ユーモラスなマーケティングがブランドを傷つける瞬間

2019年9月14日

ユーモア

 

ユーモアな広告がブランド態度に与える影響を調査した研究では、行き過ぎたユーモアがブランドを傷つけるという調査結果が出ています。

 

ユーモアな広告がブランド態度に与える影響

この研究(1)はユーモアな広告がブランド態度に与える影響についてガッツリ調査しました。実験は4つ行われています。

一般的にユーモラスな広告が注目を集めやすく、広告への態度も改善するとわかっています。ただしユーモアには笑いや娯楽以外に、ネガティブな反応を引き起こす可能性があり、それによってブランド態度を損なう可能性があるわけですね。

この研究ではユーモアの理論として「良性の違反理論」を元に説明しています。

 

良性の違反
良性の違反理論とは、ユーモアが「違反」であることと違反が「良性」であることで生じるという理論です。ここで言う違反とは、身体的(くすぐったり)やアイデンティティの脅威(からかう)、文化的(不適切な服装)、会話(皮肉)、言語(言葉遊び)を破る行動のことです。良性でないとマナー違反やルール違反といった笑えないものになりますが、自分が見て許容可能や正常と判断されたときに良性の評価が得られます。

 

ただここで問題なのは違反の度合いです。違反は軽度でも重度でも、消費者が良性と評価すれば問題ありませんが、そうでない場合はブランドを傷つける恐れがあります。

実験ではGoogleの画像検索で「ユーモラスな印刷広告」と検索し、60個の画像を抽出しました。今回は60の画像の中から2つの広告を例にしています。

 

広告

 

そして、34人の回答者を集め、60のブランド態度とユーモアのレベルを測定しています。違反の重大度に関しては研究助手をトレーニングして、「軽度」「中程度」「重度」の3段階に分けてもらいました。

結果は以下のような感じ。

 

結果

  • 面白い広告は面白くない広告よりもブランドを傷つける可能性が低い
  • 重度の違反を描写した広告は軽度よりもブランドを傷つけやすい
  • ユーモアの評価は「Google:4.04」「オバルチン:4.17」
  • ブランド態度は「Google:4.53」「オバルチン:3.10」

 

結果は違反の重大度がユーモアの効果に影響するとわかりました。具体的には、軽度な違反のユーモアが好ましいブランド態度につながります。

特に面白いのはユーモアの評価が変わらなくても、違反の重大度によってブランド態度が影響を受けた点です。マーケティング担当者の方は以下の5つの質問ガイドを参考にしてみてください。

 

ユーモア使用時の質問ガイド

  1. ユーモアは面白いですか?
    消費者が面白いと判断する必要があるので、ターゲットに対して市場テストを実施すること。
  2. 広告は非常に脅威的な方法でユーモアを作り出していますか?
    結果で出ているように重度な違反のユーモアはネガティブな反応を誘発し、ブランド態度を低下させる。よって、違反度の低いユーモアを作成する必要がある。
  3. 広告は特定の人やグループを傷つけることでユーモアを生み出していますか?
    特定の個人やグループを標的とする違反はブランドにとって有益ではない。普遍的で一般の人を対象とするユーモアを作成するのが安全。
  4. 広告は回避の動機付けにもなるようなユーモアを生み出していますか?
    嫌悪感や恥ずかしさを感じる広告は面白さに関係なく、ブランド態度を低下させる。
  5. 消費者は誰で、ユーモアを使う背景は何ですか?
    ユーモアや違反の度合いだけではなく、消費者が広告を見る状況にも注意を払う必要がある。

 

全体的に見てユーモアは必ずしもブランドに傷を付けるわけではありませんが、外しすぎるとブランド態度にも影響があります。著者はマーケターに対して以下のようなアドバイスをしています。

 

マーケターは穏やかに脅迫的で、特定の人やグループをあざ笑わず、回避を促すことがないような害のない違反を描写することによってユーモアを創出することを推奨する。

 

ユーモアは広告の乱雑さをカットして、注目を集めやすいので役立ちます。ただその過程でブランドを傷つけないように注意する必要がありますね。

それではぜひ参考に。

 

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