ユーモアが広告にどこまで効果を持つのかを徹底的にメタ分析した結果

2019年8月26日

進化

 

ユーモアのある広告を見ると上手いなと思いますが、実際どの程度成果に影響するのでしょうか。ユーモアの効果を検証したメタ分析によると、広告への態度と注意に大きな影響があると示されました。

 

ユーモアの効果を徹底的に検証したメタ分析

この研究(1)は広告におけるユーモアの効果を調査した研究の統合的なメタ分析です。広告におけるユーモアの影響は過去にもいくつか文献レビューが行われてきました。これは研究を更新・拡張する形で行われましたが、30以上の効果サイズを利用してユーモアの効果を検証しています。

ただ前提としてユーモアが広告に与える影響はAADとABRに分けて考えられています。

 

AADとABR

 

AADとは、広告への態度を指します。ざっくり言うと、広告に対する全体的な評価のことですね。一方のABRとは、ブランドへの態度のことです。広告を視聴するとき、まず広告への態度が形成されてからブランドへの態度に転移すると考えられています。

また製品ごとにユーモアの有効性を把握するためのモデルとして、「関与/認知リスク」×「機能/情緒」のマトリックスでも検証しています。

 

高関与/高認知リスク 低関与/低認知リスク
機能的 白い商品 青い商品
情緒的 赤い商品 黄色い商品

 

今回のメタ分析で対象になった研究は1960年から2006年の研究でした。精査した結果、43件の研究が選択基準を満たしていました。

結果は以下のような感じ。

 

結果

  • ユーモアはAADやABR、ポジティブな感情反応、注意、購入意欲を大幅に高めた
  • 特に強い効果があったのはAADと注意だった
  • ユーモアは否定的な感情反応と信頼性を低下させた
  • ユーモアとAADの効果は学生やリアルな広告(架空の広告と比較)、動画広告で強くなった
  • 広告のユーモアは商品との関連性に関わらず、情緒的な商品(赤、黄色)に対してABRの関連性を強化しました
  • 白い商品の場合はユーモアが商品と関連している場合のみ強い効果をもたらした
  • 青い商品はユーモアの関連性に関わらず、利点がなかった

 

結果は広告のユーモアがAADや注意、ポジティブな影響を大幅に高めると示されました。AADの効果サイズはABRの2倍となっていて、AADに対してかなり有効とわかります。

ただし注意したいのは、他の実行戦術が注意や広告の好みからブランド選択までの転移に与える影響を失う可能性があるという点です。ざっくりいえば、広告が面白いで終わってしまって、他のブランディング施策の効果を減少する可能性があるわけですね。

 

AADに対するユーモアの効果は視聴者の特性やユーモアの刺激に依存し、ABRに対してはユーモアと商品の関連性だけではなく、商品のタイプにも依存しています。またユーモアのある広告を行う時のポイントとして以下の要素が挙げられます。

 

広告のポイント

  1. ABRを強化するか:製品カテゴリとユーモアの関連の組み合わせを確認
  2. ターゲット:学生は若く教育水準の高い消費者なのでユーモアを理解しやすい
  3. 広告形式:動画広告やリアルな広告はより効果的

 

著者は今回の結果について以下のように述べています。

 

暫定的な結論は、メタ分析の統合結果に基づいています。ユーモアは注意を高めますが、認知反応に影響を与えないことを示し、ブランドメッセージを妨げず、メッセージ処理を刺激しないことを示します。信頼性に対するユーモアの全体的な効果はマイナスですが、「知覚されたユーモア」と「ユーモアとABR」の相関関係の結果はブランド態度に対する信頼性仲介効果と一致しません。ユーモアは、認知プロセスではなく感情プロセスによってブランドの態度を何よりも改善する刺激です。

 

全体的に見ると、広告におけるユーモアはポジティブな影響がありました。ただ商品カテゴリや商品とユーモアの関連性によっても効果が変わるので、この辺りは参考にしたいところ。

ただ細かい部分を見ると、研究のほとんどがアメリカで行われているので、日本の文化でどこまで効果があるのかは不明です。とはいえ、広告のアイデアとしてはユーモアも含めたものも検証してみたいですね。

 

それではぜひ参考に。

 

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