イリノイ大学のセドリック・ヘリング氏の研究によると、企業の人種・性別の多様性は売上や顧客数、市場シェアと有意に正の相関があると発表されました。
職場の多様性が売上増加や顧客数に関係していた
この研究(1)は組織内の多様性がビジネス全体にどのような影響を与えるのかを調査したものです。多様性の定義は意外と曖昧ですが、ここでは人種や性別、民族、年齢、地理的位置、趣味趣向などあらゆる個人差を含んでいます。
データは1996年から97年までの506の営利事業組織のデータを使用しています。データの主な内容は以下のような感じ。
データの内容
- 人口統計
- 人種構成
- 売上
- 顧客数
- 市場シェア
- 収益性
- 人員配置
- 環境状況
- 生産性とパフォーマンス
また多様性を測定するためのアプローチとしてグローバル指標と個別指標に分けています。
指標
- グローバル指標:人種
- 個別指標:性別
多様性のレベルについては人種が「低:<10%」「中:10-24%」「高:25%<」で、性別が「低:<20%」「中:20-44%」「高:45%<」となっています。
結果は以下のような感じです。
人種 (低) |
人種 (中) |
人種 (高) |
性別 (低) |
性別 (中) |
性別 (高) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
割合 | 30 | 27 | 43 | 28 | 28 | 44 |
平均売上高(百万) | 51.9 | 383.8 | 761.3 | 45.2 | 299.4 | 644.3 |
平均顧客数(千人) | 22.7 | 30.0 | 35.0 | 20.5 | 27.1 | 36.1 |
平均市場シェア | 45 | 59 | 60 | 45 | 58 | 62 |
結果
- 人種・性別ともに多様性が高くなるにつれて、平均売上収益が増加
- 人種・性別ともに多様性が高くなるにつれて、顧客数が増加
- 人種・性別ともに多様性が高くなるにつれて、平均市場シェアが増加
- 多様性と売上は有意に正の相関があり、売上収益の変動の約6%を占める
- 多様性と顧客数は有意に正の相関があり、顧客数の変動の約4%を占める
- 人種の多様性と市場シェアは有意に正の相関があり、市場シェアの変動の約2%を占める
- 人種の多様性が1ユニット増加で売上は約9%増加し、性別の多様性が1ユニット増加で売上は3%増加する(合計すると売上増加の16.5%を占める)
結果は人種と性別の多様性が企業の収益増加につながると示されました。「多様性がチームを非生産的にする」という意見もありますが、明確に否定した結果です。
多様性が収益につながった理由として著者は以下のような見解を述べています。
第三の逆説的な見解は多様性が大きいほど、グループの対立が増え、業績が向上することを示唆しています。対立は志を同じくするグループに共通する簡単な解決策を超えることを強制します。多様性は異なるアイデアの争いや高い創造性、問題に対する優れた解決策につながります。
人種や性別の多様性が増加することで、違う意見がぶつかりあって優れた結果を生んだ可能性があるわけですね。否定派の人の中にはグループの結束力低下や離職率が増加するという意見もありますが、多様性はむしろ収益とポジティブに関連していました。
これは成長と革新が色々なバックグラウンドの人が協力して、違いを利用することに依存しているため、多様性は均質性よりもプラスの結果をもたらす可能性があるわけです。問題点としてコミュニケーションの違いやグループの対立は挙げられるものの、創造性やグループでの仕事において成果の質を高めるチャンスを増やします。
組織においては多様性が収益面に直結するというのは中々参考になりますね。