”99円”の価格設定は科学的にどんな効果があるのか調査した結果

99円

 

価格の語尾が「99円」という価格設定は非常に有名です。低価格帯で販売しているお店はこの価格設定をよく採用しています。

ここまで普及しているので、効果があるのは当然としても、他の経営的要因に影響してくる可能性も十二分にあります。個人的にこの辺りが気になったので、調査してみました。

すると、ブランドや市場シェア、カテゴリ価格などがどう影響してくるのかをガッツリ調査した研究が出ていたのでメモしておきます。

 

そもそも99円に販売促進の効果はあるのか?

価格の語尾「99円」の研究は二十世紀の前半から進められてきました。意外と長い歴史がある研究みたいです。

そんな中で99円効果が売上にどんな影響があるのかを検証した研究(1)が1996年に行われました。協力してもらったのは婦人服会社で、ダイレクトメールのみで顧客とコミュニケーションを取っています。

ダイレクトメールのみと言っても、全国に60万人もの顧客を持っていて、その中で無作為に選ばれた9万人が対象となりました。かなり大規模な実験です。

今回の実験では169アイテムが掲載されたカタログで行い、25商品の価格を変更しました。ちなみに価格は3つに分類されています。

 

  • 語尾「00」ドル群:3万人
  • 語尾「99」ドル群:3万人
  • 語尾「88」ドル群:3万人

 

結果は以下のような感じ。

 

  • 99ドルカタログは8%も多い販売量だった
  • 99ドルカタログは購入者数も多かったが、統計的に有意ではなかった
  • 99ドル効果は50~100ドルで購入金額の割合が多いが、20ドル以下と100ドル以上では効果が見られなかった
  • 88ドルカタログは00カタログとほとんど変わらなかった

 

結果は語尾99が8%の販売量増加をもたらしました。実践的にはたった1円値下げするだけで、売上高が約1割増加するのでかなり魅力的ですね。ちなみにこの小売業者はこの実験の後で、99円カタログを採用したとか。このような結果が出るのであれば、多くの会社が採用するのもうなずけます。

ちなみに他の研究でも売上増加は多数確認されているので、結果だけまとめておきます。

 

  • 99円の価格設定は12%から76%の売上増加2
  • 価格の終わりが9だと売上が5-8%増加した(3
  • ヨーグルトのデータでは正の効果が見られたが、ツナの売上には負の効果が確認された(4

 

全体的に見れば、正の効果が確認されていますが、商品によっては負の効果も確認されているのはポイントです。

 

99円の効果はプレミアムブランドの売上に悪影響がある

他に気になるのは売上以外の要素にどう影響しているのかという点です。例えば、高級路線のブランドがこういう価格設定をしているのは見かけないので、ブランドにはあまり良くない気もします。そんな端数価格効果の影響を広く調べた研究が出ていました。

2010年の研究(5)では、カテゴリごとに99円という価格設定の効果が変わると発見されています。

 

  • 宣伝力が高く物が密集するようなカテゴリ:多くの購買者を引きつけた
  • 高級なカテゴリ:購買者はほとんど増えなかった

 

このように端数価格効果はプレミアムブランドほど弱く、売上損失につながる可能性も十分あります。一方で、安さを売りにしたブランドや新商品では、非常に効果的で売上の増加につながる可能性があります。

ただこれでは効果を大まかにしかわからないので、経営者が実践的に使えるようガッツリ調べまくった研究(6)が2012年に行われました。この研究では、99円の効果と経営者・研究者にとって重要な決定要因との関係を調査したものです。

 

  1. SKU(在庫管理単位)価格
  2. 市場シェア
  3. 市場の成熟度
  4. プライベートブランド
  5. 予算シェア
  6. カテゴリ価格
  7. 品揃え規模
  8. イノベーションレベル
  9. 差別化レベル
  10. 全体的な99の実践
  11. 顧客の年齢
  12. 顧客の学歴
  13. 働く女性の割合
  14. 所得
  15. 世帯規模

メモ

SKUとは、物流用語で、在庫管理を行う際の最小単位のことを言います。

 

上記のようにガッツリ調べられています。方法としては食品や日用品などの10カテゴリーにわたって行われました。対象は83店舗、399週間という長いスパンでした。

結果は以下のような感じ。

 

  • 売上はクラッカーを除いて、4.9%-23.7%の増加が見られた(クラッカーは0.02%とほぼ変化なし)
  • 効果は働く女性の割合や低学歴、高所得者が多い店舗ほど大きくなる
  • 年齢や世帯規模は影響なし
  • 低価格カテゴリは12.1%も売上を増加させた
  • 地域内に実施する店舗が多いと、効果が低下する(実施店舗が10%減少するだけで、売上は平均2%も増加)
  • 品揃えが10%増えると、9.8%も効果を失う
  • 価格が20%下がると、平均で19.3%影響が大きくなる
  • 市場シェアが10%上昇すると、効果は平均で9.8%減少する
  • 新商品は特に影響を受けやすく、平均6.2%も売上が増加した
  • プライベートブランドやナショナルブランドは影響なし

 

結果は99円の効果が条件によって変わってくるとはっきりわかりました。特に悪影響が出る例として市場シェアが高く、価格も高い上にロングセラーとなっているプレミアムブランドが挙げられます。何度も言うようですが、高級路線の商品やサービスでは99円は使わないのが無難です。

論文の著者は経営者のアドバイスとして以下のように述べています。

 

  • プレミアムブランドは売上高の損失につながる可能性があるため、慎重に対応すべきである。
  • 99円価格はシェアの低いブランドや価格の低いブランド、新規参入のブランド、低価格・低予算カテゴリーなどの低価格カテゴリーに属するブランドの売上拡大に効果があるように思われる。
  • 店頭で語尾「99」を熱心に行うと、効果が低くなる。カテゴリの売上はシミュレーションにより、過剰使用が逆効果となる閾値が存在することが明らかになった。
  • この効果は店舗の品揃えの規模に応じて減少します。店舗によるプロモーションの併用は大きな影響がない。
  • 店舗の価格政策が特別な役割を果たしており、低価格店では99円効果が大きいが、低価格店では99のみ(値下げなし)での実践が多い。
  • 小売業者は働く女性、高所得世帯、低学歴者が混在する地域の店舗では、ナインエンディングの実践をより重視し、その地域に合わせてナインエンディングの価格設定方針を適応させられる。

 

99円の効果は間違いなくあるようですが、条件によっては悪影響も出るので注意したいところ。

それではぜひ参考に。

 

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