有名人を起用した広告は定番です。しかし、有名人と広告のメタ分析によると、認知や広告への態度、購入意図にほとんど影響がありませんでした。
有名人を起用した広告宣伝の有効性
有名人を使用するマーケティングは鉄板ではありますが、実際のところ他の手法と比べてどれほど有効かはわかりません。この研究(1)はまさにそこを検証していて、有名人と広告の研究をガッツリとメタ分析しています。
対象となったのは2016年4月までの研究で、46件の研究が選択基準を満たしました。サンプル数は10,357人と中々大規模です。有名人の広告への影響とは言っても、大まかに3つの影響を調査しています。
広告への影響を分類
- 認知(20件):有名人の利用は消費者の関心を高めるか
- 広告への態度(35件):有名人の支持は広告への態度を高めるか
- 購入意図(19件):購入する意思やブランド選択を高めるか
他にも以下のような要素を検証しています。
検証内容
- 有名人の相性一致:製品と有名人はマッチしていると効果が上がるか
- 推奨の明示:「この製品を使っています」と明示すると効果が上がるか
- 広告の頻度:広告の頻度が有名人とのマッチを強化するか
- 製品の知名度:製品に知名度があると、有名人の効果は上がるか
- 他の推奨との比較:一般消費者や品質シール、賞、エンドーサーブランドなどと比較
広告への影響に加えて、色々な条件で検証しています。
メモ
エンドーサーブランドとは、他のブランドによって保証されているブランドのことです。例えば、商品は知らないけど、会社は知っているから信頼できるみたいなことですね。
中々いい感じですね。
結果は以下のような感じ。
結果
- 有名人の起用が消費者の認知に影響を及ぼすことはなかった
- 有名人の支持は消費者の態度にポジティブな影響があった(広告への態度には効果なし)
- 有名人の支持は強い購入意図を呼び起こさなかった
- 男性有名人は女性よりも優れたパフォーマンスを示した
- 俳優はモデルやミュージシャン、アスリートよりも優れたパフォーマンスだった
- 製品と相性が一致した有名人は優れたパフォーマンスを示した
- 暗黙の方が明示よりも優れたパフォーマンスを示した
- 広告の頻度は消費者の反応に影響を与えない
- 見慣れない製品の方が有名人の効果が強い
- 有名人の起用は品質シールや賞、エンドーサーブランドよりもパフォーマンスが悪かった(推奨なしよりもパフォーマンスは良い)
結果は意外にも認知や広告への態度、購入意図にほとんど影響がありませんでした。この結果は個人的にもびっくりです。ただ部分的に見ると、元々知名度のある商品に対しての態度にはポジティブな影響が確認されています。
さらに驚いたのは品質シールや賞、エンドーサーブランドよりもパフォーマンスが悪かった点です。有名人の起用は何もないよりもパフォーマンスが良かったですが、特別な効果があるわけでもありません。
とはいえ、有名人を起用した広告を試したい人もいると思うので、実践的なガイドをまとめておきます。
有名人起用の実践ガイド
- 製品と一致する有名人は一致しない人と比べて、好意的な態度と強い購入意図を引き出す(影響度:中)
- 男性有名人は女性の有名人と比べて、好意的な態度と強い購入意図を引き出す(影響度:中-大)
- 暗黙の支持は明示的な支持に比べて、好意的な態度と強い行動的意図を引き出す(影響度:中-大)
- 俳優はモデルやミュージシャン、テレビ司会者と比べて、好意的な態度を引き出す(影響度:小-中)
- 見慣れない商品の広告は見慣れた商品の広告と比べて、好ましい態度を引き出す(影響度:小)
- 有名人の支持は品質シールや賞、エンドーサーブランドによる支持と比較した場合、好ましくない態度を引き出す(影響度:中)
※小:d < 0.3、中:d < 0.5、大:d < 0.67
一般的に有名人を起用したマーケティングは効果的な方法です。とはいえ、マーケティング担当者が適切な人を選択しなければ、ネガティブな結果を出す可能性があります。特に製品と一致しない有名人を起用してあからさまに推奨させる場合は悪影響をもたらす可能性がとても高いです。
何も考えずに知名度のある芸能人を使えばいいというわけではないということですね。
それではぜひ参考に。