ブランディングの科学まとめ

ブランディングの科学

 

このページでは、ブランディングの科学についてまとめています。

 

ブランディングの基礎用語

市場浸透率

市場浸透率とは、特定の市場の中で、特定期間に一度でもブランドを購入したことのある人の割合のことです。

 

市場占有率

市場占有率とは、特定の市場の中で、あるブランドがどのくらいの割合を占めているかを示す割合のことです。いわゆる市場シェアのことを言います。

 

メンタルアベイラビリティ(認知の量と質)

メンタルアベイラビリティとは、消費者のブランドに関わるすべての記憶のことです。ブランドロゴやパッケージの形、ブランドカラーなどのブランド構成要素から、なぜ・いつ・どこで誰と・何と一緒に買う・使うのかというようなブランドオケージョンの記憶を言います。このようなブランド記憶が多い、かつ新鮮であるほど購買シーンでブランドを想起する確率が高まります。

 

フィジカルアベイラビリティ(配荷の量と質)

フィジカルアベイラビリティとは、多くの消費者に幅広い購入機会が提供されている状態のことです。ただし、単に100%どの店にも配荷されているだけではなく、棚の位置やフェース数、山積みを獲得し、ECサイトでは上位に表示されているなどが重要です。消費者がブランドを購入する瞬間に、常に競合よりも購入されやすい状態であることが問われます。

 

ダブルジョパディの法則

ダブルジョパディの法則とは、マーケットシェアが購買客数やブランドロイヤルティと比例するという法則です。ちなみに日本語では二重の危機という意味です。

マーケットシェアが低いブランドは購買客数も少なく、ロイヤルティも低い傾向があります。一方で、シェアの大きなブランドは購買客数も多く、ロイヤルティが高い傾向が見られます。つまり、マーケットシェアの大きさに応じて、浸透率とトライアル指標は大きく変化し、リピート率や購買回数などのロイヤルティ指標は緩やかに変化する法則なのです。通常、2つとも直線的な相関関係が見られ、ほぼすべてのブランドが当てはまります。

 

マーケットシェアを伸ばして売上を高める

売上が大きければ顧客が多いのは当然のように感じますが、実際にはそうではありません。「購買客数」と「購買頻度」の2つの要因を積算したものが売上になります。理論上は購買頻度が高ければ、購買客の数が少なくてもブランドを成長させることは可能です。

 

ブランドA:年間市場浸透率32%×年間購買回数3回=市場占有率14%

ブランドB:年間市場浸透率16%×年間購買回数6回=市場占有率14%

 

しかし、実際にはこのような状況を起こりません。現実のデータは同じマーケットシェアを持つブランドは市場浸透率がほぼ同等なので、その平均購入回数もほぼ同じになるはずです。

 

市場占有率(%) 年間市場浸透率(%) 購買頻度(回)
パーシル 22 41 3.9
アリエール 14 26 3.9
ボールド 10 19 3.8
ダズ 9 17 3.7
サーフ 8 17 3.4

 

この表を見ると、市場占有率が大きく異なるブランドは平均購入回数にそれほど差がなくても、市場浸透率が大きく異なることが示されています。またこの現象は他の市場でも同様に見られています。共通しているのは、大きなブランドほど市場浸透率が高く、大差はないものの購買頻度もやや高くなるということです。逆に言えば、売上が低いのはブランドの購買客数が少ない上に、購買頻度も低いという二重苦を背負っているからです。

1995年に行われた広告効果測定のメタ分析(1※主張の内容を確認できず)によると、売上拡大に関連する戦略上の変数は「市場浸透率を伸ばす」の1つだけだったと発表されています。また2007年に発行されたペーパーバッグ(2)によれば、IPAの広告効果賞を受賞した作品は市場浸透率を狙った広告が多くありました。この賞にエントリーされた広告は880本で、そのすべてを分析した結果です。

 

市場浸透率(%) ロイヤルティ(%)
金賞 22 41
銀賞 14 26
銅賞 10 19
なし 9 17

 

結果

  • 市場浸透率の上昇を狙った広告は他の広告と比較すると、2倍の割合で売上と利益を含むすべての広告効果測定基準が大きく改善した
  • 参加した広告のうち市場浸透率の増加を目標にしていたのは、ブランドのロイヤルティ/顧客維持を目標にしていた広告のわずか半分だった

 

上記の結果から、ダブルジョパティの法則を利用するため、市場浸透率を重視するのが良いとわかります。

 

クロスセルの科学

売上を伸ばす方法として定番な方法がクロスセルです。クロスセルとは、既存のお客さんに別製品も同時に売る方法のことです。すでにお客さんとの間に関係を構築していて、良い提案ができるのであれば、購入される可能性は十分にあります。しかし、データではブランド間でお客さんが購入する商品数はほとんど違いがありません。

 

市場占有率(%) 顧客が加入する商品
RAA  16  1.5
 CGU  14  1.4
 SGIC  13  1.5
 AAMI  9  1.5
 APIA  6  1.4

※オーストラリアの保険会社のクロスセリング指数

 

このようにブランド間の差異はほとんどなく、実際は一部の市場の稀な成功によるものです。とはいえ、クロスセルが不可能というわけではありません。ただ教科書に書いてあるほど簡単なものでも、売上倍増の近道ではないのです。特に注意したいのはクロスセリング指数を劇的に改善するのは困難であり、多額の費用を伴うことが予想されます。

 

リテンションダブルジョパディの法則

リテンションダブルジョパディの法則とは、顧客の損失もマーケットシェアと比例するという法則です。マーケットシェアの大きいブランドほど多くの顧客数を失いますが、顧客離反率は小さくなる傾向が見られています。

 

既存顧客の維持は低コスト?

定説では、「顧客維持は新規顧客獲得よりも低コストで実施可能である」と言われています。しかし、これを実証する経験的なデータは存在していません。実際には離反率を永久に下げることは現実的に困難で高い費用を伴います。というのも、ロイヤルティ指標の1つである離反率もダブルジョパディの法則に従うからです。

例えば、ある市場に2つしかブランドが存在していない場合を考えます。

 

ブランドスイッチ

 

大きいブランドが80%のシェア、小さいブランドが20%のシェアです。どちらのブランドもシェアが変動しないとすれば、両ブランドの顧客離反率と顧客獲得率は同じになるはずです。ここでは仮定として、大きいブランドが毎年100人の顧客を失い、同数の顧客を獲得しているとします。そうすると、小さいブランドも100人の顧客を失い、同じ数の顧客を獲得していることになります。しかし、顧客離反率で見ると、大きいブランドが12.5%(100÷800)に対して、小さいブランドが50%(100÷200)です。

現実には2つ以上のブランドがあり、市場シェアが変化していますが、根本的な仕組みは同じです。つまり、マーケットシェアを変えずに顧客離反率を変えることは不可能なのです。

 

市場占有率(%) 顧客離反率(%)
ポンティアック  9  58
 ダッジ  8  58
 シボレー  8  71
 ビュイック  7  59
 フォード  6  71
 トヨタ  6 70
 オールズモビル  5 66
 マーキュリー  5 72
 ホンダ  4  71

※アメリカの車ブランドの顧客離反率1989-91年

 

上記はアメリカの車ブランドの顧客離反率の表です。市場占有率が高いブランドほど、顧客離反率が低い傾向が見て取れます。ちなみにこれは別の市場でも同じ傾向が確認できます。つまり、小さいブランドほど、顧客離反率が低く、さらに言えばロイヤルティも低い傾向があるということです。これらの大手企業はCRMやロイヤルティプログラムに莫大な投資をしているはずですが、どのブランドも簡単に改善できていません。

ちなみに車業界は顧客離反率がかなり高い業界です。一般的には3-5%というのが平均的で、顧客離反率ゼロに抑えられたとしても、その増収はわずか数%です。言い換えれば、あらゆる市場で新規顧客獲得が売上を伸ばす可能性は、顧客離反を防ぐことよりも圧倒的に大きいといえます。

 

パレートの法則(60/20)

パレートの法則とは、ブランドの売上の「半分強」が上位顧客20%によってもたらされ、残りの「半分」が下位顧客80%によってもたらされるという法則です。一般的には売上の80%が上位顧客20%によってもたらされると言われていますが、現実のデータでは確認できません。

 

ライトユーザーが重要となる

すべてのブランドが多くのライトユーザーを抱えています。一般的にはブランドを購入する機会が少ないライトユーザーは軽視されがちです。しかし、実際のデータでは人数が多く、売上に大きく貢献していることがわかります。

 

イギリスのコーラ

引用元:How Brands Grow

 

この表はTNSというイギリスの市場調査会社の購買パネルデータを元に作成されたものです。コカ・コーラ購入者は年間平均で12回購入しています。注意したいのは購買頻度は傾斜分布になっているため、実際には年間1000回以上購入している人もいるという点です。つまり、超ヘビーユーザーとライトユーザーの間のバランスを修正する必要があるわけです。

典型的なコカ・コーラ購入者は1年間に1,2回しか購入していませんでした。これはコカコーラ購入者の半分に相当します。年間平均は12回ですが、典型的な購入者とは言えないのです。ちなみに購買頻度の分布はペプシでも同じような傾向が確認できます。このように多くの場合、ブランド購入者の大部分はごく稀にしか購入しないライトユーザーです。ライトユーザーが多くいる理由は、そもそもそのカテゴリ自体での購入頻度が少なく、さらに他のブランドも購入しているからです。

ヘビーユーザーに製品を売ることは比較的簡単です。なぜなら、ヘビーユーザーが新しい広告を目にしたり、パッケージの変更に気づいたりする機会は多いからです。ブランド広告に対する感受性も高いため、誰よりも広告が目に入り、理解力も高く、記憶にも残ります。逆に言うと、コカ・コーラを1日3本を飲む人は習慣から抜け出すのが難しく、中毒気味とも言えます。こういう人はそもそも購買行動が広告に左右されず、購買行動が増えることも減ることもありません。

一方でライトユーザーこそマーケターが日々対峙しているお客さんです。個々の購入を促すことは困難ですが、売上に重要な貢献をしており、ブランド成長の大きな可能性を秘めています。

 

ポイント

  1. ライトユーザーが顧客の大部分を占めている
  2. ライトユーザーが購買行動を起こすことは少なく、自社ブランドもすぐに忘れてしまう

 

パレートの法則に対する正しい理解

パレートの法則の80/20の法則は正しいですが、実際の比率はここまで極端ではありません。売上は最も購買頻度の高い上位20%の購買客によってもたらされるという事実が「顧客がヘビーユーザーとライトユーザーで二極化している」というのをよく表しています。コカ・コーラの例でも、年間数回しか買わない群と買うことが習慣になっている群がいました。

 

市場占有率 上位20%による売上の割合(3ヶ月) 上位20%による売上の割合(12ヶ月)
 シュア 16 42 53
 リンクス 14 41 53
 オールアザーズ 14 40 51
 インパルス 8 45 55
 ソフト&ジェントル 7 39 52
 ライトガード 7 39 51
 ダブ 6 36 48
 テスコ 4 43 53
 ヴァセリン 3 39 51
 アスダ 3 42 54
 アディダス 3 35 45
 ジレット製品 3 39 50
 アザーブランド 3 39 49
 フィジオスポーツ 2 37 50
 サネックス 2 35 45

※ボディスプレー/デオドラントカテゴリのパレートシェア

 

上記の表を見ると、同じカテゴリ内のブランドはほぼ同じパレートシェアを持つことが確認できます。またアメリカの製品カテゴリ別に見るブランドのパレートシェアでは、どの市場でも同じようなパレートシェアを持つことがわかります。

 

ヘビーユーザーの売上割合
 ドッグフードモイスト 56
 ドッグフードウェット 65
 キャットフードウェット 64
 冷凍ヨーグルト 60
 クリームリンスとコンディショナー 47
 キャットフードドライ 56
 液体柔軟剤 51
 ドッグフードドライ 54
 デオドラントエアゾール 48
 デオドラントコロン 48
 洗剤 軽い汚れ用 49
 キャットフードモイスト 46
 シャンプー 42
 朝食用シリアル 54
 食洗機用洗剤 45
 缶詰スープ 53
 ソフトドリンク 64

 

この表を見ると、大体45-60%の割合がヘビーユーザーの売上ということがわかります。逆に言えば、ライトユーザーも約50%の売上をもたらしているということなので、無視するわけにはいきません。

 

購買行動適正化の法則

購買行動適正化の法則とは、ある一定期間中にロイヤル顧客だった消費者の購買量がその後、減少するという法則です。一般顧客の購買量は増え、未購買顧客が顧客になることもあります。この平均への回帰現象は購買客の行動が実際に変化しなくても生じます。

 

ライトユーザーは予想よりもヘビーユーザーという事例

ユーザーの購買行動を追うと、ライトユーザーは想像よりもヘビーユーザーであり、ヘビーユーザーは想像よりもライトユーザーとわかります。アメリカのトマトソースブランドを2年間かけて行った分析では、売上の14%が前年に一度も購入していないノンユーザーで、ヘビーユーザーは前年の43%から34%に低下していました。

 

サンプル数(%) 1年目の売上割合(%) 2年目の売上割合(%)
全く買わない(0回) 44 0 14
ライトユーザー(1回) 22 14 16
平均ユーザー(2-4回) 25 43 36
ヘビーユーザー(5回以上) 9 43 34

 

このようにライトユーザーがヘビーユーザーに変化し、ヘビーユーザーはライトユーザーに変化します。ただこれは平均的な状態への回帰です。この法則は購買行動適正化の法則といって、すべてのブランドに適応し、既知の購買頻度の分布から将来を正確に予想できます。

このような法則が起こるのは、個々の消費者の購買行動のタイミングに差が生じているからです。消費者がブランドを1回しか買わない年もあれば、2回買う年もあります。つまり、本来はヘビーユーザーなのに、ライトユーザーと分類されることもありますし、その逆も然りということです。この減少は主に1年未満の短期の調査期間で悪化する傾向があります。

 

購入頻度は負の二項分布に従う

コーラ購入者の購買頻度の図は他のブランド・カテゴリでも同じ傾向が見られます。つまり、数学的特性は共通しているのです。このタイプの分布は「負の二項分布(NBD)」と言われています。ダブルジョパティの法則では、シェアの大きいブランドはシェアの小さいブランドと比較して、市場浸透率が非常に大きいと解説しました。しかし、購買頻度に関しては大きなブランドでもわずかに高いだけでした。またブランドが成長・衰退するときも、市場浸透率が変動しますが、購買頻度はほぼ変わりません。

これは購買率分布の負の二項分布が偏っているからです。ブランドは成長しながら、多くのライトユーザーを取り込みます。ライトユーザーは成長すると、分析期間中に少なくとも1回以上購入するようになります。そして、ライトユーザーが市場浸透率指数に影響を与えます。ヘビーユーザーも多くがさらに頻繁な購買行動を起こすようになりますが、平均購買率は全体的には変わりません。つまり、負の二項分布はダブルジョパティの法則が成立していることを示しているのです。

通常、マーケティングが成功して、売上やマーケットシェアが伸びている時、ブランドは今まで以上に多くのヘビーユーザーを獲得し、それ以上に多くのライトユーザーを獲得します。ブランドの成長を継続的に維持していくためには、マーケティング戦略が最終的にそのカテゴリ全体の消費者に到達しなければならないことを示しています。マーケティングが消費者にリーチする範囲が広くなればなるほど、成功の可能性が高くなるので、ライトユーザーとノンユーザーにリーチできたときに最も成功するわけです。逆にターゲットをヘビーユーザーに絞ることは悪手で、売上が伸びる可能性は低いです。

 

ポイント

  1. ブランドの成長と維持には、顧客の獲得が極めて重要である
  2. すべての消費者層、特にライトユーザーにリーチすることが極めて重要である

 

 

自然独占の法則

自然独占の法則とは、マーケットシェアが大きいブランドほど、カテゴリー内の多くのライトユーザーが購入するという法則です。カテゴリー内で頻繁に購入しない消費者は大きなブランドを好んで購入する傾向があります。

 

ブランド・ロイヤルティの性質

1964年に行われた研究によると、消費者はブランドに対して自然にロイヤルティを構築する傾向があるとわかりました。実験は市販で売られているパンをオーブンで焼いて、12日間毎日42人の女性に渡すという内容でした。パンはすべて同じ種類ですが、各々包装をして「L」「M」「P」「H」というラベルを貼りました。

全く同じパンでしたが、どの女性にも好きなブランド(ラベル)のパンができたのです。この実験の結論は、ブランドロイヤルティは些細な差別化でも育つということです。実験はやや人為的な部分もありましたが、消費者は理由はともあれロイヤルティ的行動を好む傾向があるとわかりました。どの市場にもブランドロイヤルティが存在していることを裏付けているわけです。

しかし、ブランドロイヤルティを独占するのは不可能です。人は複数のブランドを購入することがあります。購入機会が多ければ多いほど、人は多くのブランドを購入します。下記は各カテゴリごとの市場シェアと100%ロイヤル購買者を比較した表です。

 

 年間平均購買率 ブランド 市場シェア 100%ロイヤル購買者
 鎮痛剤(5.1%/年) テスコ  22 37
 ニューロフェイン  8  28
 ブーツ  3  26
 パナドール  2  29
 デオドラント(5.6%/年)  リンクス  17  21
ダブ  7 17
 テスコ  4  14
 ニベア  2  10
ポテチ(17.5%/年)  ウォーカーズ  68  37
 KP  7  6
ケトルフーズ  1 10
シリアル(21.5%/年) ケロッグ  29  7
 シリアルパートナーズ  17  2
 ウィートビックス  9  2
 ヨーグルト(29.7%/年)  ミュラー  24  7
ミュラーライト  14 4
 スキー  4  2
 ダノン  3  2

 

上記の表を見ると、ロイヤルティ指数から、ダブルジョパティの法則が成立していることがわかります。つまり、小さいブランドほど100%ロイヤルティを持つ顧客が少ないです。

また購買頻度が低いカテゴリほど、100%のロイヤルティを持つ消費者の割合が高くなっていることがわかります。表では鎮痛剤やデオドラントの100%ロイヤルティ購買者の割合が大きいです。これは傾斜分布における平均購買率になっているため、実際には全世帯の半数以上で購入回数は1回のみなのです。つまり、購入回数が一度だけなので、購入したブランドも1つのみということです。

一方で、時間の経過とともに購入回数が増えると、100%のロイヤルティから劇的に減少します。シリアルやヨーグルトの事例は頻繁に購入されるため、100%ブランドロイルティを持つ消費者の数が少ないのです。

 

自然独占の法則について

ブランドは大きくなるほど、顧客基盤にライトユーザーが占める割合が大きくなる傾向があります。例えば、1年に1回ソフトドリンクを購入するとしたら、コカコーラである確率が高いです。これは単純な理由で、カテゴリ商品の購入頻度が低いユーザーほど、大きなブランドを好むからです。

 

市場占有率(%)  市場浸透率 当該ブランドの購買頻度 当該ブランドの購買頻度
 ハインツ 53 50 2.9 4
 ダディズソース 4 5 2 6
 C&Bソース 1 2 1.2 8

 

上記の表では年間のトマトソースの購入回数がハインツの購入者は年間4回で、C&Bは年間8回です。つまり、小さいブランドの方がヘビーユーザーの購入が確認できます。これはカテゴリヘビーユーザーほど多くのブランドを購入していて、小さいブランドはライトユーザーよりもヘビーユーザーが購入していることが多いため、上記のような傾向が確認できるわけです。ロイヤルティは購入回数に左右されます。極端に言えば、カテゴリの購入回数が少ないほど、ロイヤルティを失う可能性は低くなります。

 

ブランドの熱狂的な支持者について

ブランドに100%のロイヤルティを持つ消費者のほとんどがライトユーザーですが、中にはブランドを定期購入している人や熱狂的に支持する人もいます。例えば、アップルやハーレーダビッドソンのようなブランドは感情ベースのブランドロイヤルティが構築されています。一部のアメリカ人は以下のように発言するほどです。

 

マッキントッシュほど熱狂的支持を獲得した商品はこの地球上に存在しないだろう。多くのアップルファンにとってマックはすっかり生活の一部となった。

 

日本でもスマホ市場におけるiPhoneのシェアはかなり高いので、頷けるところです。

ただデータでは他のブランドと同様に、両ブランドの顧客は他の多くのブランドに対してもロイヤルティが高いです。ハーレーダビッドソンの調査期間中に当該ブランドを1回以上購入した家庭の割合は約33%と報告されています。逆に言えば、ハーレーダビッドソンの購買客は他のブランドのバイクを2倍の頻度で購入したということです。ロイヤルティの指数としては並です。同様にアップルのリピート率も100%を大きく下回っていて、競合他社と比べて大きな違いはありません。

 

リピート率
 デル  71
 アップル  55
 HP  52
 ゲートウェイ  52

 

ただし、ダブルジョパディの法則を考慮すると、アップルのリピート率はやや高いです。この理由はアップル製品から他社製品に買い換えると、アップルユーザーはOSごと捨ててソフトウェアを交換する必要があるからだと考えられます。逆にデルやHPは他のブランドへの変更はOSやソフトウェアを変える必要がないので、乗り換えも簡単です。

この要因だけで、アップルのロイヤルティの優位性を充分に説明することができ、熱狂的なコミットメントの影響はほとんど考えられません。もちろん、熱狂的なブランド支持者がいないというわけではありませんが、実態は少数派で、数が競合他社ブランドと比べて大きく勝っているわけではありません。これらの支持層は小規模なので、全体の売上にもほとんど貢献していません。

また「口コミによる宣伝効果がある」という意見もあります。これも熱狂支持者層の人数が少ないため、ライトユーザーほど影響が小さいと考えられます。さらに言えば、古残の顧客よりも新規顧客の方がブランドについて語る傾向が確認されています。昔から知っている顧客にとっては、ブランドはニュースにはなりづらいのです。ブランドロイヤルティと口コミの投稿との間に、強い関連性は存在しません。

 

顧客基盤類似の法則

顧客基盤類似の法則とは、競合ブランドの顧客基盤と自社ブランドの顧客基盤は非常に類似しているという法則です。

 

自社ブランドのお客さんは他社とどれほど違うのか?

一般的なマーケティングでは、特定の消費者の特定の使用機会を想定して差別化されたブランドを売る、というのが常識です。そのため、ブランドマネージャーにとって、「どのような人が自社ブランドを買っているのか」というのが非常に重要となります。

イギリスの車ブランドの顧客基盤を調査した研究では、購入者の人口統計学的特徴や心理学的特徴、消費者意識、価値観、メディアの嗜好などは大体同じと判明しました。

 

男性 女性 1-2人世帯 2人以上世帯 サン新聞 テレグラフ新聞
 ローバー 52 48 40 24 20 9
 エスコート 50 50 34 27 26 5
 シエラ 50 50 25 34 28 4
 キャバリエ 51 49 29 33 24 6
 平均 51 49 31 30 25 6
乱雑な状態を我慢できない 技術の進歩について行けてる 所有する車で人を判断する 車が唯一の移動手段である
ローバー 16 11 1 18
エスコート 19 9 3 21
シエラ 17 9 3 17
キャバリエ 17 10 2 17
平均 18 10 2 18

 

上記の表は1990年代におけるイギリス車ブランドの人工統計学的特徴と心理学的特徴です。各ブランド間で大きな違いはなく、同じパターンを示しています。他の市場でも、ブランドの顧客プロファイルは非常に似ています。クレジットカード会社では男女比率は半々で共通していることがわかりますし、年代別でも似た傾向が確認できます。これらの事例はマーケターが特定の顧客層をターゲットに注力しても、マーケットシェアの獲得に成功していない限り、ごく普通の顧客層しか獲得できないことを示しています。定義上、マーケットシェアが増大すれば、顧客層はより平均に近づきます。

同じカテゴリ内のブランドの顧客基盤が非常に類似しているという事実は大きな発見です。市場調査の結果、自社ブランドが競合ブランドと異なる顧客層をターゲットにしているとわかった場合、マーケターは「広告のターゲティングが原因だ」と言いがちです。しかし、これは間違っています。「なぜ?」と問う姿勢が大切です。

 

  • マーケティング戦略のどこが間違っていたのか?
  • 見落とした消費者がいたのはなぜか?

 

ブランドが特定の消費者層にしかアピールしないというのは間違いです。自社ブランドがカテゴリの平均的な顧客像からズレが見られるときは注意する必要があります。問題はこのような偏りに即したマーケティング戦略を実行するべきか、カテゴリの平均像を重視するべきかを考えましょう。通常であれば、後者を選ぶべきです。

顧客基盤の類似は多くのマーケターにとって、奇妙に感じられるかもしれません。マーケティングの教科書には、ブランドは差別化されて、特定のセグメント化された顧客層を対象にしていると教えています。よって、他のブランドも異なるセグメントの消費者に売れるものだと思いこんでいました。実際には競合ブランドの顧客基盤は自社ブランドと類似しているので、将来的には自社ブランドの顧客となる可能性を秘めています。

 

ブランドに対する態度と想いが行動的ロイヤリティに反映される

消費者は自分が使用しているブランドほど知識が豊富で多くを語るが、使用しないブランドについては考えることも語ることも少ないです。つまり、ブランドに対する態度を評価する調査を実施すると、大きいブランドはロイヤルティの高いユーザーを多く含むので常にスコアが高い傾向があります。言い換えれば、購買行動はブランドの理解や認知、態度の強力な推進力です。人のブランドに対する態度は、人がそのブランドをどの程度購入しているかに反映されます。

いわゆるブランド・ロイヤルティです。しかし、ブランドロイヤルティはブランド間でそれほど大きく変わらないことはすでに判明しています。つまり、ブランドAの購入者がブランドAを想う気持ちは、ブランドBの購入者がブランドBを想う気持ちと同じなのです。

 

プロトタイプの法則

プロトタイプの法則とは、製品カテゴリを的確に説明するイメージ属性はそうでない属性と比較して、評価が高い法則のことです。

 

ブランド「独自」のイメージは存在するのか?

ブランドが市場において際立った存在であるかを理解するためには、ダブルジョパティによる要因は除外して考えなければなりません。大きなブランドほど購買客も多くなるので、ブランドイメージの得点も上がりやすいです。しかし、要因がいったん取り除かれると、ブランド独自のイメージを示すものがなくなってしまうのはあまり知られていません。

 

信頼できる ムダがない  親しみやすさ 相性が良い 問題解決  革新的  必要不可欠
 フェデックス 95 94 84 79 69 60 39
 A社 96 95 85 81 72 63 37
 ノキア 96 83 75 67 65 89 22
 B社 97 87 82 76 75 47 32
 C社 94 78 72 70 75 54 46
 オラクル 93 83 73 53 60 85 19
 D社 94 90 85 58 81 66 23

 

上記の表はブランドを特定のイメージに関連付ける回答者の割合を示しています。マーティン・コリンズ教授が規則性に支配されるパターンを知っていれば、全体像が見えるようになることを示しました。

 

結果

  • 他の属性よりも常に高いスコアを示す属性がある:「必要不可欠」は30%前後だが、「信頼できる」は90%前後ある
  • すべてのブランドが同じようなスコアを獲得しており、ややダブルジョパティに近い傾向が見られる:小さいブランドほどスコアも低くなる

 

どのブランドもそのブランドを知っている人には同じように見えています。一度パターンが分かれば、後は例外を探すのは簡単です。例えば、ノキアとオラクルは革新的ブランドとして見られています。これはテクノロジー関連のブランドで、想定内なので特に興味深くはありません。ただ競合ブランドとの差別化ができていないブランドがあるという意味ではないです。明確に差別化されていれば、機能的に優れた側面があるはずという意味です。イメージ調査は現在でも行われていますが、決定力に長けているわけでもなく、不可解さが残るわけでもありません。

 

個性的な連想は必要か?

ブランドが消費者の中で真に差別化された存在であれば、成功しているブランドが持つイメージ属性は個性的だと期待されます。ブランドエクイティは、消費者がブランドに抱く強力で個性的な連想上にあると考えられてきました。しかし、13の製品とサービスの130種類のブランドイメージを調査した研究(1※Gailard&Romaniuk)によると、ブランドに特定のイメージを連想していたのはわずか3%でした。

成功したブランドであるほど個性的な連想を持たず、ブランドに対する選好度が高い消費者ほど、そうでない消費者と比較すると、連想は個性に欠けていました。逆にブランドの個性の強さはカテゴリ内のブランド数と反比例の関係にあるとわかりました。つまり、ブランドが特有の個性を持つ唯一のブランドとして認識されやすいのは、競合相手が少ない場合ということです。

 

差別化の実際

多くのマーケティングの教科書は、「ブランドの差別化をすることで消費者の購入を促し、ブランドロイヤルティの構築につながる」と言います。マーケティングの文献には、ブランドの差別化ポイントは顧客によって認識されて評価されなければならないと明記されています。他にも、消費者に注目され評価されている限り、ブランドの差別化は現実的には無意味な製品特徴に基づいていてもよいと言う人もいます。

多くの評論家が言うように、消費者の認識こそが現実です。ただし、色々な研究が行われているものの、差別化についてはほとんど解明されていません。

 

  • ブランドの差別化ポイントはどの程度認識されているべきか?
  • ブランドが反復購入されるためには、消費者が差別化のポイントを理解できなければならないか?
  • 競合ブランドと比べて明快に差別化が確立されているブランドが存在するか?そのブランドを買った人のロイヤルティは高いと言えるか?ブランドは利益をもたらしているか?そのブランドの成長は早いか?

 

マーケティングの教科書は差別化の重要性を説明していますが、これらの疑問に答えられるだけのエビデンスは提示できていません。

 

ブランディングの科学から見る差別化

差別化とロイヤルティ

差別化の重要性について考える時、最初の疑問点は差別化による顧客ロイヤルティですが、競合ブランド間のロイヤルティに大差はないです。これはダブルジョパティの法則で見たように、購買頻度やクロスセルの数値に違いはほぼありませんでした。ロイヤルティは存在しますが、差別化によって生まれるわけではなく、消費者の行動特性でしかありません。

 

差別化と顧客基盤

ブランド自体が大きく差別化されているとすれば、差別化ポイントに価値を感じる消費者の心を掴んでいるのが自然です。しかし、顧客基盤の類似で見たように、どのブランドのユーザープロファイルにも大差はなく、同じカテゴリ内で競合するブランドは同じ消費者を相手にしているのが現状です。

 

差別化とニッチ市場

差別化の理論から言えば、多くのサブマーケットが存在していると考えられます。特に差別化が高度になれば、ニッチな市場となり、ほかブランドと共有する顧客は少なくなると考えられるわけです。しかし、購買重複の法則では、ブランドがマーケットシェアの相対的な割合にしたがってお互いの顧客を共有し合うことと、市場の細分化はそれほど大きくないことを示しています。

 

差別化と価格弾力性

ブランドの差別化に違いがあれば、価格弾力性にも相違があるはずです。なぜなら、差別化の進んだブランドを好む顧客は価格に対して敏感ではないからです。しかし、価格弾力性は価格変動の影響を受けて変化します。

 

差別化とNBDディリクレ

NBDディリクレモデルがあることから、消費者は多様化しているにも関わらず、ブランドは差別化が進まないまま競合していることが推測されます。どのカテゴリにも価格と品質が違うブランドは存在しますし、高価格帯ブランドが購買重複の法則とNBDディリクレモデルから外れる場合も確認されています。しかし、この現象が頻繁に見られないことから、差別化のレベルが極めて小さいことを示しています。

 

このようにエビデンスから、多くのマーケティングの教科書で説明されているような差別化を支持しません。差別化は存在していますが、ブランドの問題というよりもカテゴリの問題であることを示しています。

 

差別化はどのように認識されているか?

イギリスのソフトドリンクカテゴリのユーザー認識調査では、約10%の消費者が自分の利用しているブランドは差別化されていると回答しました。

 

他のブランドと異なる(%) 他のブランドには見られない(%) そのいずれか(%)
 コカ・コーラ  8 13 19
 ダイエットコーラ  9  8  15
 ペプシ  7  10  15
 ファンタ  8  5  12
 ペプシマックス  9  10  19
 シュウェップス  6 9  13
 カナダドライ  10  9  17

 

他にも色々な市場を対象に調査が行われましたが、約10%前後の消費者が自分のブランドは差別化されていると回答しました。系統的な調査によると、信頼性の高い以下の2つのパターンが特定されています。

 

  • 消費者はブランドの非常に小さな違いでも認識している。とはいえ、高いロイヤルティを抱いているブランドを買うことを止めるほどではない
  • 消費者がブランドと競合ブランドとの間に認識する違いはほぼ同じである

 

ただ小規模で高価格帯のブランドは一貫して高い回答率を示す傾向も確認されています。ただし、それは差別化が進むほど、ブランドは小規模になるという概念と一致しています。基本的に、ブランドの差別化を認識していたかどうかは消費者自身が明確に述べることはありません。したがって、差別化を認識することで、消費者が購買行動に駆り立てられているかどうかは疑わしいです。消費者がブランドを購入する、または購入し続けるために差別化は不要といえます。

ちなみにカテゴリ間におけるユーザー認識の比較もあります。

 

差別化されている(%) ユニークである(%) そのいずれか(%)
 酒類  20  27  36
 スーパー  25  21  31
 スキンケア製品  17  21  30
 アイス  14  11  20
 ファーストフード  16  13  20
 銀行  13  10  18
 ソフトドリンク  11  9  18
 調味料  10  9  17
 野菜ジュース  11  8  16
 ソース  9  7  14
 情報技術  9  10  14
 スープ  8  5  12
 ヨーグルト  8  5  11
 車  9  6  11
 水  6  6  10
 電気  4  6  8
 平均  11  10  17

 

平均は10%前後ではあるものの、カテゴリによっては5-20%前後になります。しかし、全体的に見れば、差別化を感じている消費者は広く市場を見ても、少数派ということがわかりました。多くのマーケティングの教科書では、ブランドの差別化ポイントを消費者が理解できるよう提示するようアドバイスしています。しかし、大成功しているブランドでも達成できていません。このことから、ブランドの成功と差別化はほとんど関係ないと結論付けられます。

つまり、マーケターは製品の差をお客さんが買い物をする前に納得させる必要はないということです。データからは製品の差を認知させることは不可能に近いということがわかっています。むしろ、マーケターは消費者の商品購入を促進するシステム構築に目を向けるべきです。近年では、既存の差別化理論よりも、「ブランドの認知度」と「卓越したブランド特性」がブランドの競合に大きな影響を及ぼすことが判明しています。

 

独自性というもう1つの視点

ブランドロイヤルティは消費者の好き嫌いではなく、卓越したブランド特性に支えられています。ブランドロイヤルティが育つためには、ブランドは消費者が容易に認識できるように目立たなければなりません。ブランディングの目的は、商品やサービスが誰のために存在するのかを見極めることです。ブランディングには、ブランドと他の競合ブランドを明確に区別する力が必要です。その1つがブランド名で、唯一無二の存在が法で保護されています。他にも、ブランドアイデンティティの一部として機能する要素があります。

 

独自性の要素

  1. 色:コーラやマック
  2. ロゴ:Amazon
  3. キャッチフレーズ:ナイキ「Just do it.」
  4. シンボル/キャラクター:ミッキーマウス
  5. セレブリティ:ペプシの小栗旬
  6. 広告手法

 

独自性のある要素とは、その製品がどのようなブランドであるかを示す要素です。これらの要素はマーケターが消費者にブランドを識別してほしい状況であれば、パッケージや広告、店内ディスプレイ、スポンサーシップなど、どのようなマーケティング活動にも使われます。ブランドを認知しやすくすることで、消費者の記憶構造を構築し、刷新し、強固にし、購買を促進しているのです。これらの要素とブランド名との関連性が強固かつ斬新であるほど、ブランドを識別しやすいです。

 

購買重複の法則

購買重複の法則とは、ブランドの顧客基盤は市場シェアに応じて、競合ブランドの顧客基盤と重複するという法則です。もし一定期間内に自社ブランドの購買客の30%がブランドAを購入していたとすれば、どの競合ブランドも購買客の30%がブランドAを購入しています。

 

購買重複を分析した結果

ソフトドリンクのブランドがコカ・コーラと顧客をどの程度共有しているかを示した調査があります。

 

コカ・コーラを購入した顧客の割合
 ダイエットコーラ  65
 ファンタ  70
 リルト  67
 ペプシ  72
 平均  69

 

見てわかるように、各ブランドの購入者がコカ・コーラを購入していることがわかります。この割合はブランドによって多少の差があるものの、おおよそ70%です。購入が重複しているのは想像が難しくありませんが、各ブランドがほぼ同じ割合で共有し合っているのは驚きの事実です。

次はアイスクリームブランドで購買重複を見ていきます。

 

WKD WD B&J HD ネスレ W マーズ
 WKD 15 8 8 9 5 4
 WD 34 7 8 9 4 3
 B&J 38 14 26 13 7 8
 HD 37 17 26 8 7 8
 ネスレ 39 17 12 7 8 9
 W 37 14 12 11 15 11
 マーズ 41 12 18 17 22 13
 平均 38 15 14 13 13 7 7

※アイスクリームブランドの購買重複(2005年)

 

上記の表からわかることが3つあります。

 

顧客重複の3パターン

  1. どのブランドも顧客基盤の多くを共有し、小さいブランドよりも大きいブランドと共有している
  2. どのブランドも特定のブランドと同等の割合で顧客基盤を共有している
  3. これら2つのパターンはブランドによってある程度の偏差がある。(例:ベン&ジェリーはハーゲンダッツと予想以上に顧客を共有している)

 

最初の2つはいわゆる購買重複の法則です。この法則では、同じカテゴリ内にあるすべてのブランドが他のブランドと顧客基盤を相手ブランドの規模に応じて共有しています。つまり、大きいブランドと共有する顧客基盤は大きく、小さいブランドと共有する顧客基盤は小さいです。ただし、複数のブランドが特定の顧客基盤を独占的に獲得している場合や他のブランドとは異なるタイプの顧客層を獲得している場合、購買重複の法則は成立しません。しかし、基本的には、顧客基盤は競合と類似します。

購買重複の法則を学べば、市場の境界線を発見することが可能です。実に多くのブランドが多くの顧客を共有しています。アイスクリームのデータでは、高価格帯ブランドや低価格大容量ブランド、バー型/コーン型、色々なアイスが含まれています。一見すると、市場は独立しているのではないかと思ってしまいますが、現実は市場を隔てる境界線は存在していないことがわかります。つまり、アイスクリームという大きな市場が形成されているということです。

一般的には高品質や高価格といった項目で境界線が引かれます。しかし、市場から分断されていると理解するのではなく、境界線を区分けしたサブマーケットと理解する方が理にかなっています。

 

ブランドポートフォリオ管理について

自社に類似ブランドがあることは、憂慮すべき問題でしょうか?一般的には、答えは「ノー」です。同じ消費者をターゲットにする類似ブランドを複数所有するのは珍しくありません。コーラには、ダイエットコーラとコカ・コーラ0があったり、P&Gにはタンパックスとウィスパーがあったりします。他にも事例は多々見られ、ブランドが同じカテゴリ内で同じ消費者を対象にして競合することは珍しくないのです。広い視野で見れば、別ジャンル(マック対KFC)でも競合はありえます。

マーケターが心配すべきは、ブランドが際立った存在感を有しているかという点です。他のブランドと差別化は容易か、存在感はあるかという点です。ブランドが成長するとき、同じカテゴリの他ブランドから学びを得ています。ブランド間で起こり得るカニバリゼーションの正確な規模を、購買重複の法則を用いて予測することは可能です。しかし、過剰なカニバリゼーションには注意が必要です。同じ営業や流通部門からブランドを販売すると、社内でブランドの利益が別ブランドへ横流しになることが起きかねません。

 

マーケターによくある間違い

1.ターゲティング/ポジショニング

優れたマーケターはカテゴリ顧客の多様性を考慮して、取扱製品に幅をもたせています。あらゆる購買機会を捉えて、すべての人にメッセージを届けようとすれば必須です。しかし、一般的に言われているセグメンテーションで提唱されているようなメッセージ発信の度に具体的な対象に狙いを定める必要はありません。

逆に「いつでも誰にでも販売」戦略が良い選択肢です。目的は過度に複雑になったり、スケールメリットを損なったりすることなく、できるだけ多くの購買状況の中で消費者にとって意味のある魅力的な商品を提供することです。秘訣は消費者の共通点を探すこと、メンタルとフィジカルの両面から消費者にリーチする方法をできるだけ多く探すことです。

定説には反しますが、ターゲットマーケティングは賢明な戦略ではありません。市場のごく一部だけをターゲットしたいという願望は次のような考えに基づいています。

 

ブランドは高度に差別化されているので、ある特定の領域の顧客層に訴求することができるはず。そうでなければ、そのような顧客層に訴求できるブランドを作らなければならない。

 

しかし、現実の購買データはこの考え方を支持していません。競合ブランドもほとんど似た顧客層をターゲットにしていますし、似た顧客基盤になっています。決定的な違いはブランドによって、顧客基盤が大きいという点です。現代のマーケティングで実践されている危険な習慣は、市場を人に例えること、つまりペルソナです。例えば、以下のような感じ。

 

ペルソナ例

ターゲットは日菜子という名前の女性で、年齢は28歳。健康意識が高いため、成長石井で買い物をする。好奇心旺盛。古典文学を好むが、「鬼滅の刃」なども好きでよく見ている。

 

ペルソナは本来それぞれ個性のある顧客をまるでクローン人間のように扱うため、無意味なターゲット・マーケティングの極みです。消費者を生き生きと描くためとか、理解を促進するためとか言い訳もあるでしょう。しかし、これは危険で怠惰な考え方であり、広告やメディアプランが潜在市場のごく一部にしか到達しないことがあります。多くの新しいブランドがペルソナの存在を正当化しようとして、十分な売上を獲得し損なっています。

 

2.価格販促

価格販促は即座にプラスの売上効果をもたらします。しかし、効果は長く続かず、値引きの終了と同時に消えてしまいます。なぜなら、価格販促の顧客の大半は、値引き対象ブランドを過去に購入したことがあり、幸運にもセール中に再びそのブランドを見つけた人たちだからです。価格販促を行っても、消費者の将来の購買性向を根本から変えることはありません。

 

消費者は1つの価格帯にこだわっていない

一般的にマーケターは低価格志向・中価格志向・高価格志向と価格帯ごとの消費者が存在していると考えています。しかし、実際の購買行動を研究していると、消費者は1つの価格帯にこだわっていないことがわかります。

 

シェア 中の下 中の上
 中の下 35 / 64 57 36
 下 31 69 / 51 30
 上 27 66 55 / 39
 中の上 7 78 61 73 /
 平均 25 71 60 60 35

※インスタントコーヒー市場の1年間の価格帯別購買行動(縦軸が購入者、横軸が他の価格帯のブランド購入者の割合(%)

 

これらのパターンから、各価格帯のシェアによって決まっていることがわかります。つまり、ダブルジョパティの法則と類似しています。つまり、価格帯をあまり気にせず、商品を購入している消費者は別の価格帯からも商品を購入する傾向があり、購買行動の大きさは対象の価格帯の規模に応じているわけです。

もし低価格帯のブランドマネージャーであれば、低価格ブランドの購買客は低価格ブランドだけ購入しているわけではないというのを理解しておくべきです。どの市場でも日常的かつ広範囲にブランドを買い、色々な価格帯のブランドを支払っている消費者がいます。したがって、低価格帯の購買客のみをターゲットにした価格販促を実施するのは困難です。

 

価格販促で新規顧客は獲得できない

価格販促は売上が急速に上がるので、新規顧客の購入を促進すると考えられています。しかし、1994年に発表された学術研究(3)によれば、価格販促で商品を購入した消費者はほとんどがブランドを以前に購入した経験のある人だったという結果が出ています。また他の研究によれば、価格販促は将来の売上を先取りしているようなもので、売上は販促後に低迷するので相殺されると発表されました。価格販促の効果はブランドスイッチを起こすのであって、ブランドの先行買いではないことは明らかです。

このように価格販促には悪い側面もありますが、購買意欲の低い非得意客の大部分を引き寄せられるとわかっています。これは「購買増強効果」と言われていて、研究が行われてきました。彼らは販促期間中に商品を買い、その後は購買意欲が極点に低下します。非得意客とはいっても、これまでにも同じカテゴリで何十、何百回と商品を購入しているはずなので、ブランドを値引き価格で購入することは特別なことではありません。つまり、どのカテゴリであっても価格販促で何のブランドを買ったかは消費者にとっては日常的であり、頻繁に見られる行動です。

言い換えれば、確立したブランドの価格販促は短期的には主にブランドを安価で購入する非得意客の購買行動に影響を与え、その後は通常の購買行動に戻ります。価格販促は一時的かつ短期的な効果しかないということですね。

 

価格販促のデメリット

価格販促の典型的なデメリットは「値引き商品を購入後、消費者は通常価格で商品を買うことに抵抗を感じる」というものです。これは「参照価格効果」と言われています。(4

一方で、別の側面から価格意識を調査した研究(5)によると、商品に支払った金額を想起することは多くの消費者にとって困難であるとわかりました。アメリカで行われた商品を選んだ直後の買い物客を対象に大規模な研究(6)を行いました。すると、自分が選んだ商品の値段を覚えていたのは半分程度でした。ちなみにフランスでも同じ研究が行われましたが、約3分の1しか選んだ商品の値段を覚えていませんでした。

結論としては消費者の価格に対する認識は曖昧ですが、多くの消費者が実際の価格帯の適切な範囲を理解しています。また消費者は価格の絶対的な水準よりもブランド間の相対的な価格関係(ブランドAはブランドBよりも高い)を意識していて、購入可能なブランドを比較することを重視しているわけです。問題は価格販促が悪影響を与えるかどうかですが、回数が少なければ問題はなく、繰り返し行えば悪影響が出ます。理由は低価格と値引きの情報を日常的に受け取るので、消費者が抱くブランドに対する参照価格が低くなるからです。

アメリカで実施された研究(7)によると、頻繁にプロモーションを行うと結果的に消費者が価格に過敏となり、購買間隔も長くなり、1回あたりの購買量も多くなるとわかりました。つまり、消費者はセール中にしか買わないだけではなく、期間中に多く買うようになり、結果として購買頻度も低くなるということです。

 

価格販促と価格弾力性について

価格販促による売上増加を考えるにあたって、価格弾力性が使われます。価格弾力性とは、価格が1%変化したときの売上高の変化の割合を示したものです。例えば、価格が10%値下げされたときに、売上高が20%増加したとすれば、価格弾力性は「-2」となります。価格販促中の26種類のカテゴリの価格変動を調査(8)すると、価格弾力性の平均値が「-2.3」と発表されました。他にも値上げと値下げの両方を検証した研究では、価格弾力性の平均値が「-2.6」と発表されたものもあれば、442の製品カテゴリを調査した研究では価格弾力性の平均値が「-4.0」であるという結果もあります。

これらの結果から、10%の値引きを行うと、平均して約25%の売上増加が期待できると示唆されます。

 

高い価格弾力性を出す5つの方法

1.ブランドの価格が参照価格より低い場合

例えば、ブランドAよりブランドBの方が高い価格に設定した場合、ブランドBがAよりも価格を下げると、消費者はブランドBを買うようになります。相対的な価格位置を変化させることは、単に価格差を埋めることよりも大きな効果があるのです。しかも、これは競合ブランドの規模が大きいほど、効果も大きくなります。つまり、同じカテゴリの最大ブランドを少し下回る価格を設定するのは賢明な戦術ということです。ただ大幅な値下げや同等な値段は得策とは言えません。

 

2.価格の変更をはっきりと伝達する

価格変更を伝達するのは効果が大きいです。きちんと消費者の意識に値下げ情報を引き寄せられれば、行動を起こすはずです。また店内看板やディスプレイで価格を表示することの効果を調査する研究では、売上が短期間で大きく伸びることがわかっています。値引きを店内で広告すると、売上が400%も増大する可能性があります。(9

 

3.ブランドのシェアが低い場合

価格弾力性は大規模ブランドほど低く、小規模ブランドでは高い傾向があります。例えば、ブランドのマーケットシェアが2%から6%になることは想像しづらくありませんが、30%のブランドが90%になるのは非現実的です。

この差は小規模ブランドほど価格販促で得られる売上は大きいですが、価格を上げたときの損害も大きいことが示されています。逆に大規模ブランドであるほど価格販促で売上を伸ばすことは難しく、値上げをした後の損害も小規模ブランドほど大きくはありません。

 

4.ブランドの価格が通常よりも高い時

値上げと値下げの影響は同じように見えますが、実際には違います。経験的実験を繰り返した研究(10)によると、純粋な価格変動の影響だけを考慮した場合、値上げが値下げよりも売上に大きな影響を与えることがわかりました。考えられている理由は損失回避です。多くの消費者にとっては参照価格よりも高く購入することは損失と見なされ、購買の可能性が落ちているのだと考えられています。特に低価格帯ブランドでは、値下げの影響は極めて小さいにも関わらず、値上げすると売上の損失が顕著になります。

 

5.ブランドの価格が他ブランドの平均に近い時

ブランドの価格が競合ブランドの平均価格に近い場合、価格弾力性が高くなります。理由は2つです。

  1. ブランド間の価格が大きく分散している場合、ブランドの価格が変更しても、価格差は少し埋まるだけである
  2. ブランドの価格が他の競合ブランドの平均価格に近い場合、価格を変更すると、競合ブランドより高く・低くなる可能性がある

ある実験によると、すべてのブランドを初期価格を等しく設定して、あるブランドの価格を値下げすると、平均価格弾力性は2桁になりました。一方でブランド間の価格差が大きい場合は、価格弾力性が低くなります。他にも高い価格弾力性をもたらす可能性のあるカテゴリがあります。

 

高い価格弾力性をもたらすカテゴリ

  1. ブランド数が少ないカテゴリ
  2. 定期的に購入する日用品
  3. 備蓄可能な製品カテゴリ

 

3.ロイヤルティプログラム

ロイヤルティプログラムとは、ロイヤルティの高い購買行動に特典を与えて誘導する体系的なマーケティングのことです。典型的なのは、購買のたびにポイントを与えるプログラムです。何度も購入することで、ポイントが蓄積し、特典を得られます。このポイント制がインセンティブとなり、もっと多くの特典を獲得しようとして、ブランドの購入頻度がさらに向上するという理屈です。

しかし、ロイヤルティは劇的に改善することが難しいことがすでに判明しています。また最もロイヤルティの高い顧客に注力することで、最大の収益が得られるとも考えられていますが、それも間違いです。ロイヤルティプログラムによって、劇的な効果が得られるというエビデンスはありません。

 

ロイヤルティプログラムの効果について

ロイヤルティプログラムがロイヤルティに与える影響は極めて小さいことが研究によってわかっています。オーストラリアで実施された大規模研究(11)によると、ロイヤルティプログラムの効果は極めて小さく、一貫性がないことが判明しました。

 

ロイヤルティプログラム

 

一貫性がない理由は元々が脆弱な効果なので、他のマーケティング・ミックスが効果を打ち消してしまったと考えられています。このようにロイヤルティプログラムのロイヤルティ効果は非常に希薄で、ブランド成長に実質的に何の貢献もしていません。

またロイヤルティプログラムの会員と非会員の購買頻度の比較では以下のようになっています。

 

 カテゴリ 参加した顧客 不参加の顧客
 スーパー  27  28
 ガソリン小売  13  14
 百貨店  10  9
 クレジットカード  10  9
 通販業者  26  26

 

結果はほとんど差がないことを示しています。上記の表は特典がいかに魅力的であっても、メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティがロイヤルティプログラム参加の主要因であると示唆しているのです。効果がない理由は、ロイヤルティプログラムに欠陥があるからです。ロイヤルティプログラムは他の手法と比較して、購買頻度が多くロイヤルティの高い顧客に対して優位な施策になっています。つまり、ロイヤルティプログラムがリーチを狭め、ブランドの成長が阻害するわけです。

 

マーケティングの典型的な過ち

  • ブランドの差別化を図ることは、マーケティング上の重要な仕事である
  • ロイヤルティを測定することで、ブランドの規模ではなく、強さがわかる
  • 新規顧客を開拓するよりも既存顧客を維持するほうが安い
  • 価格販促は市場浸透率を押し上げるが、ロイヤルティには影響しない
  • どのブランドを相手にして闘うかは、ブランドイメージのポジショニング次第である
  • マスマーケティングは過去の遺産である。競合上の優位性を発揮することはもはや不可能である
  • 消費者が自分の担当するブランドを選ぶには、それなりの理由がある
  • 自分が担当するブランドを選ぶ人はユニークな存在である
  • 売上の80%以上が最も購買頻度が高い顧客の20%からもたらされる
  • 顧客が混乱するようなパッケージの変更を行い、ブランドの目立つ力を弱めている
  • 無意味な記憶構造を構築する、またはその刷新に貢献しない広告を制作している
  • ブランドに最適な記憶構造を構築するために調査を怠っている
  • ブランドが独自性を構築し目立つ存在となるための調査を怠っている
  • ブランド名の確立以外、ブランディングが不完全なまま広告を制作している
  • 目標を定めずに追跡調査を行い、何も決まらないまま時間と費用を浪費している
  • すでに高いロイヤルティを持つ消費者に過剰な投資を行い、新規顧客開拓がおろそかになっている
  • あまりにも高い価格を設定し、そのマイナス面を値引きで補おうとしている
  • 値引きを行うときだけ購入を促すような顧客誘導を行っている
  • 広告を集中投下してメディア予算を浪費し、その後は消費者の製品購入が継続していても、長期間にわたって広告活動停止期間が続く
  • リーチ率の低いメディアに高額の費用を投資している

 

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