
自分の店舗で特に売りたい商品は4Pをイジることで大きな成果を得られる可能性があるわけです。個人的に今回面白かったのはファストフードが25%値上げしているにも関わらず、売上に変化が出なかった点です。論文ではファストフードは元々安価であるため、25%値上げしても依然として安い選択肢だったからと説明されています。
それではぜひ参考に。