イノベーションは中小企業の業績に常に”有益”なのかというメタ分析

イノベーション

 

イェーナ大学の研究によると、中小企業のイノベーションと業績にポジティブな相関が確認されました。しかも、イノベーション志向はイノベーションによる成果よりも業績に強い影響があるという驚きの結果も出ています。

 

イノベーションは企業の業績にどこまで影響するのか?

この研究(1)はイノベーションが中小企業の業績にどこまで影響するのかを調査したメタ分析です。イノベーションを追求する中小企業にはいくつかのメリットが挙げられます。イノベーションがうまく行けば、一時的な独占を確立できますし、大企業よりも迅速に動くことができるので、長い期間の独占を獲得できます。

とはいえ、リスクもあるわけで、イノベーションがどこまで業績と結びついているかは議論が起きるところです。そんな中、イノベーションと中小企業の業績の関係を調査したメタ分析が行われました。

対象となったのは42件の実証研究で、合計サンプルは21,270社。企業の業績を測定する指標は以下のものが含まれています。

 

業績の指標

  1. 収益/利益ベース(ROAなど)
  2. 売上収益(ROSなど)
  3. 成長志向(売上成長や市場シェア成長)
  4. 財務パフォーマンス(時価総額など)

 

またイノベーションの指標も測定しています。

 

メモ

イノベーションに関しては「インプット」と「アウトプット」で、区別されることが多いです。イノベーションのインプットとは、イノベーションのための研究開発を言います。インプットの中でも、「内部」と「外部」に分類されています。内部は社内で研究開発を行うことで、外部はパートナーと強力してイノベーションを起こすことです。一方のアウトプットは特許や新サービス・製品の数を指します。言い換えれば、イノベーションの成果そのものです。

 

これらのイノベーションを測定するために、以下のような指標を使っています。

 

イノベーション指標

  1. イノベーション志向指標:イノベーション戦略
  2. インプット指標:研究開発に投入された資金や人材
  3. アウトプット指標:特許や新サービス・製品、製造工程の数

 

そして、結果は以下のような感じ。

 

結果

  • イノベーションは中小企業のパフォーマンスとポジティブな関係が示された(r = .133)
  • イノベーションの成果(アウトプット)のが研究開発の度合い(インプット)よりも業績に大きな影響を与えた
  • イノベーションの方向性(r = .196)がインプット(r = .099)・アウトプット(r = .143)よりも業績に著しく強い影響を与えた
  • 中小企業では内部への投資で恩恵を受け(r = .107)、外部では業績に影響を与えなかった(r = .001)
  • イノベーションは成熟企業(r = .069)よりもベンチャー(r = .206)の方が著しく高い相関を示した

 

結果は中小企業がイノベーション志向と活動の両方で、業績に影響すると示しています。つまり、一般的に初期に高い投資やリスクを意味するイノベーションは差別化や価格プレミアムのメリットの方がコストを上回っているということですね。

また面白いのは、イノベーション志向がインプットとアウトプットよりも大きな利益をあげるという点です。中小企業は製品開発に注力するよりも戦略的なイノベーション志向の方が重要ということになります。

この結果について著者は以下のように述べています。

 

この発見は市場に革新的な製品を提供することだけに集中するだけではイノベーションの潜在的な力を十分に活用していないことを示唆する。中小企業はイノベーション志向を発展させ、伝え、受け入れることで、より大きな利益を得ることができる。イノベーションに向けた組織の方向性は野心的な目標の策定や価値を生み出す分野への資源配分、刺激的で挑戦的な企業文化、組織のプロアクティブ、効果的なリスク分析とリスクテイキングにつながる。

 

また他にも、優れたパートナーの獲得や高度なスキルを持つ従業員の確保にもつながります。つまり、イノベーションにおける社内外の効果は直接的な効果を上回る可能性があるわけです。個人的にはイノベーションの成果を中心に考えていたので、この結果は驚きました。組織の方向性やパートナーからの目線がここまで業績に影響するとは。

しかし、注意点としてイノベーションが業績に影響するからといって、研究開発に力を入れるのは危険な傾向です。結果を見てもわかるように、中小企業はインプットよりもアウトプットに多くのリソースを捧げる方が多くのメリットがあります。つまり、イノベーションのメリットを受けたいなら、研究開発に力を注ぐよりも製品への転換に力を注ぐ必要があるわけです。

今回の結果をまとめておきます。

 

イノベーションの方針

  1. 研究開発よりも特許や製品化に力を注ぐべき
  2. 組織のイノベーション志向はイノベーションによる成果よりも重要
  3. 中小企業でも社内で研究開発するべき
  4. イノベーションは新しいベンチャーほど効果的
  5. アメリカのような個人主義レベルが高い国は中小企業のイノベーションによる利益が大幅に”少ない”

 

イノベーションと業績の関係はアメリカのような非常に個人主義的な国に拠点を置く企業で最も低く、アジア諸国を拠点にする企業において最大のプラスの影響がみられました。つまり、日本の中小企業がイノベーションを追求することはとても理にかなった方針ということです。

それではぜひ参考に。

 

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