新しい研究によると、無料アプリと有料アプリでは口コミ投稿の動機が違うと発表されました。具体的には無料アプリは生産者をサポートするという動機で、有料アプリは他の消費者をサポートするという動機で行われています。
口コミが投稿されやすいのは無料?有料?
この研究(1)は無料製品がネット上の口コミにどんな影響を与えるのかを調査しています。技術の進歩はマーケティングにも影響を与えていますが、大きな例としてはフリーミアムモデルの増加です。一昔前までは無料で使える製品は珍しいものでしたが、今ではモバイルアプリの大半でフリーミアムモデルが採用されています。
メモ
フリーミアムとは、基本的なサービスの利用は無料で提供され、高度な機能やサービスについては課金する仕組みのことです。
で、この研究はフリー製品における口コミを調査したわけです。実験は全部で4つ行われていますが、3つに分けて紹介します。
1.無料アプリと有料アプリ、人に推奨する可能性が高いのはどっち?
この実験では156人を対象に以下の質問をしました。
診断内容
- 最近プレイした無料アプリで満足しているの何か?
- 最近プレイした有料アプリで満足しているのは何か?
- 過去にアプリを他の人に推奨したかどうか?
- 近い将来他の人に推奨する可能性は?(7段階評価)
- アプリの満足度(7段階)
- アプリ開発者に感謝したいか?(7段階)
結果は以下のような感じ。
結果
- 満足度は無料アプリの方がやや高かった(6.37対6.02)
- 無料アプリの方が有料アプリよりも人に推奨する可能性が高かった(6.50対5.92)
- 無料アプリの方が有料アプリよりもアプリ開発者に大幅に感謝していた(5.43対4.98)
結果は無料アプリを思い出した参加者がそのアプリを他の人に推奨する可能性が高いとわかりました。さらなる分析ではアプリ開発者の感謝を通じて、口コミ行動に対する製品タイプの悪影響が示されています。つまり、無料アプリは開発者への感謝が強いため、口コミが促進されやすいわけですね。
2.口コミに影響を受けて、口コミ評価が変化するか?
実験はWebベースで行うビザの写真編集アプリでした。参加者はアメリカ在住の380人で、口コミの数と口コミの分散、無料有料で8つのグループに分かれています。
上記の4つから無料製品と有料製品に分類されています。参加者は中国への出張が予定されていて、中国大使館にビザ写真が必要だとイメージしてもらいました。
それから写真アプリを使用してもらうと、「アプリ開発者から」というメッセージとともにレビューフォーラムに口コミを投稿するよう要求されました。口コミを投稿する画面には上記の画像のいずれかが表示されています。
それから実験1と同じく質問しました。
診断内容
- アプリ開発者への感謝度合い
- 潜在的なユーザーはこのアプリの有用性を確信できるか?
- アプリは有用だったか?満足しているか?
結果は以下のような感じ。
結果
- アプリが無料のとき、口コミを投稿する割合が大幅に増加した(52%対33%)
- 口コミ数が多い場合、無料アプリは口コミが投稿される可能性が高くなった
- 口コミの分散が低い場合、無料アプリの場合に口コミが投稿される可能性が高くなった(54%対21%)
- 知覚リスクに対する製品タイプの影響は口コミ数:低&分散:高で最も顕著だった
結果は無料アプリで、口コミ数が多く分散が小さいときに最も口コミが投稿される可能性が高くなりました。一方で、元々の口コミ量が少なく、分散が大きいときは無料製品と有料製品の口コミをする可能性の差は小さくなっています。
3.無料+広告付きだと口コミに影響するのか?
実験では683人のアメリカ人を対象として製品タイプ・口コミ数・口コミの分散に分類しています。製品タイプは以下の3つに分類されました。
製品タイプ
- 無料アプリ
- 無料+広告
- 有料アプリ
先ほどは8つのグループに分かれましたが、今回は12グループです。アプリは食事や運動をモニターして、健康的な生活を維持するアプリでした。
2ヶ月間使ってもらってから、ポップアップメッセージを受け取ってレビューの投稿を要求しています。レビューの投稿画面では口コミの数と分散の4つに分かれて、表示されました。
質問内容は今までとほぼ同じですが、「開発者が自身に利益を出そうとしていたか?」や「このアプリは長期間にわたって成功するか?」という質問を追加でしています。
結果は以下のような感じ。
結果
- アプリは無料の場合、レビューを投稿する意思があった
- 広告がある場合は完全無料よりも有意に低かったが、有料よりも高かった
- 生き残る可能性が高いと評価した人ほど、レビューを投稿する可能性が高かった
- 口コミ数低&分散高の場合、無料アプリで採用リスクが低下した
結果は完全無料であるときの方が口コミを投稿する意思が強くなりました。ただし、アプリの口コミにリスクが示される場合、無料は悪影響を受けやすいです。
また驚いたのは広告がつくだけで、口コミを投稿する意思に有意差が出た点です。広告が付いていると、有料アプリとほとんど変わらない結果になります。
まとめ
商品に付く口コミは生産者や他の消費者をサポートするという動機によって影響を受ける可能性があると示されています。つまり、完全無料だと相互関係は生産者向けの動機付けを促進するわけです。一方で有料アプリでは他の消費者の意思決定をサポートするという動機付けを促進するとわかりました。
著者はマーケターに対して以下のようにアドバイスしています。
生産者に対する相互主義が無料製品における口コミの重要な触媒であることを考えると、マーケターは相互主義の手掛かりをコミュニケーションに埋め込むことが価値があると考えるかもしれない。例えば、消費後のメッセージは顧客に満足のいく経験を思い出させるだけでなく、その経験をもたらすために会社がとった具体的なステップを思い出させることができる。
さらに著者らの所見は既存の口コミ量が少なく、分散があるとき、有料製品の口コミを共有する意欲が増加することを示す。レビューの要請については既存のレビューの量が不足していることや顧客の意見が割れていることを強調するのが簡単な意味合いである。
今回の調査結果では、無料の製品が口コミを促進することを示してます。しかし、有料製品でも口コミを促進する方法は示されていて、「他の消費者の役に立てる」とメッセージを表示したり、口コミの不足と意見の割れを示したりするのが良さそうです。
今までフリーミアムによる口コミの影響を調査した研究はなかったので、中々参考になりますね。