狭いブランドと幅広いブランドの比較研究では、狭いブランドの方が新規参入者に抵抗し、ブランド拡張も評価されやすいという調査結果が発表されています。
ブランドの広さにおけるブランドパフォーマンスを調査した結果
この研究(1)は狭いブランド戦略と幅広いブランド戦略のどちらが良いパフォーマンスを発揮するか調査したものです。具体的には、狭いブランドの方が「新規参入者からの防御」や「ブランド拡張を通じてブランドの成長ができる」と考えたようです。
実験を見る前にブランド戦略についてざっくり解説します。この研究では狭いブランド戦略の方がパフォーマンスを発揮すると仮説がたてられていますが、ここでいうパフォーマンスとはブランドパフォーマンスのことです。
ブランドの広さにおけるブランドパフォーマンスの違いを説明できる変数が「ブランド連想」です。ブランド連想は消費者がブランドに対して関連付けている記憶のことですね。これには商品の特徴や感情、顧客像などが含まれます。
ブランドの広さは保護パフォーマンスに影響が出るのか?
研究では狭いブランドと幅広いブランドの保護ブランドパフォーマンスを比較しています。この研究では63人の学生を対象として以下の2つのブランド紹介を読んでもらいました。
グループ分け
- 既存シャンプーブランドZELL:良好なPH値を持つ
- 新しいシャンプーブランドSHIKA:良好なPH値を持つ・紫外線防止・耐久性に優れる
既存ブランドのシャンプーは1つのみブランド連想を設定し、新しいシャンプーブランドは3つのブランド連想を説明しています。その後フィラータスクという画面に表示された情報が「正」か「誤」かを回答するテストを行い、ブランドの問題もごちゃ混ぜにしました。
最後にブランド・エクイティスケールを測定して実験は終了です。結果は以下のような感じ。
結果
- 「良好なPHを持つ」は幅広いブランドよりも狭いブランドの方が著しく連想レベルが高かった
- 1つの関連付けを持つ狭いブランドがある時、新しい競合他社への評価は好ましくなかった
結果は関連付けの強さが保護ブランドのパフォーマンスにプラスの影響を与えると示されています。特にブランドが少ないブランド連想を持つ狭いブランド戦略の場合、幅広いブランドよりも思い浮かびやすいです。
またこの関連付けの強さはブランドの保護パフォーマンスに影響を与え、新しい競合他社が参入しても評価は高くなりません。この根本的なメカニズムについて著者は以下のように述べています。
この結果は狭いブランド戦略が広いブランド戦略よりも優れた保護パフォーマンスをもたらすと示しています。これらの予測の背後にある根本的な根拠は、強い関連性が記憶内でよりアクセスしやすいということです。
研究によると、連想ネットワークのサイズが大きくなるにつれて、個々の関連付けは相対的に低下します。つまり、関連付けは少ないほど、消費者のブランド連想は強固になるというわけですね。
ブランドの広さは成長パフォーマンスに影響するのか?
2つ目の実験では69人の学生を対象として実験1と同じ流れを行いました。違いは各ブランドには新製品カテゴリを拡張する計画があるという説明が追加された点です。具体的には最適なPH値で作られた日焼け止めに関する情報が加えられています。
その後、ブランド・エクイティスケールを測定して実験は終了です。結果は以下のような感じ。
結果
- 1と同様に「良好なPHを持つ」は幅広いブランドよりも狭いブランドの方が著しく連想レベルが高かった
- ブランド拡張は広いブランドより(3.22)も狭いブランド(3.97)の方が高い評価を得た
結果は狭いブランドの方が幅広いブランドよりも成長シナリオで優れたパフォーマンスを発揮すると示されました。具体的には強い関連付けを持つブランドは弱い関連付けしか持たないブランドよりも拡張に成功する可能性が大きくなります。
幅広いブランド戦略だと関連付けの強度が小さくなる傾向があるので、狭いブランド戦略の方がブランド拡張に向いているということですね。もっといえば、狭いブランド戦略はブランドの成長パフォーマンスも増加させやすいと言えます。
著者は今回の研究結果について以下のように述べています。
現在の調査では、マネージャーはブランド化の取り組みにおいて多くの関連性を作成するのではなく、少数のブランド関連性の強化に集中すべきであることが示されています。本質的に、この論文は狭いブランド戦略が幅広いブランド戦略よりも良い選択であることを示しています。ブランドマネージャーは消費者が狭くて一貫性のある連想ネットワークを確実に認識できるように努めると、ブランドパフォーマンスの向上から利益を得られるはずです。
ブランディングに関して言えば、連想できる数が多いより少数でも強力な連想ができる方が優れているようですね。特にブランドの成功において「一貫性」と「強い連想」が重要な要素となっています。今後ブランドの取り組みをするなら、一貫することと集中することで、長期的なブランドマネジメントをしていきたいですね。
それではぜひ参考に。